フランスでの田舎暮らしの常識!『バゲット自動販売機』!?
フランスの田舎でフランスパンを販売しているのはたった1台の自動販売機だった
弊社が2018年6月に取得したワイナリーがあるのはフランスの中西部ロワール地方にあるメーヌ・エ・ロワール県クテュール村。同県の県庁所在地アンジェ市中心地からは車で30分程ですが、村役場に登録されている人口はわずかに500人足らずの小さな村です。
この村には大きな産業はなく、ブドウ栽培やワイン造り、小麦や野菜作りなどの農業で生計を立てるひとがほとんど。県庁所在地アンジェから車で30分という立地からアンジェに働きに出る人もいます。
さて、村にはバス停がある大きな広場があり、そこに商店が集中しています。ただし商店は4軒のみ。生活用品から食料品が購入できるよろず屋的な店舗、たばこ屋と新聞・雑誌を兼ねる店舗、大衆食堂的なレストラン、そしてカフェ。
この4軒が徒歩圏内に集中するこの広場と隣接する村役場のあるここら一帯が村一番の中心地になります。
もちろん、この村にはフランスでの毎日の食事に欠かせないパン屋さんはありません。
人口が少ないことも影響していますし、移動手段として車を保有する家庭も多く、少し大きな隣町には郊外型の大型店舗なども存在しますので、買い物ついでにパンも一緒に買っていく人も多く、ここではパン屋さんの経営が成り立たないからです。
しかし、村には車を持っていない人もいます。そんな人々の生活の支えになっているのが今回ご紹介するパンの自動販売機なのです。パン屋さんのない田舎の村には最低でも1台は設置されていることが多いのです。
バゲット自動販売機の仕組みとは!?
このパンの自販機、クテュール村では先に紹介した大きな広場のど真ん中にぽつんと設置されています。
汚れ具合を見ると設置から結構な年月を感じます。見えにくいですが、バゲット1本1ユーロ。
郊外型の大型スーパーでは1本50サンチーム程度ですから、倍の値段がします。
お金を入れると…
バゲットが取り出し口からスルりと出てきます。取り出し口の横には手書きの三行広告も。
これは街のパン屋さんと同じですね。
フランスでは昔から人が一番集まるのはパン屋さんでした。ですので、いまだに街中のパン屋さんにも黒板や掲示板が存在するところがあり、そこにはこのように個人による三行広告やイベントの告知などが掲示されていることが多いのです。
その上にはよく見ると「木曜日の販売はありません」と書かれています。
これはこの自動販売機にパンを充填しに来るパン屋さんが木曜日はお休みだからだと推測します。
自販機はれっきとしたパン屋さんの出張所なんです。
フランスでのパンは主食でありながら、ほぼすべての人が家の外で焼かれたパンを購入し、毎食口にしています。
日本のお米以上ですね。日本では主食のお米は生米をお店で買って家で炊くのがまだまだ一般的です。しかし、これをフランスに置き換えると、小麦粉を買って家でパンを焼くということはほとんどの家庭ではやっていません。
それだけにフランス人にとってのパン屋さんというのは命綱的存在なのです。
今回は田舎の村人にとって大切な存在、パンの自動販売機のお話でした。
ちなみに自動販売機のパンですが、結構おいしいです。
毎日充填しているだけあって焼きたてとはいきませんが、お店で購入するものに比べて特段レベルが落ちる、ということはありません。これは場所によりけりかもしれませんが。
余談ですが、最新の自動販売機はいつでも焼きたてタイムが実現できるリベイク機能がついているそうです。
クテュール村の自販機もそれにとって代わる日がくるのでしょうか。