フレデリック・ブロンディール ローンチイベント【開催レポート】
制作現場とシェフが語る、ショコラの現在地
ベルギーのショコラティエであり焙煎家、フレデリック・ブロンディール氏。
このたび日本でのプロ用クーベルチュールチョコレートの本格展開を前に、同氏のチョコレートブランド「Frédéric Blondel(フレデリック・ブロンディール)」のローンチイベントが東京と神戸で開催されました。
本イベントは、パティシエやショコラティエをはじめとする製菓業界関係者を招き、ブランドの歩みや思想、そしてチョコレート自体の魅力を五感で体感してもらうことを目的に企画されたものです。当日は、ブランド創設者であるフレデリック氏に加え、次世代を担う娘のエロイーズ氏も登壇し、ビーン・トゥ・バー製法や原料へのこだわりについて語りました。
伝統・情熱・職人技──ブランドを形づくる3つの軸
フレデリック・ブロンディールのチョコレートを語るうえで欠かせないキーワードは、「伝統」「情熱」「職人技」です。
もともとはコーヒー焙煎に携わっていた父の技術を礎に、カカオと向き合い続けてきたその姿勢は、流行や効率を優先するものではありません。
チョコレートづくりを仕事ではなく「日常そのもの」と捉える価値観は、娘エロイーズ氏へと受け継がれ、家族経営ならではの一貫した哲学としてブランドを支えています。
1994年から続く、確かなブランドの歩み
ブランドの原点は1994年、ベルギー西海岸の小さな村での工房開設に始まります。
2006年にブリュッセル市内へ進出後、2013年にはビーン・トゥ・バー製造を本格化。2017年には製造拠点を一本化し、現在は25〜30名規模のチームとともに、約3,000㎡の工房でチョコレートづくりを行っています。
規模を拡大しながらも、職人の手作業と品質を何よりも優先する姿勢は変わっていません。
カカオの個性を「壊さずに仕上げる」ための工程設計
イベント前半では、フレデリック氏自らがビーン・トゥ・バーの工程について詳細な解説を行いました。
強調されていたのは、原料選定から発酵、焙煎、粉砕、コンチングに至るまでの一貫した品質管理です。
今回紹介されたカカオは、カリブ海のセントヴィンセント、インドのケララ地方、ドミニカ共和国の3産地。それぞれ発酵期間や香味特性が異なり、焙煎温度も大きく変わります。
短期間発酵による果実感が印象的なセントヴィンセント、低温焙煎が求められるインド、長期発酵による深いコクを持つドミニカ。
フレデリック氏は、豆の状態を正確に見極めることで、再焙煎を防ぎ、香りを最大限に保つための冷却下での粉砕や繊細なコンチングを行っています。
それは「カカオの個性を引き出す」というよりも、「個性を壊さずに仕上げる」ための工程設計だと言えるでしょう。
ブラインドテイスティングで体感する、産地ごとの違い
続くパートでは、4種類のチョコレートをブラインド形式でテイスティング。
先入観を排し、香りの立ち上がり、口どけ、余韻に集中する時間が設けられました。
中でも参加者の関心を集めたのは、カカオ含有量55%のミルクチョコレートです。
一般的なミルクチョコレートよりも大幅にカカオ比率が高いにもかかわらず、はちみつやスパイス、ほのかな柑橘のニュアンスが感じられ、甘さに依存しない奥行きのある味わいとして高く評価されました。
「扱いやすさ」が広げる、表現の可能性
イベント後半では、本チョコレートを使用した菓子作品が提供され、日本のトップシェフをアドバイザーに迎え、西日本・東日本から各2名、計4名のシェフによる作品が披露されました。
ムース、マカロン、焼き菓子などを通じ、プロの視点からの評価が語られました。

▲京都 グラン・ヴァニーユ オーナーシェフ 津田励祐氏
セントビンセント70%チョコレート使用 ムース

▲福岡 オ・フィル・ドゥ・ジュール オーナーシェフ 吉開雄資氏
セントビンセントミルク55%使用 焼き菓子

▲東京 フキアージュ オーナーシェフ 畠山和也氏
インドダーク70%使用 フィナンシェ

▲東京 パティスリー リヴレーヴ オーナーシェフ 石黒啓太氏
インドダーク70%使用 マカロン
あるシェフは、「生クリームを多く使ったムースでも、チョコレートの存在感が埋もれない。軽さと味わいのバランスが非常に取りやすい」とコメント。
別のシェフからは、「フルーツを使わなくても、チョコレート単体で香りの広がりを表現できる点が印象的」との声も聞かれました。
また、「余韻が長く、焼き菓子でも香りが残る」「ガナッシュにした際の滑らかさが非常に安定している」といった、制作現場ならではの具体的な評価が多く寄せられたことも印象的です。
本物の価値を、次の創作へ
原料価格の高騰や代替チョコレートの拡大など、業界を取り巻く環境は変化しています。
その中でフレデリック・ブロンディール氏が一貫して掲げるのは、「今だからこそ、本物のチョコレートの価値を伝える」という姿勢です。
産地、発酵、焙煎、そして人。
そのすべてが凝縮された一粒は、単なる原料ではなく、パティシエの創造力を刺激する出発点となります。
日本での本格ローンチを迎えたフレデリック・ブロンディール。そのチョコレートは、これから多くの制作現場で、新たな菓子表現の可能性を広げていくことでしょう。

