2022.06.14

1580年から続く「オルレアン製法」自然発酵の美味しさとは
【Chef’s choice vol.09】


Chef’s choiceとは…
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何を選び、どう使うか。
“これはいいね”とシェフが選ぶ素材を料理にどう展開するのか……。
素材を軸にしたシェフの読みをひも解きます。
不定期になりますが、本マガジンでひとつの素材をテーマに「Chef’s choice」を配信していきます。
今回はマルタンプーレ社の商品「ワインビネガー」をご紹介いたします。
この素材についてご意見をいただいたシェフは、
レストラン ラフィナージュ(東京・銀座)オーナーシェフ 高良 康之さんです。

 

思いのままに発酵していく「オルレアン製法」をずっと守り続けて欲しい

-シェフのお店では「マルタンプーレ」のワインビネガーをお使いですが、いかがでしょうか。
私の店では、ちょうど1年前から「マルタンプーレ」のワインビネガーを使わせていただいています。”素材のちから”の取材で使わせていただいたのがきっかけでしたが、その”唯一無二”の品質にちょっと心を動かされたからです。

心を動かされたというのは感情的な表現ですが、自然に発酵させたものが一番おいしいとこだわる「マルタンプーレ」のワインビネガーづくりに凄く人間味を感じるのです。

今ではどのメーカーも数時間で工業的に処理してワインビネガーを製造する中、「マルタンプーレ」は世界中で最後の一社になった今も、頑固に昔ながらの自然発酵と自然熟成による「オルレアン製法」にこだわり続けています。
元になる酢酸菌が息づく樫の樽にその年のワインを入れて、かき混ぜず、酵母も加えず、酸化を加速させることなくじっくりと自然発酵させ、これを3週間寝かせて後は大きな樽で約1年自然熟成させます。

こうしてつくられるワインビネガーには、このつくり方でしか現れない、まろやかでやさしい酸味があります。樽の酢酸菌によってつくり出されるビネガーは生き物なのです。この頑固さ、ファンになってしまいますよね。

私は料理の中で酸味はとても大切にしています。さっぱりとした料理をつくるにはもちろん必要ですが、旨みを押し上げてくれたり、味の重さをちゃんと断ち切ってくれたり、風味を伸びやかにしてくれたり、おいしさの余韻も長く続きます。

「マルタンプーレ」は、酢角が立っているようなイメージのビネガーとちょっと違い、酸味にまるみがあります。そこには、自然発酵と自然熟成によって得られるおいしさが味としてちゃんと出ています。酸味の余韻の中に深い奥行きのある旨みがあるのです。人間も若いうちは角がありますが、年齢を重ねると丸くなり味が出ます。そして、周りに溶け込むことができるようになります。ワインビネガーも同じなのですね。

ワインビネガーをグラスに取ってみると、改めてそれぞれが美しい色を持っていることに気づきます。それこそ人間と同じでカラーがあるのです。
今回は、このワインビネガーの色にちなんで料理をつくってみたいと思います。

赤ワインビネガーの”赤”をテーマに料理を組み立てる。

ラングスティーヌのポワレとビーツのラビオリ仕立て

-自然発酵のやさしい酸味が料理のリズムを調えてくれるのですね。
それでは、赤ワインビネガーの”赤”をテーマにした料理をつくってみましょう。材料選びも”赤”を基調にします。野菜は赤蕪、赤キャベツ、何でもいいのですが、ビーツを選びました。
主材料は赤身の牛肉やマグロ、海老、蟹も考えられますが、その中から今回はラングスティーヌを選びテーマカラーに揃えました。

まず、ビーツを塩茹でして温かいうちに皮をむき、100gのはちみつと200㏄の「マルタンプーレ」の赤ワインビネガーをよく混ぜたものにティムットペッパー(山椒の仲間)をホールごと入れ、温かいうちに真空パックします。

「マルタンプーレ」の赤ワインビネガーのやわらかな酸味にはちみつを合わせて甘酸っぱくします。そうすることでビーツに浸透圧で味が染み込んでいきますから、それをそのまま氷水で冷まし、5日間冷蔵庫で保存して全体的に味を馴染ませておきます。

これを取り出して薄くスライスしてラビオリ状にします。それからパックの中に残った液体を火にかけて鍋で詰め、オリーブオイルで割り、塩で味を調えてビーツのドレッシングにします。ポワレしたラングスティーヌの下には海老と相性のいいパプリカなどでラタトゥイユをつくって敷きました。

「マルタンプーレ」の赤ワインビネガーが持っている樽の熟成感には、ビーツ独特の土っぽい香りと共通項があるような気がして、それが上手く引き立て合うと思いビーツを選びました。

