権威ある国際製菓大会「シャルル・プルースト杯」に挑む日本人選手にインタビュー【第1弾】
2024年11月3日にパリで開催されるシャルル・プルースト杯。
シャルル・プルースト杯とは、パティシエ(ショコラティエ)たちによる、「最高の菓子作り」のための意見交換を主な目的として1981年に設立された協会『ルレ・デセール』が主催する、優秀な菓子職人であったシャルル・プルースト氏の功績を称えて始められた大会で、フランスを舞台に2年に一度開催される伝統的で権威のある国際製菓コンクールです。
今年は日本より2名の選手が決勝に出場します。
コンクールは芸術部門と試食部門の2つで審査が行われます。 パスティヤージュ(砂糖細工)、飴、チョコレートで構成されるピエスを創り上げる芸術部門のテーマは、「人工知能(AI)は、私たちを火星に連れていってくれるのでしょうか…?」。
世界人口の増加により、地球上の空間が不足している課題と新しいテクノロジーである人工知能を掛け合わせた革新的なテーマが発表されました。
そして試食部門では、「チョコレートを中心としたプチガトー」、「国産の季節のフルーツを使ったプチガトー」「自由なプチガトー」の3種類のプチガトーを制作します。
日仏商事では、シャルル・プルースト杯に出場する2名の選手へインタビューを行い、大会への意気込みを語ってもらいました。
今回は、2022年の内海杯で優勝し、シャルル・プルースト杯の出場を決めた品川プリンスホテルの森岡選手のインタビュー記事をご紹介します。
品川プリンスホテル
料飲部門(製菓・製パン)製菓担当 スーパーバイザー
森岡 邦泰 氏
▼Profile
華調理製菓専門学校卒業後、2007年に株式会社西武・プリンスホテルズワールドワイドに入社。2017年からスーパーバイザーに昇格し現在に至る。
=コンテスト受賞歴=
2013年 ジャパンケーキショー ピエスアーティスティック部門 銀賞
2015年 ジャパンケーキショー ピエスアーティスティック部門 銀賞
2017年 第25回内海杯技術コンクール 銀賞
2022年 第29回ルクサルド・グランプレミオ 4位入賞
2022年 第29回内海杯技術コンクール 優勝
ギリギリの状態でもあきらめずにつかんだ勝利
-森岡選手がお菓子の世界に入ったきっかけをおしえてください。
学生のころから美術や技術の授業でのモノづくりが好きで、さらにスイーツやパンも大好きでした。その頃の好きなものを組み合わせた結果、パティシエの道に進むことを決めました。
チョコレートや飴でピエスを創作するのは、学生のころからの憧れでしたので、今大会でそれに携わることができ、とても光栄です。
-シャルル・プルースト杯の予選大会となる内海杯技術コンクールに参加しようと思った理由は何ですか?
若手のころから、数多くのコンクールに出場してきました。
内海杯は世界的に権威のあるシャルル・プルースト杯への代表選手を決める大会なので、国内のコンクールの中でも敷居が高いと感じていたのですが、コンクールに参加していくうちに、色んなことに挑戦したいという気持ちがどんどん大きくなりました。
そして、世界大会に興味を持ち、そのきっかけとなる内海杯に挑戦しようと決めました。
-2022年に開催された第29回内海杯技術コンクール で見事内海杯を獲得されました。
ご自身のお名前が呼ばれたときの気持ちをおしえてください。
もちろん優勝を目指していましたが、いざ自分の名前が呼ばれると驚きを隠せませんでしたね。頭が真っ白になりましたが、壇上に上がると嬉しさがこみあげてくるのを実感しました。
内海杯に出場した当時は、国内で開催されていた別の決勝コンクールにも出場していたため、内海杯と並行して準備を進める毎日が大変で、日々の業務とコンクールの準備で時間が削られ、挑戦したいと思いながらも、この調子で実力を発揮できるか悩み、内海杯の出場を辞めようかと考えることもありました。
しかし、上司から「絶対に挑戦した方がいい」と力強い言葉をいただき、再度挑戦しようと心に決めて、全身全霊をかけて大会の準備をしました。
実は、内海杯のリハーサルに寝坊してしまい、一緒に出場していた同僚の電話で目が覚め、急いで準備をして会場に向かったというアクシデントもありました。
徹夜続きで疲労がたまっており、それくらい切羽詰まった状態で内海杯に向けて準備をしていましたね。
日本代表としての責任感と苦手意識からの脱却
-内海杯獲得から、シャルル・プルースト杯大会に向けて作品の完成度を高めるために、特に意識して準備をされたことはありますか?
