フランス通信vol.06 もはや芸術。趣向を凝らしたイースターのチョコレートデザインの数々
今回は、イースター・チョコレートの話題をお届けします。
イースター(復活祭)とは、キリストの復活を祝う祝祭日で、フランスではパック(Pâque)と呼ばれています。春分の日のあとの、最初の満月のあとの日曜日がそれにあたります。多くの国ではその翌日の月曜日が祝日に制定されています。
元来、イースター(復活祭)では、命の誕生・再生を象徴する卵の殻にペイントしたものを飾るのが、もともとの習慣でした。
現代ではイースター・チョコレートが定着。毎年この時期になると、卵型をはじめ、多産な動物であるウサギやニワトリなどをかたどったものなどがショコラトリーやスーパーの棚にたくさん並びます。
今年のイースターは3月31日。
12月のクリスマス、2月のバレンタインの後ということで、ショコラティエやパティシエにとっては準備期間がとても短く、息をつく暇もありません。さらに、イースター・チョコレートのデザインの傾向はさらに進化しており、ボンボンショコラやビュッシュ・ド・ノエルが中心のクリスマスとは比較にならないほどの労力を要します。
そんななか、趣向を凝らしたさまざまなデザインのイースター・チョコレートがパリのショーウィンドウを華やかに飾っています。今回はそのいくつかをご紹介します。
パトリック・ロジェ(Patrick Roger)
チョコレート彫刻といえばこの人、パトリック・ロジェ氏です。
MOFショコラティエであるだけなく、彫刻家というアーティストとしての顔も持つパトリック・ロジェ氏。毎年意欲的な作品を発表し、イベントや店舗を訪れる人たちの目を楽しませてくれます。
意表をつく大きなショコラのオブジェを得意とするパトリック・ロジェ氏の今シーズンのテーマは、サメ。海洋生物の多様性の危機への示唆を、ユーモラスで愛らしいサメの姿で表現した作品が店内に。販売されているチョコレートも食べるのが勿体ないくらいの出来栄えです。
店舗情報
パトリック・ロジェ(Patrick Roger)
サイト:https://www.patrickroger.com/
ジャン・シャルル・ロシュー(Jean Charles Rochox)
サロン・デュ・ショコラ常連のジャン・シャルル・ロシュー氏のブティックでは、幸福の象徴のテントウムシをあしらった6サイズのエッグ型をメインに、目玉焼きをのせたクロック・マダムを模したチョコレートなど、遊び心のあるアイテムが並びました。
丁寧な仕上げのチョコレートが店内にひしめくように並び、ショーウィンドウも趣向をこらしたチョコ作品が賑やかにレイアウトされていました。お客様に喜んでもらいたいという、暖かいアルティザナルな姿勢が伝わりました。
店舗情報
ジャン・シャルル・ロシュー(Jean Charles Rochoux)
住所:16 Rue d’Assas 75006
サイト:https://jcrochoux.com/
ジャド・ジュナン (Jade Genin)
フランスの名ショコラティエ、ジャック・ジュナン氏の娘であるジャド・ジュナン氏のブティック。ノンシュガー・植物由来の素材使用のチョコをつくる彼女の店は、いつも感性の高いお客様で溢れています。
オペラ座前の大通りに面した、まるでジュエリーブティックのような店内に並ぶのは、ブランドとアイコン的商品であるピラミッド型のボンボンショコラと、自然由来の着色料でペイントしたアーティスティックなイースター・チョコレートたち。
なかでも目を引くのは、卵の殻の中に金色のカエルが鎮座しているというユーモラスな作品。
父ジャック・ジュナン氏のもとで働いていた頃からイースター・チョコレートのペインティングを数多く担当している彼女の作品は眺めているだけで楽しくなります。
店舗情報
ジャド・ジュナン (Jade Genin)
住所:33 Avenue de l’Opéra 75002
サイト:https://www.jadegenin.fr/
ヤン・クヴルー (Yann Couvreur)
人気パティシエ、ヤン・クヴルー氏の作品は、ブランドロゴのモチーフにもなっている、アイコニックなキツネを型押ししたイースターエッグ。厚みのあるヘーゼルナッツ・プラリネでできたエッグの殻の中には、たくさんのミニチョコレートが詰まっています。
オーソドックスな卵型のチョコレートも、ココナッツとライム風味のホワイトチョコのエッグの中に、ココナッツをまぶしたマシュマロを仕込むなどオリジナリティのあるチョコになっています。
店舗情報
ヤン・クヴルー (Yann Couvreur)
住所:Galerie Lafayette /35 Boulevard Hausseman 75008 (他パリ2店)
サイト:https://www.yanncouvreur.com/
バタフライ・パティスリー (ホテル・ドゥ・クリヨン内)(Hôtel de Crillon – Butterfly Pâtisserie)
5つ星パラス・ホテルの作品もチェック。
シェフのマチュー・カルラン(Matthieu Carlin)氏は、ホテルのアイコニックな車である「シトロエンDS」あしらったチョコ作品を披露。
1.5センチ程の厚みのプラリネ・チョコレートを立体的に構成し躍動感のある作品に仕上げています。
店舗情報
バタフライ・パティスリー (ホテル・ドゥ・クリヨン内)(Hôtel de Crillon – Butterfly Pâtisserie)
住所:Hôtel de Crillon / 6 Rue Boissy d’Anglas 75008
サイト:https://www.rosewoodhotels.com/fr/hotel-de-crillon/dining/butterfly-patisserie
リッツ・パリ ル・コントワール (Ritz Paris Le Comptoir)
3年前にリッツ・ホテルの裏通りにオープンして以来、いつも賑わっているパティスリー・ブティック。MOFの称号を持つシェフ・パティシエのフランソワ・ペレ(François Perret)氏は、代名詞的な商品でもあるマドレーヌの形で構成された、マンガのような面白いニワトリ形のチョコを制作。
店舗情報
リッツ・パリ ル・コントワール (Ritz Paris Le Comptoir)
住所:38 Rue Cambon 75001
サイト:https://www.ritzparislecomptoir.com/fr
合理性を求め、毎年ほぼ同じイースター・チョコレートを出すブランドも少なくないなか、このような見る者を楽しませてくれる作品を発表してくれるシェフたちに感謝すると同時に、業界の未来が明るく見えるようで、とても嬉しく思いました。