【講習会レポート】レミーコアントロー社製品を使った料理&製菓講習会レポート【前編】
コアントローといえば、菓子作りの香りづけに欠かせないオレンジのリキュールです。3月3日から3日間、このコアントローをはじめ、数々のリキュールやスピリッツブランドを擁するレミーコアントロー社が講習会を行いました。
講師として来日したのは、フランスのロワール地方・アンジェで店を営むシェフ2名です。「ふだんなにげなく料理や菓子作りに使っている洋酒を、特長や効果を意識した使い方を知ってほしい」との開会の言葉に、確かに筆者自身も「菓子作りにはコアントローやラム」と無意識に使っていることに気づき、講習会への期待感が高まりました。
会場の香川調理製菓専門学校には30人 近くのレストラン、パティスリー、カフェユーザーが集まり、講習会前半はサミュエル・アルベール シェフに料理における洋酒の使い方を披露いただきました。
コアントローが生まれたアンジェからシェフが来日
講習会前半に登場したサミュエル・アルベール シェフはフレンチレストランを2店経営するキュイジニエ(料理人)。コアントローに加え、レミーコアントロー社が扱うブランデーとラム酒を取り入れた9品の料理をデモンストレーションしてくれました。在日ベルギー大使館で料理長の経験があり、日本の食材や料理にも明るいことから、和食にインスパイアされた料理も披露されました。
「日本には思い入れがあり、今年も来日できて嬉しいです。フランスの私の店では、日本での経験を活かし、和食のテイストを取り入れたフュージョン料理も出しています。今日使う3つの酒は日常的にたくさん使っていますが、オリジナリティを出したいときには特に重宝しています」と挨拶しました。
「コアントロー 54°」はピンク色の肉に合う。フォアグラのムースにオレンジの香り

オレンジ コアントロー、フォアグラのムース、オレンジのインサート、コッペパン
まずは「コアントロー 54°」を使った3品。1品目は「オレンジ コアントロー、フォアグラのムース、オレンジのインサート、コッペパン」。フォアグラのムースとオレンジのジュレ、その間に薄くスライスしたブリオッシュ(コッペパン代わりに使用)をはさみ、オレンジ色に着色したカカオバターでピストレがけした、ひと口サイズの前菜です。「フレキシパンオリジン2265プティフール(半球)」で、形もオレンジそのものに仕上げられていました。「とても簡単でビジュアル的にもいいでしょう? こうして使う材料の形にすることも多いです」(サミュエル シェフ)。
フォアグラの風味づけにはブランデーが使われることが多いのですが、「鴨とオレンジ」は何といっても王道の組み合わせ。そこから発想して、フォアグラと「コアントロー 54°」を合わせたと言います。ガナッシュモンテのように泡立てたムースはごく軽く、「コアントロー 54°」の香りは後味にフワッと残る程度にほのか。食事に期待感をもたせる前菜にぴったりの料理でした。「コアントロー 54°」は白身の肉や鴨のようにピンク色の肉と相性がいいそうです。
「ラ ローズ ノワール ミニコーン」にフォアグラムースを詰めてアミューズ完成

ラ ローズ ノワールのミニコーン、フォアグラムース
このムースを「ラ ローズ ノワール ミニコーン」に絞ったメニューも飛び入りしました。「ワンハンドで食べられるので、カクテルに添えるアミューズになる」とサミュエル シェフ。「コアントロー 54°」で香りづけされているので、オレンジを使ったミモザなどのカクテルに抜群に合いそうです。
「コアントロー 54°」入りの蒸気で蒸しあげる魚料理

スズキのコアントロー蒸し、コアントローのオランデーズソースのシフォン
メイン料理として提案されたのは「スズキのコアントロー蒸し、コアントローのオランデーズソースのシフォン」。コアントローを魚と合わせる? 想像が及びませんでした。「魚とオランデーズソースの組み合わせは定番ですが、通常、レモンを加えるオランデーズにオレンジとコアントロー 54°を合わせます」(サミュエル シェフ)。
コンロでは海苔で巻いたスズキを蒸すセイロから蒸気があがっていましたが、蒸すための湯にも「コアントロー 54°」が加えられていました。材料への風味づけをこのような間接的な方法で行うことに新鮮さを感じました。
オレンジとレモンのピューレ、そして「コアントロー 54°」を加えたオランデーズソースのエスプーマは、柑橘類特有のビターな風味とクリーミーな舌触りで、蒸気でふっくらと仕上がったスズキの淡白な味わいにマッチし、添えられたオレンジと「コアントロー 54°」の甘みがとてもいいアクセントになっていました。
天ぷらにコアントロー? 洋酒の力でいつもの料理に新しい魅力をプラス

