2022.06.30

ピューレを使ったフルーツサワービールで、「ビールを選ぶ楽しみを増やしたい」ー奈良醸造【クラフトビール採用事例】

世界中には100種類以上のビール(ビアスタイル)があり、そのスタイルをベースに素材選びやつくり方などの工夫を凝らしてつくられているのが「クラフトビール 」です。近年日本でも、マイクロブルワリー(小規模の醸造所)が各地に生まれ、にぎわいを見せています。

今回ご紹介するのは、奈良県奈良市でクラフトビール の醸造所を営む「奈良醸造」。「ビールを選ぶ楽しみを」というコンセプトを元に、醸造家の浪岡安則さんによって多種多様なビールを世に送り出しています。

▼Profile
奈良醸造代表取締役 兼 醸造責任者
浪岡 安則
1979年生まれ、奈良県出身。バックパッカーで世界を旅するうちにクラフトビールの面白さに目覚める。地元・奈良で公務員として勤めるが、自らクラフトビールを造ることを決心し、県庁を退職。京都醸造のアシスタントブルワーとして修行を開始。約2年の修行期間を経て、2017年7月4日に奈良醸造を設立。

今回は『レ ヴェルジェ ボワロン(以下ボワロン)のフルーツピューレ』を使用してつくったフルーツサワービールについて詳しくお聞きし、ボワロンの使用感やビールづくりとの相性、今後の展開などについてお答えいただきました。

 

ビールが苦手な人の先入観を変えたい。そんな思いからつくり始めたフルーツサワービール

「実はもともとビールは得意じゃなかったんですよ」という浪岡さん。20代の頃は甘いお酒を好んで飲むことも多く、ビールはあまり得意ではなかったそう。そんな自身の経験から、「ビールが苦手な人にこそ楽しめるビールを!」と、つくり始めたのがサワービールです。サワービールは、ビール特有の苦みがなく、アルコール度数も4%程度しかないため、とても飲みやすいビアスタイルです。

※サワービール:アルコール発酵だけでなく、乳酸菌や野生酵母を使用し、乳酸などの酸を生成させてつくる酸味の効いたビール

「初めての サワービールは果汁を使わずにつくったんですが、色々と調べていくと果物のクエン酸と乳酸が相まって、複雑な酸味を醸し出してくれることが分かり、これは面白そうだと思って。次は果物を使ったフルーツサワービールをつくることにしました」(浪岡さん)

ビールが苦手な人の先入観を変えたい。そんな想いからつくり始めたフルーツサワービール。しかし収穫した果物を使用する際に皮や種を取り除く前処理が必要となり、時間やコストがかかりすぎていました。

「ビールは仕込んでから完成まで早くても2ヶ月はかかるので、旬の果物を使ってもリリースしたときにはシーズンが過ぎてしまいます。以前、収穫したスイカを使ったときは、完成したのは秋で、季節がチグハグになってしまいました。さらに天然の果物には、野生酵母がついていることもあり、発酵に干渉してしまうリスクがあります。熱殺菌をすればいいんですが、そうすると香りが飛んでしまい、フルーツを入れる目的が果たせなくなります」(浪岡さん)

フルーツピューレを使用し、素材本来の香りが感じられるビールづくりを

ボワロンのピューレ(マンゴ、アナナ(パイナップル))を使ったサワービール『LOVE ISLAND』。華やかなマンゴの香りと爽やかなアナナの酸味が夏にぴったり。暑い日に外で飲みたくなるビール。
LOVE ISLAND

香りを残したまま、どうしたら果物本来の良さを活かせるか。新たな素材を探す中で出会ったのが、『ボワロンのフルーツピューレ』でした。

浪岡さんはフルーツピューレを使用するにあたり、20種類ほどのピューレをビールに混ぜて味の変化をチェックしました。次に香りの残り方、他の素材との相性などイメージを膨らませ、自分の求める基準に合うものかどうかを確かめました。

レ ヴェルジェ ボワロン 冷凍フルーツピューレ 商品詳細

「実はボワロンのピューレを使う前に濃縮還元の果汁を使ったんですが、希釈した分だけ酸味も香りも引いていくはずなのに、香りだけが強く残る。こうした変化が予測できないと、ホップや発酵するときに発生する香りとのバランスの調整が難しいと考え、使用を見合わせました。それに比べてボワロンは希釈した後も味や香りが素直に変化するため、自分が目指した味に調整しやすい。ビールと希釈しても香りがしっかりと感じられるのもよかったですね」(浪岡さん)

