第59回大阪府菓子技術コンテスト ― パティシエたちが挑んだ“冬のショコラ”をレポート

第59回大阪府菓子技術コンテストが11月13日、大阪ガスショールーム ハグミュージアムで開催されました。 会場にはプロ・学生が手がけた多彩な作品が並び、朝から多くの来場者でにぎわっていました。

会場には、焼き菓子、マジパン細工、アメ細工、和菓子など、さまざまな部門の作品が整然と並んでいました。細部まで丁寧に作られた作品ばかりで、まるで美術館のような空気が漂っていました。



今年は作品展示とは別のエリアで、初めての試みとなるマジパン実演も行われました。
40分という制限時間の中、集中して手を動かすパティシエの姿に思わず足を止めて見入る来場者も多く、造形が立ち上がっていく瞬間には小さな感嘆の声が上がる場面も。
実演エリアは終始、ほどよい緊張感と高揚感に包まれていました。

会場の展示の中でも、ひときわ来場者の視線を集めていたのが「洋2部〈味覚・生菓子〉『冬のショコラ』 supplied by 日仏商事株式会社」の部門。
“冬のショコラ”をテーマに、DLA ナチュラルズまたはカカオバリーのチョコレートを使用して制作された多彩なアントルメが並び、その華やかさと個性あふれる仕上がりに足を止める来場者も多く見られました。
今回の「洋2部〈味覚・生菓子〉」部門で受賞したのは次の3名です。
大阪府知事賞 佐藤 信氏(株式会社河西いちご園)
優秀賞 大倉 誠志氏(FUTATSUKI)
優良賞 川原 一太氏(W OSAKA)
なお、大阪府知事賞を受賞した佐藤氏には、日仏商事よりチョコレートに加え、『エリクシアのフレンチレモネード』と『Charles Pougeoise(シャルル・プジョワーズ)のシャンパン』が副賞として贈られました。

▲表彰式のようす
今回、受賞した3名の方に、使用したチョコレートの印象や、作品づくりで意識したことについて伺いました。
受賞3名に聞く“冬のショコラ”に込めた想いと工夫

▲写真左から大倉氏、佐藤氏、川原氏
‐今回使用したチョコレートの印象を教えてください。
佐藤氏
今回は、主にDLA ナチュラルズ の〈ギマラス〉 を使用しました。普段使っているチョコレートよりも香りと酸味がしっかりしていて、味の輪郭がくっきり感じられました。いちごの酸味と合わせてもショコラの存在感が負けず、調整するほど新しい表情が出てくる、奥行きのある素材だと感じました。
大倉氏
作品にはカカオバリーのミルクチョコレート〈ラクテ〉とカカオ分70%の〈オコア〉を中心に使いました。ラクテは扱いやすく安定した仕上がりが得られる一方、オコアは酸味が強く最初は難しさもありましたが、試作を重ねるうちにその個性が“味の厚みをつくる要素”として生きてきました。
香りや酸味とのバランスを取りながら、素材と向き合う楽しさのあるチョコレートでした。
川原氏
今回は、カカオバリーの〈イナヤ〉と〈エクセランス〉 を使用しました。どちらもカカオの風味をダイレクトに感じられる素材で、ショコラそのものの味わいを表現するのにとても適していました。油分が少ないため温度管理には気を配りましたが、そのぶん食感や濃度の調整がしやすく、味の設計に幅を持たせることができました。

▲大阪府知事賞:佐藤 信氏(株式会社河西いちご園)の作品「Brillant Chocolate」
‐“冬のショコラ”というテーマにはどう向き合いましたか?
佐藤氏
いちご農園としての強みを生かし、いちごの酸味とショコラの深みが自然に調和する構成を意識しました。香り・酸味・塩味のバランスを微調整し、食べ進めるほど印象が変化する“冬のショコラ”を目指しました。
大倉氏
〈ラクテ〉と〈オコア〉の風味が自然になじむよう、味の一体感を大切にしました。ビターの強さはプラリネの香ばしさでやわらげつつ、ガナッシュやムースの質感を調整しながら全体のバランスを整えています。シンプルな構成だからこそ、細かな調整が必要なテーマでした。
川原氏
チョコレート本来の風味を主役にしたかったので、構成はできるだけシンプルにし、素材ごとの味の役割を分けて考えました。〈イナヤ〉と〈エクセランス〉の力強さを生かしながら、濃度や食感の違いでリズムをつくることを意識しました。

▲優秀賞:大倉 誠志氏(FUTATSUKI)の作品「ショコラ・ノワゼット・モカ」
‐今回の経験は、今後の作品づくりにどう活かせそうですか?
佐藤氏
いちごの酸味を引き立てるショコラを選ぶ重要性をあらためて実感しました。素材同士の響き方や味の重なりを丁寧に積み上げることで、より立体的な“味の物語”をつくれると感じています。今後の商品開発でも、今回のアプローチを活かしていきたいです。
大倉氏
〈ラクテ〉や〈オコア〉の個性をどう活かすか考えた経験は、これからの作品づくりにも確実に生きてくると思います。素材と丁寧に向き合いながら、よりやさしい甘さに調整するなど、応用の幅も広がりそうです。
また、ほかのパティシエの作品を見ることで新しい発見も多く、表現の引き出しが増えたと感じています。
川原氏
素材そのものの力がしっかりしたチョコレートと向き合ったことで、“ショコラを主役にした構成” の面白さを改めて感じました。味の組み立て方やバランスの取り方など、今回得た気づきは今後の作品づくりにも活かせると思います。
シンプルな構成でも、素材の良さをどう引き出すかという視点がひとつ増えました。

▲優良賞:川原 一太氏(W OSAKA)の作品「いごっそうのショコラベルガモット」
今回のコンテストでは、多くのパティシエが“冬のショコラ”というテーマに向き合い、個性あふれる表現を見せてくれました。
同じ素材でもまったく違う世界が生まれることに、ショコラの奥深さをあらためて感じます。
受賞された3名の皆様、この度はおめでとうございます。
来年はどんな新しいショコラが並ぶのか。
挑戦を続けるパティシエたちの姿が、次回への期待を高めてくれました。



