2025/03/28

世界大会出場選手が語る、シャルル・プルースト杯出場の裏側と感謝の想い【グルメ和光 新田雄大氏】

2024年11月に開催されたシャルル・プルースト杯。
今回は、日本代表として出場され、準優勝を受賞された新田さんに、大会を振り返っての感想や他国の選手との交流、そして今後の目標についてお話を伺いました。

株式会社グルメ和光
リーダーショコラティエ
新田 雄大 氏

▼Profile
1996年宮城県多賀城市出身。
2015年に辻調理師専門学校東京校に入学後、翌年2016年に同校のフランス校へ留学し、本場フランスの製菓を学ぶ。
卒業後はインターコンチネンタル東京ベイに入社、その後、ブルガリ イル・チョコラートを経て2022年にグルメ和光に入社し現在に至る。
=コンテスト受賞歴=
2019年 ジャパンケーキショー ピエスアーティスティック部門 銅賞
2020年 第28回内海杯技術コンクール 銅賞
2023年 第30回内海杯技術コンクール 優勝
2024年 シャルル・プルースト杯2024 準優勝

 

-昨年開催されましたシャルル・プルースト杯、お疲れ様でした。大会が終わったいまの心境を教えて下さい。
日本代表に選ばれてからは、仕事終わりに大会の準備をしてきたので、仕事終わりにやることが無いことにずっと違和感がありましたが、今はようやく慣れて日常が戻ってきた感覚です。

-大会前に渡仏され、色々と準備を進められておりましたが、大会準備で苦労した点はありましたか?
慣れない環境での準備は、思い返すと、とにかく辛い日々でした。
大会の1カ月前にひとりで渡仏して、パリにあるMORI YOSHIDA(モリ ヨシダ)さんのラボにお世話になりました。MORI YOSHIDAの皆さまには、温かく迎え入れていただき大変感謝しております。

渡仏後、モリヨシダラボでの制作の様子

▲渡仏後、モリヨシダラボでの制作の様子

フランスという慣れない環境での作品の制作の苦労は数え切れません。
渡仏前に覚悟はしていたのですが、実際に行ってみると現地の材料を使ってもう一度作品を組み直すのは、とても労力がかかりました。
ミキサーやオーブンなど機材の特性が異なったり、卵白の立て具合が理想に近づかなかったり…。ピエスのクオリティやガトーの美味しさを最後の最後まで追求し、大会本番までブラッシュアップを重ねて準備を進めていましたが、ずっと会社のラボで大会の準備をしてきたので、今までできていたものが上手く作れないというもどかしさを感じる場面が多々ありました。
環境が変わるとやはり勝手が変わるので、そういったことに対応する力は、これからも必要だと実感しましたね。

渡仏後、モリヨシダラボでの制作の様子

▲渡仏後、モリヨシダラボでの制作の様子

制作以外のことに関してはMORI YOSHIDAの皆さまにたくさんサポートしていただきました。
日本だけではなく、フランスでもサポートしてくださる方々のおかげで、今まで活動できていたんだという事を実感して、改めてその時「頑張らなきゃ」と自分を鼓舞し、制作に励みました。

-シャルル・プルースト杯の大会当日は搬入から審査・ガラパーティーまでかなり濃い1日を過ごされたかと思います。印象に残った瞬間や出来事は何ですか?
大会当日は、ピエスの搬入から始まりました。準備をしていたMORI YOSHIDAのラボから大会会場まで約6キロの道のりですが、パリの石畳の道を通ってピエスを運ぶのはとても大変で、車の中で大人6人がかりでケースを抑えながら、ゆっくり1時間以上かけて到着しました。

ずっと緊張が張りつめていた状態だったので、ピエスの台に載せた時は、やっと最低ラインには立てたなと一瞬緊張がほぐれた感覚がありました。

新田選手ピエス作品の搬入

▲新田選手ピエス作品の搬入

ホッとできたのもつかの間、ガトーの試食の準備や写真撮影などがあったので、その後は慌ただしかったですね。

ガラパーティーでの表彰者発表の時は、3位の選手の名前が呼ばれたあと、残り準優勝と優勝の発表で「先に自分の名前が呼ばれませんように」と心の中で願っていました。

-表彰式では、準優勝で新田さんの名前が呼ばれました。そのときのお気持ちを教えて下さい。
準優勝発表で名前を呼ばれた瞬間は、一瞬席を立つことができませんでした。
ずっと優勝を目指してここまでやってきたので、正直、「悔しかった」の一言に尽きますが、今振り返ると、今の自分の力を改めて理解する機会になったかなと思います。

