2024/06/12

フランス通信vol.07 パリの新しい波。異文化フュージョンの新世代フードを体験

パリのテイクアウトフード店多くの移民が暮らすフランス。なかでもパリは世界中の文化が交錯する有数のメルティングポット(人種のるつぼ)といえるでしょう。

そんな文化の多様さを色濃く反映しているのが食べものです。

マルシェの屋台やフードトラックの他、ストリートフードに特化したフードマーケットなども定着しつつあります。スターシェフもストリートフードのテイストをレシピに取り入れるなど、その浸透ぶりは顕著。

街に出るとさまざまな国のストリートフードのお店が立ち並びます。パリのストリートフードといえばケバブやファラフェル*といったものが主流ですが、いまは多種多様。異文化フュージョンを手軽に楽しめるのがパリの醍醐味の一つです。

このような流れのなかで、路面店を開いて「新」と「旧」や、ふたつの文化を融合させて独自のアレンジを打ち出している新世代の3件をご紹介します。

*ファラフェル
ひよこ豆をすりつぶしてコロッケ揚げたものや焼いたナス、サラダなどを袋状のピタパンに詰めたイスラエルのサンドイッチ

GROOT (グルート)のTourte(トゥールト)


トゥールト

フランス料理の王道の一つ、トゥールト。調理したミンチ肉などをパイ生地に包んでオーブンで焼いたものです。そのクラシックなパイ包み焼きを、料理対決TV番組の優勝者と参加選手のデュオが再構築。新世代感覚のストリートフードとしてスタートし、人気のお店です。

上の写真は魚のマスとほうれん草のトゥールト。

トゥールトの焼成

▲店内はパイの香ばしい香りでいっぱい

キノコとチキン入りのトゥールト

▲一番人気のキノコとチキン入りの「クラシック」

取材時には10席程の店内カウンターもほぼ満席で、テイクアウトも行列ができており盛況でした。
4種類あるトゥールトのうち、定番の「クラシック」をチョイス。
注文を受けて2分程オーブンで温めたものを提供。
キャベツに包まれた3種類のキノコのデュクセル(細かく刻んでバターでソテーし煮詰めたもの)とチキン、子牛と豚肉の詰め物を半球型のパイ包みにした一品。
一流レストランにも負けない本格的な味わいに、ふんだんに入ったペッパーの爽やかな辛味が効いていて新鮮でした。

店舗情報
GROOT (グルート)
住所:  : 34 rue Saint Sauveur 75002 Paris
https://www.grootlatourte.com/https://www.grootlatourte.com/

KAPÉ (カペ)のフィリピンスイーツ


フィリピン料理店の店内

フランス生まれのフィリピン人女性デュオ、ジェシカとオレリーが手掛けたフィリピンレストランBOBI(2020年オープン)が好評で、新たにオープンしたのがこの「KAPE(カペ)」。KAPEはタガログ語でコーヒー、カフェを意味する言葉です。

キッチンとイートインスペースに仕切りのない店内は、フィリピンのおしゃれなお家に遊びにきたような気分にさせてくれます。

スタッフの爽やかな笑顔に迎えられる心地良い空間は、週末の午後はいつも満席です。

ここで提供されるスイーツは全てホームメイド。そのうち3種類をイートインで試してみました。

カペのフィリピンスイーツ

▲(写真左上から時計回りに)ウベ・クランクル、ウベ・ラテ、パンデサル、プト

UBE CRINKLE(ウベ クランクル)は、フィリピンの代表的な農産物であるウベと呼ばれる紅山芋を使ったクッキー。マスコバド糖の控えめな甘さが程よく効いた、こちらもフィリピンを色濃く感じることのできるお菓子です。

Pandesal(パンデサル)は、表面にコーンミールをまぶしてカリっと焼きあげたプチ・パン。
パリ郊外ベルサイユにある製粉所の小麦粉を使用しています。
ここでは、英国のスコーンのような食べ方で出しており、イズニー生クリームとコンフィチュール付き、又は、ガーリックコンフィ・バター付きと、二通りの食べ方を楽しむことができます。

Puto(プト)は、バナナの皮に包まれた、米粉の蒸しケーキ。
どこか懐かしい素朴な風味で、自家製のココナッツのコンフィチュールをつけて食べると気分はすっかりフィリピンです。

どれも優しい味わいで、手作りの温かみが感じられるものばかりでした。

店舗情報
KAPE (カペ)
住所: 17 rue de Malte 75011 Paris
https://kapeparis.com/

ISAKA(イサカ)のフライド・アイスクリーム


フライドアイスクリーム

オペラ地区でレストラン経営をしていたカップルが、新たなアジアンテイストのレシピのアイスクリーム屋をオープンしました。
お店の名物はパン粉で揚げた“あたたかいアイスクリーム”。

フライドアイスクリームを販売する店和食ブームにも馴染んだ若手ならではの柔軟な発想で、若いパリジャン、パリジェンヌたちや観光客にも大人気で、アイスクリーム片手にスマホで撮影する人たちがひっきりなしに出入りしていました。

その人気商品、フライド・アイスクリームの抹茶フレーバーをトライしてみました。

フライドアイスクリームパン粉をまぶして冷凍しておいたアイスを、直前に揚げて提供。ホイップクリームにクレープ・ダンテル(クレープ生地を薄く焼いて砕いたフレークのようなもの)がトッピングされていて、ボリューム満点です。

カリっと揚げられたパン粉の皮が香ばしく、それほど油っぽくないのでどんどん食べ進められます。抹茶の風味は、日本人としてはもう少し苦味を効かせてほしかったところ。

中のアイスに到達するうちに、溶けかけたアイス部分と皮の部分を一緒に楽しむ食感は新たな発見でした。

店舗情報
ISAKA(イサカ)
住所: 9 rue Thérèse 75001 Paris
https://www.isakaparis.com/


 

外国からの文化を積極的に取り込んできた日本と比べ、フランスという国はとても保守的な国です。フランス語、フランス料理、カフェといった固有の文化にただならぬ誇りを持ち、ひと昔前までは外のものを受け入れないという傾向がとても強かったのです。それだけに、スターバックスやユニクロなどのお店がパリに登場した時はとても大きな驚きでした。

いま、フランス料理界では抹茶やゆずといった素材も特に真新しいものではありません。そういった背景のなかで、新しい世代が、柔軟な発想からこのような明確なコンセプトを打ち出し、挑戦している動向もまさに時代の潮流といえるでしょう。

 

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