甘酸っぱさの中に土の香りがするビーツのドレッシングは、ポワレしたジューシーなラングスティーヌの旨みを弾ませているようで、見た目にも味の面にも新鮮で楽しいリズムが生まれています。

白ワインビネガーの”白”をテーマに料理を組み合わせる。

関アジの白ワインビネガー風味

– やさしい酸味の白ワインビネガーが素材をつなぎ、味のバランスをとるのですね。
次のテーマは”白”です。白なので使う主材料は魚系の白身、もしくは鶏肉や豚肉などが考えられますが、今回は”関アジ”を選びました。付け合わせも”白”をテーマにカリフラワーです。

関アジは三枚におろして、多めの塩をつけ、1時間ほど冷蔵庫に置いて塩を浸透させていきます。その間に白ワインと水、「マルタンプーレ」の白ワインビネガー、塩、玉ねぎ、ニンニク、セロリ、タイムを入れて炊き、野菜の香りと味のエッセンスをその中に取り出し沸騰させます。

関アジに塩がちゃんと浸透したら軽く洗いペーパーで水気をよく取ってからバットに並べ、沸騰している白ワインビネガーを入れた液体をバットに流し込みます。そして、そのまま落としラップをして人肌の温度になるまで置き、余熱で中が半生っぽくなるように火を入れていきます。
関アジを取り出し、残った液体に卵白を入れて澄まし、澄ました後に味を調えゼラチンを加えてゼラチン液をつくります。型にゼラチン液を入れて氷水の中に浸け、周りが固まり外に枠ができたら固まっていないゼリー液を一旦外に出します。中にカリフラワーのムースを入れ、関アジを並べてもう一度ゼリー液を詰めて蓋をします。

関アジは凄く脂がのっているので、その豊富な脂に対して酸味が欲しくなります。白ワインビネガーのやわらかな酸味と旨みのゼリーが半生状態の関アジの脂を切って旨みを感じたところに、カリフラワーのムースのなめらかなコクがつながっていく感じです。

白ワインビネガーの”なめらか”な酸味、下に入っているカリフラワーのムースの”なめらか”さ、そこに口の中で溶けていくゼラチンの”なめらか”さが溶け合って絶妙なバランスになっています。

「ジュ・ダグリュム」の”オレンジ色”をテーマに料理を組み立てる。

キャロットラぺ

-柑橘系の果汁を加えた「ジュ・ダグリュム」の綺麗な香りと味は用途が広いのですね。
オレンジ色のテーマの料理にはキャロットラペをつくってみましょう。キャロットラペは、フランス語ですりおろしたニンジンという意味で、通常はチーズグレーターですりおろしたニンジンにビネガーを合わせてサラダにしますが、今回はこれをアレンジします。

皿の一番下にはニンジンのスープを敷きます。これはバターでゆっくり炒めた京人参をミキサーでピューレ状にし、全体量に対し3%の「マルタンプーレ」の「ジュ・ダグリュム」を加え、そこに生クリームを加えてスープ状にのばして冷やしたものです。

次に、ドレッシングによく使われるオレンジ果汁を煮詰めて、全体量に対し5%の「ジュ・ダグリュム」を加えてエスプーマで丸く絞りました。上からは〝オレンジ色〟のテーマに沿って選んだミモレットをすりおろしてかけます。すりおろした粒が口にあたることで塩気をちゃんと感じてもらえアクセントになります。

普通のキャロットラペは、しっかりとビネガーがきいていますからストレートにキレのある酸味を感じますが、このメニューでは口の中で酸味がふっと消えていくような心地のいい酸味の使い方を心がけました。

「ジュ・ダグリュム」は、白ワインビネガーにオレンジやグレープフルーツなどの柑橘系の果汁を加えたさわやかな酸味と甘みを持っています。ですから、なめらかなクリーム状のニンジンのスープに少し風味のやさしい抜け感をつくり、やわらかなオレンジのムースに柑橘系の香りを融合させています。スープと泡の両方に使い分けて重ねることで酸味に奥行きが生まれていますね。

「ジュ・ダグリュム」は凄くさわやかで使いやすく、飲み物にしていいと思うくらい味が綺麗です。ソーダで割ってミントを添えて、ノンアルコールビネガーのサワーカクテルをつくったり、ドレッシングもいいですね。

こうして使ってみると、あらためて「マルタンプーレ」の自然でやさしい酸味は、とても使いやすく、思いのままに発酵していく「オルレアン製法」をずっと守り続けて欲しいですね。

▼出典元
“素材の品質と作り手の心を料理の現場へ伝える”食材情報誌「素材のちから」
公式サイト:http://www.sozainochikara.jp/
紙面情報などは、ぜひ上記URLからご覧ください。
※この記事は素材のちからより許諾を得て紙面の一部の内容を転載しております。

 

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