もちろん、シャルル・プルースト杯に出場してみて、得られた経験も多くありました。しかし、準優勝という結果に満足することなく、見つけた課題点を見直してまた頑張っていきたいという気持ちが強くなりました。

ガラパーティーでの表彰式

▲ガラパーティーでの表彰式

-準優勝が決まった後、周囲の方(ご友人やご家族など)からのご連絡はありましたか?
皆さん、SNSでのライブ配信を見ていただいていたようで、大会終了後「おめでとう」とたくさん連絡をくれました。

-他国の出場選手との交流はありましたか?また、他の選手の作品から何か影響を受けたことはありますか?
3位のアクセル・ルベランジェ選手(ダミアン・ジュリア)とは、表彰式の後に「悔しいね」と話しました。また、彼とは同い年ということもあって、話が盛り上がり、日本に来るときは「ぜひ声をかけてね」と声をかけました。

彼は、日本人がフランスの大会に出場していることにリスペクトしていると言ってくれましたし、将来はMOFの試験を目指すと言っていて、準優勝という結果で悔しい思いはしましたが、お互い尊敬しあえる関係になれたこと、将来フランスの第一線で活躍するであろう同年代のパティシエと交流が持てたことはすごく良かったです。

賞を獲得した3名の選手(左から新田 雄大氏、アベル・ネソン氏、アクセル・ルベランジェ氏)

▲賞を獲得した3名の選手(左から新田 雄大氏、アベル・ネソン氏、アクセル・ルベランジェ氏)

優勝のアベル・ネソン選手(ルノートル)とはあまりお話できませんでしたが、彼の作品は僕とは全くタイプが違って、フランス人ならではの発想でとても刺激になりました。僕自身、普段から物事をいろんな視点で見るように心がけてはいますが、無意識のうちに自分の好きな方向ばかり見てしまい考えが凝り固まっていたのかな、と気づかされました。

彼の作品だけでなく、今回パリに滞在してみても感じましたね。目に見えるものが新鮮で、街中にインスピレーションが溢れていて、より物事をいろんな角度からみていかないといけないんだなと思いました。

-シャルル・プルースト杯の審査に携わったルレ・デセールの協会メンバーから、作品のフィードバックはどのようなものがありましたか?
作品のテーマが発表されたときは少し無機質で冷たい印象を感じましたが、自分なりの解釈で作品は見て楽しく温かみのある漫画のような世界観を意識しました。
チョコレートの自然に近い温かい色と飴細工はキャラメルの柔らかな雰囲気を取り入れてみたのですが、その作品を見た審査員の方々から、日本人らしい作品だったと言っていただけたのはとても嬉しかったです。

今までシャルル・プルースト杯に出場し、賞を受賞された日本代表選手と同じような技術(仕事の丁寧さや繊細さ)が審査員の目に映っていたんだと思うと、とても自信につながりました。

また、プチガトーでは、写真撮影での見栄えも考えて小さなピエスを飾り付けてみましたが、その点についても「よかったよ」と声をかけていただきました。その点を評価いただけたことも嬉しかったです。

新田氏 プチガトー作品(左から)Symbiose , Coexistence , Entraide ©Laurent Fau

▲新田氏 プチガトー作品(左から)Symbiose , Coexistence , Entraide ©Laurent Fau

新田氏 ピエス作品 ©Laurent Fau

▲新田氏 ピエス作品 ©Laurent Fau

-応援してくれた方々へのメッセージをお願いします。
本当に感謝しかありません。自分ひとりでは全く立てなかった大会だったと思いますし、フランス・パリという土地で自分のやりたいことを全力でできたのは、皆さまの応援があったからこそだと思っています。
ネガティブなことを言ってもプラスの言葉で僕の背中を押してくださったことがとても励みになりました。

1位という結果で返せなかったことは心残りですが、これから僕にできることがあれば、皆さんに恩返しをしていきたいです。

-最後に、今後の夢や目標があれば教えてください。
20代の目標としてシャルル・プルースト杯の出場を目指してここまで走り抜いてきました。大会が終わった今は、直近の目標だけでなく、10年・15年という長い目で将来を考えて目標設定をしていきたいと考えています。

具体的には言えませんが、新しい目標に向けてしっかり準備をしていきたいと思います。


新田さん、森岡さん、改めてシャルル・プルースト杯お疲れ様でした。
お二人の今後の活躍を心よりお祈り申し上げます。

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