精進揚げ:野菜の天ぷら、コアントロー風味のポン酢
今回の講習会ではヴィーガンメニューも用意されました。「コアントロー 54°」を使ったヴィーガンメニューは「精進揚げ」です。「天ぷらに添えるポン酢にコアントロー 54°を入れるだけなのですが、みなさんにとって新しい発見になるといいです」とサミュエル シェフ。フランスの店で精進揚げを出すこともあり、そのときには香水瓶のような容器に「コアントロー 54°」を入れ、客席で精進揚げにスプレーするという演出も行っているそうです。「54°のコアントローはアルコール度数が高いので、ほんの少しで十分に香りがつけられます」
精進揚げに「コアントロー 54°」入りのポン酢をつけて食べてみると、ビターオレンジの香りは遠くに薄っすら感じられるくらいなのですが、香りの効果は十分で、全く新しい天ぷらに出会った感覚でした。
<まとめ>
・スイートオレンジとビターオレンジの香り成分を閉じ込めたコアントローは、魚、甲殻類、白身の肉、ピンク色の肉、白っぽい野菜(大根、アスパラガスなど)に合う。
・まず、柑橘類を使った料理に合わせてみるといい。
フランス産のブドウ100%を使った「サンレミー ブランデー XO 60°」でフランス版茶わん蒸し

ホタテのフラン、しめじ、クルミ、レーズン
料理で多用されるブランデーを使ったメニューも3品。「サンレミー ブランデー XO 60°」の原料は100%フランス産のブドウです。フレンチオークの木樽で熟成され、バニラ、完熟したフルーツ、蜂蜜の香りが感じられます。
「このサンレミー ブランデー XO 60°をマリネやソース、デグラッセなど、様々に活用していますが、アルコール度数がとても高く香りも強いので、少量で十分な効果を得られます。お酒と同じ風味のある食材に使うのがおすすめです。私はナッツや森の下草のような香りを感じるのでクルミとキノコを使いました」と、サミュエル シェフが話ながら紹介したのは、「ホタテのフラン、しめじ、クルミ、レーズン」でした。蒸し立ての熱々が配られ、参加者もヤケドに気をつけながら口に運んでいました。
なめらかなアパレイユの中にゴロっと具材が入っていて、「サンレミー ブランデー XO 60°」の香りに合わせて入れたクルミの食感がよく、サミュエル シェフが言う通り、まさに「フランス版茶わん蒸し」といった印象。ですが、「サンレミー ブランデー XO 60°」の香りはそれほど感じません。これについてシェフに聞いてみると、「サンレミー ブランデー XO 60°の風味は繊細です。『あれ、入っているの?』と思われるかもしれませんが、入っていないと、『何かが違う』となるはずです」と答えてくれました。納得です。
ナッツと森の香りがする「サンレミー ブランデー XO 60°」にはピーナッツやゴマを使った料理に使う

鶏もも肉のソテー、サンレミー風味のピーナッツソース
「鶏もも肉のソテー、サンレミー風味のピーナッツソース」は、皮目をパリパリに焼いた鶏肉に甘じょっぱいピーナッツソースを添えた料理です。ソースに加える「サンレミー ブランデー XO 60°」はやはりほんの少量。「鶏肉を焼くときに油はひきません。酒の香りを最大限に生かしたいので、余計な油は使いたくないのです。先ほども言いましたが、このサンレミー ブランデー XO 60°にはナッツや森の香りがありますから、ピーナッツソースに加え、シイタケとほうれん草もあわせました」