2022年の内海杯大会を終えてから今年11月のシャルル・プルースト杯までかなり期間が空いたのですが、日本代表になったことを意識するだけで「やる気」と「責任感」がおのずと上がり、それをモチベーションにしてここまでやってきました。
私は以前から、飴細工のコンクールを中心に出場してきたので、チョコレートに触れる機会が少なかったこともあり、チョコレートに苦手意識を感じていました。
シャルル・プルースト杯では飴だけではなく、チョコレートも使用しないといけないため、自分の弱みであるチョコレートについて改めて勉強しながら練習を重ねてきました。職場の同僚や社内のチョコレートピエスを得意としている方にも相談して、知識だけではなくアイデアや技術を教えてもらった結果、それまで苦手意識があったのが、楽しいと感じるようになりましたね。
いまは、粘土状のチョコレートを使って形のないところから創り上げていく過程や、型をとって造形することに、飴とは違った面白さを感じています。
シャルル・プルースト杯では、芸術審査のピエスの他にガトーの試食審査もあります。
ガトーは、3種類のテーマが設定されており、最初は自分の作りたいものを中心に考えていたのですが、トレーニングでサポートしていただくシェフの皆様に試食してもらった時にさまざまなアドバイスをいただき、「自分の考えだけでは本当に美味しいものにたどり着かない」ということに気が付きました。
日本のトップで製菓業界を引っ張るシェフの皆様から頂いた貴重なアドバイスが自分の活力になり、財産となりました。
-作品を創るうえでどのようなことからインスピレーションを得ていますか?
ガトーの試食審査のために、パティスリーに足を運んでケーキを食べて流行をつかんだり、普段食べている何気ない組み合わせを改めて勉強し直したりしています。また、伝統的なものには絶対に揺るがない美味しさがあるので、それを見つめ直すことも大切です。
そういったところからインスピレーションを得ています。
そして、今回のピエスのテーマは「人工知能(AI)は、私たちを火星に連れていってくれるのでしょうか…?」。最初にこのテーマを知った時、「どうやってピエスで表現すればいいのだろうか?」とたじろぎました。
しかし、私なりに解釈し、時間をかけてストーリーを一から創り上げていくうちに、どんどん想像がふくらみ、楽しくなっていく感覚がありました。
今まで得た知識も存分に盛り込み、最高のピエスを創り上げています。
感謝を胸に、シャルル・プルースト杯に挑む決意
-シャルル・プルースト杯では達成したい目標はありますか?
達成したい目標はもちろん「優勝」です。それしかありません。
私一人の力ではこの大会に出場できなかったですし、出場にあたっても一人では準備を進められなかったことを実感しています。
どんなときも感謝を忘れず、その人たちの応援を背負って優勝を目指したいと思います。
-最後に、応援してくれている方々に向けて11月開催のシャルル・プルースト杯出場への意気込みをお願いします。
今まで培ってきた技術の集大成を、この大会で発揮できるように、そして今まで支えてくれた皆様に最高の結果で恩返しができるように頑張りたいと思います。
次回は、同じく日本代表として出場される新田 雄大選手のインタビュー記事をご紹介します。お楽しみに!
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