2025/01/09

日本人パティシエたちの世界大会挑戦に密着取材。シャルル・プルースト杯2024【後編】

プチガトーの試食審査は、ピエス展示室とは別室で、非公開で行われました。審査員は、ルレ・デセールの会員4名を含む、フランスやベルギー、オランダで活躍するパティシエ・ショコラティエ11名で構成されました。
公平を期すため、審査員は選手の名前ではなく番号のみを知らされ、審査前に選手と審査員が交わることもありません。

プチガトーの重さは60g~80gで、形は自由。チョコレートをメインにしたプチガトー、各国の旬のフルーツを使ったプチガトー、素材は自由なプチガトーの3種を用意し、一つの皿に盛り付けます。
審査基準は、テーマに沿っているか、食感、味の調和、創造性。その中でも、食感が最も重要視されました。

新田氏は、旬のフルーツは紅玉リンゴを選び、カルヴァドス風味のクレーム・ディプロマットを合わせてタタン風に。素材は自由なプチガトーは、マロンをクリームとムース、シャンティイ、ビスキュイと異なる食感に仕立てて重ね、チョコレートのプチガトーはフランボワーズを合わせ、アールグレイ風味のクリームを中心に潜ませました。

新田氏 プチガトー作品(左から)Symbiose , Coexistence , Entraide ©Laurent Fau

▲新田氏 プチガトー作品(左から)Symbiose , Coexistence , Entraide ©Laurent Fau

「ユニークな形を提案する選手が多いのではないかと思い、形はあえてシンプルに、丸い型で統一しました」

一方、森岡氏は、規定で求められていた“革新的なデザイン”を意識したそうで、クリームを詰めたクランブルやメレンゲを下部の半分に配置する構成に。

森岡氏 プチガトー作品(左から)Lumière , Éden , Infini ©Laurent Fau

▲森岡氏 プチガトー作品(左から)Lumière , Éden , Infini ©Laurent Fau

「チョコレートのプチガトーには、直感的にイチジクの食感を加え、さらにフランボワーズを合わせました。日本の旬のフルーツは、個人的に大好きなリンゴを選びました」
素材は自由なプチガトーは、ココナツとパイナップルのトロピカルフルーツにメレンゲを融合。「王道ですが、王道の味は間違いなくおいしい。コンクールという場で試してみたかったので、再構築して提案しました」

ピエスとプチガトーの審査発表は、ルレ・デセール会員をはじめフランスやヨーロッパから集まったパティシエやショコラティエが見守るガラ・パーティーの会場。3位から順に、名前が呼ばれていきました。

ガラパーティー(表彰式)

▲ガラパーティー(表彰式)

優勝に輝いたアベル・ネソン氏は「ルノートルのシェフに技術面でアドバイスをいただきました。自分ひとりではなく、チームで獲得した優勝です」と感謝を伝えていました。

アベル・ネソン氏 プチガトー作品

▲アベル・ネソン氏 プチガトー作品

2位の新田氏は、目標にしていた優勝に届かず、悔しさも混じる表情。「自分の力を出しきりましが、ほかの選手の作品を見て、まだまだ学ぶべきことがあると強く感じました」と語っていました。

表彰式の様子

▲表彰式の様子

一方、すべての審査を終えた後、「課題を克服しながら準備をし、ベストは尽くせたと思っています。コンクールに出場して、ほかの選手の新しい発想や見方に触れられたことが収穫です」と語っていた森岡氏。
残念ながら入賞はできませんでしたが、内海会会長の寺井則彦氏は「個人的に、森岡選手のピエスは入賞してもおかしくないくらい優れていたと感じています」と評価していました。

日本人選手の活躍とコンクールの意義についてドゥ・オリヴェラ氏は、「遠い日本からフランスにやって来て、コンクールで結果を残す日本人選手は、私たちフランス人にとって常に脅威の存在です。ルレ・デセールが継承したシャルル・プルースト杯は、フランス、そして世界のパティシエにとって重要な役割を果たしています。これからも日本の選手の挑戦を楽しみに待っていますし、世界のパティシエ同志が実力を高める場になるでしょう」と話していました。

▲賞を獲得した3名の選手(左から新田 雄大氏、アベル・ネソン氏、アクセル・ルベランジェ氏)

寺井氏はまた、帰国後の11月13日に開かれた「第31回内海杯技術コンクール」において、「日本国内のみならず、フランスでもピエスモンテに挑戦する職人が減っているなか、危機感をもったフランスチームが今回はかなり力を入れてきたと感じました」とコンクールを総括。
これから挑戦するパティシエに向けて、「参加者が減るということは、コンクールの価値が上がっていくということでもあります。続けていれば必ず結果が出ます」と、日本選手の王座奪還に向けて熱いエールを送っていました。

ルレ・デセール会長のヴァンサン・ゲルレ氏と日本選手

▲ルレ・デセール会長のヴァンサン・ゲルレ氏と日本選手

「ルレ・デセール シャルル・プルースト杯」表彰式と同時に、優秀パティシエの受賞式や若手パティシエのコンクールの表彰式も行われました。
ルレ・デセール会員や関係者の投票で選ぶ「エクセレンス賞」は、ショップ部門のパティシエがクレール・アイッツレール氏、レストラン部門はマキサンス・バルボ氏(シャングリ・ラ・パリ)が受賞。

また卓越した素材を提供する生産者として、養蜂家のパトリック・ショレ、アーモンド栽培者のエルヴェ・ロジエ、柑橘を栽培しているローラン・ブガバの3氏にもエクセレンス賞が授与されました。
ルレ・デセール会員の店で働く25歳以下の若手パティシエが参加したコンクールでは、アクセル・ラガッゾ氏(オレリアン・トロティエ)が優勝を果たしました。

内海会の最新情報はこちら

公式HP:https://ameblo.jp/utsumi-kai/
公式Facebook:https://www.facebook.com/Utsumikai
公式Instagram:https://www.instagram.com/utsumikai_official/

関連記事

シャルル・プルースト杯の記事一覧はこちら
ページ先頭へ戻る