マンゴピューレの10㎏バケツを醸造用タンクに投入するところ。ピューレは冷蔵庫で解凍し、使用しています。

ビールに使われるホップは収穫時期によって苦みが変わるので、毎回つくり手がチェックして使用量を変える必要があります。しかし、ボワロンは世界中から厳選された果物をブレンドし、基準を満たしたものしか商品化されないため、安心して仕込むことができているのだそうです。

「香料を後から足している素材もあるのですが、そういったものを使うのは何だかクラフトビールっぽくないというか 。それぞれの素材の良さがあって、それがビールとしてバランスよく成立している。そこを目指すのが、醸造の面白さだと思うんです」(浪岡さん)

フルーツピューレ(冷凍)を使用する上で、難しいと感じたことはないですかと尋ねると、「うーん…実はほとんどないんですよね」と嬉しい言葉が。

「あえて言うとすれば、果物そのものが糖分を含んでいるので、麦汁の糖度と合わさって、最終のアルコール度数がどのくらいになるのかが計算しにくくて。麦汁の糖度が増えると、アルコール度数が上がるため、麦汁の糖度を落とすこともあります。でもこれは経験値を積んでコントロールするしかないので、不満や不安ではないですね」(浪岡さん)

今までボワロンのフルーツピューレを使ってつくられたビールは、パッションフルーツ、ライム、マンゴーなどを使用した計6種類。2022年7月中旬にはアナナ(パイナップル)使用の別のビールもリリース予定とのことで、こちらも楽しみです。

「毎年夏にフルーツサワービールを出すようになって4年ほど経つんですが、『今年はこの果物を使ったんだね!』と待ってくださっている声もあって。お客様と僕たちのコミュニケーションの種にもなっているのかな。夏らしいビールをリリースすることで、季節感も楽しんでもらえているんじゃないでしょうか」(浪岡さん)

刺激を受けて進化し続けるビールづくり。今注目の素材は…

目を引くフライヤーやボトルデザインは、友人であるデザイナーの久保元気さんがすべて手掛けている。

ボワロンのフルーツピューレをどのタイミングで入れるのか、どの酵母を使うのかなど、繰り返し行うことで改善点が見つかり、それをもとに次の仕込みを行って…と進化させてきたビールづくり。最近では特に「酸」に注目して仕込みを行っているそう。

「日本酒のつくり手の方と話す機会があり、リンゴ酸、コハク酸、乳酸…と酸の特性まで計算してつくられていると知り、とてもいい気付きを得ました。乳酸はもったりとした酸味、クエン酸はすっきりとした酸味、酢酸は喉に刺さる酸味。味の方向性まで考えて酸を扱うことを知り、今度は、乳酸を使わずにクエン酸の酸味を生かしたビールをつくってみたいと考えています」(浪岡さん)

ビールのネーミングは、音楽や映画、ゲームなどのエッセンスを含んだ「分かる人には分かる」名前にしているのだそう。写真は、各ビールごとに毎回つくられるセールスシート

細部にまでこだわりを持ってビールに対峙する姿勢。これこそが、美味しいビールをつくり上げる秘訣なんですね。最後に、今後挑戦したいことをお聞きしてみました。

「最近、バーテンダーとの話から『カクテルの要素をビールに取り入れたら面白いんじゃないか』と思いついたんです。例えば、フルーツにバニラやシナモン、スパイス…などと組み合わせることで、さらに表現の幅が広げられるんじゃないかと。それこそ、ボワロンのフルーツピューレを使いながら新たな表現を模索していきたいと考えているところですよ」(浪岡さん)

「つくれる表現の領域が広いのがビールの面白さ」という浪岡さん。飲み手に寄り添いながらも、常に新しい世界を開き続ける奈良醸造。さまざまなものに刺激を受け、浪岡さんのクリエイションの源は尽きることはありません。今度はどんなビールで、私たちの五感を刺激してくれるのでしょうか。次のビールのリリースが楽しみでなりません。

 


奈良醸造株式会社

住所:〒630-8452 奈良市北之庄西町1-8-14
営業日(タップルーム):週末(土曜日、日曜日)のみ
13:00〜18:00(ラストオーダー17:30)
オフィシャルサイト: https://narabrewing.com/
オンラインストア :https://narabrewing.shop-pro.jp/

 

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