和茄子、味噌、サンレミー、ゴマ和え風
ヴィーガンメニューは「和茄子、サンレミー、ゴマ和え風」と和食風の響き。皮は濃い紫色でやわらかく、身も瑞々しい日本の茄子をシンプルに調理したものでした。煎って、ブランデーに近い香りを引き出したゴマでソースを作り、焼いた茄子に添えます。この料理はフランスでも出していて、サミュエル シェフは「茄子をこのソースに48時間漬け込み、注文が入ってから焼く」そうです。
「料理に酒を使うときに注意することは、熱を入れないこと。火を止めてから、香水のように仕上がりに使ってください。火を止めた鍋の中のソースにサンレミー ブランデー XO 60°を加えると、余熱でアルコール分が飛び、香りだけが残るのです」(サミュエル シェフ)
<まとめ>
・サンレミー ブランデーはナッツや森の下草の香り。風味が似ている食材と合わせるといい。
・豚、羊も含め、肉全般と相性がいい。
・香りが飛ばないように、火を止めてから加える。
カリブ海のバルバドス島で生まれた世界最古のラム蒸留所で作られる「マウントゲイラム55°」
サトウキビが原料のラム酒はカリブ海沿岸国が産地として知られますが、レミーコアントロー社が擁するマウントゲイは、カリブ海に点在する島のひとつ、バルバドス島で造られています。1703年、バルバドス島のマウントゲイ地区にできたこのラム蒸留所は世界最古と言われています。サトウキビから抽出される糖蜜と珊瑚の地層で自然濾過された地下水から生まれたマウントゲイは、伝統的な製法と匠の技でブレンドされた傑作です。
同社のガストロノミー ディレクター、フレデリック・ラタジャックさんは、「海に囲まれた環境で造られているので、マウントゲイはシーフードによく合います。また、サツマイモ、ココナッツ、バナナ、マンゴーなど、サトウキビと同じ気候で育つ食材とも相性がいいのです」と話していました。また、他に比べるとマウントゲイは高価ですが、その香りの強さから、使用量は他のラム酒の1/3程度で十分だとか。
「マウントゲイ ラム 55°」の焦がした風味に合わせ、刺身は軽く炙る

ブリの刺身、マリネ、炙り、ラムフランベ、サツマイモのロースト添え
サミュエル シェフのメニューはフレデリックさんの話を実感できるものばかりでした。「ブリの刺身、マリネ、炙り、ラムフランベ、サツマイモのロースト添え」は、「マウントゲイ ラム 55°」の焦がしたような風味に合わせ、ブリをバーナーで軽く炙っていました。ソースに入っていたかつお節も、その燻した香ばしさが「マウントゲイ ラム 55°」の風味と近いのでしょうか、よく合う! 意外に感じられた組み合わせも、産地や香りの共通点を考えると理にかなっているわけです。
ところで、ローストしたサツマイモは長方形に切り揃えられており、当然切れ端ができます。サミュエル シェフはこの部分をピューレにして、料理に添えていました。「フランスではシェフたちの食品ロスへの意識が高いです。私たちもできるだけ無駄を出さずに活用する工夫をしています」
海に囲まれた土地で生まれたマウントゲイラム55°はヨード風味の食材に合う

エビのパピヨット(マウントゲイの酒蒸し)、アーモンド、生姜
続く、「エビのパピヨット(マウントゲイの酒蒸し)、アーモンド、生姜」は、シートにエビ、殻付きのあさり、サーモン、野菜と生姜、「マウントゲイ ラム 55°」など材料を入れて包み、オーブンに入れるだけというレシピ。「この料理はお客様の前で封を開けて差し上げるのもいいですね。皆さん、お味はどうですか? マウントゲイ ラム 55°はヨードの風味にもよく合うんです」とサミュエル シェフ。

赤レンズ豆のダル、ラム、ココナッツミルク
「赤レンズ豆のダル、ラム、ココナッツミルク」はヴィーガンメニューで、今、ダルはヨーロッパで大人気なのだと言います。レンズ豆はタンパク質も豊富な豆です。代わりにインゲン豆や小豆にしてもいいし、温かくても冷たくてもおいしいので、付け合わせにしてもいいし、小さな器に入れてアミューズにもできます。
このレシピにはカレーパウダーとクミンパウダーが使われていましたが、ラムはスパイス全般とも合うということなので、様々なカレーの隠し味にもできそうです。
<まとめ>
・マウントゲイラム55°と同じ産地の食材と相性がいい。
・マウントゲイラム55°は特にシーフード、ヨード感のある食材に合う。
・スパイスとの組み合わせも楽しめる。
9品のデモンストレーションを終えたサミュエル シェフは、「これらの3種の酒をマリネやフランベ、デグラッセなど、いろいろな方法で使ってみてください。今、ヨーロッパではシェフたちが新しい風味を探す傾向にあります。コアントローやサンレミーブランデー 、マウントゲイラム55°を料理に使うことはひとつのアイデア。いつもの料理に新しさを取り入れたり、差別化につながったりするはずです。和食との組み合わせも簡単だと思います。まずは日本酒やみりんに置き換えてみるといいでしょう。それだけで、料理の差別化ができます。今日は味噌を使いませんでしたが、フランスの店ではコアントローと組み合わせることもあります。3日間の講習会にとても満足しています。また、来年も来られるといいですね」と締めくくりました。