2021.02.18

パティスリーでワークライフバランスを実現!?製菓業界で本当に実践できるかを調べてみました【採用事例】

皆さん、こんにちは。

「ワークライフバランス」。
製菓製パン業界には無縁な言葉と思った方は、もう古いかも知れません。
実は、筆者もその一人でした。
ここ最近、個人店しかも比較的小規模・少人数で運営されているお店に話をお伺いする事が多かったのですが、そこで感じたのが、いかに効率よく製造するか、休みをどれだけ確保するか、家族やプライベートの時間を大切にするかを考えられているオーナー様が非常に多く感じました。

個人店だから、無理をしてでも切り盛りをするのではなく、ワークライフバランスをしっかりするにはどうすればいいのか、そんな考えにシフトする職人が徐々に増えて来たのかも知れません。

今回取材にお伺いした、大阪 堺市のパティスリーはそれを実践している店舗の1つ。
製造は2名、
販売している商品は豊富、
日曜と月曜日がお休み(週休2日)、
休みは家族との時間を大切にする、
文字だけで見ても夢のようなパティスリーですよね。
しかも何となくタブーとされていそうなパティスリーで日曜日がお休み。

さて、それを実践するにはどうしているのか、早速取材先へと向かいます。

 

パリ郊外の雰囲気が漂う町、大阪 堺市にある本格パティスリー


さて、今回向かったのは大阪の堺市。
梅田や難波など、人が多く行き交うエリアとは違い、どこか下町情緒が溢れる場所。
大阪市内への通勤もしやすく、ベッドタウンとしても知られています。

今回のパティスリーがあるのは、JR阪和線 堺市駅から徒歩で2、3分の場所。

下町感のある、駅前の商店街を歩いていると見えてきました!

▲下町に溶け込む素敵なパティスリー

お店の前にいると、焼菓子の良い香りがしてきました。
早速お店の中へと向かいます。

▲落ち着いた照明の店内

▲生菓子以外にも焼き菓子も豊富

では、パティスリー レタンセルのオーナー今井さんにお話をお伺いします。

 

大阪府洋菓子コンテスト2連覇の実力派パティシエが作るお菓子はどれも洗練されていた


パティスリー レタンセル オーナーシェフ
今井 祐太 氏 

▼Profile
堺にあるパティスリー「コンツェルト」(※現在閉店)にて5年、ショコラトリーをメインとした店舗で1年働く。
その後、ベストブライダルグループの『アートグレイスウェディングコースト』(大阪市)でブライダルパティシエ
として約8年働き、シェフも歴任。
2019年11月に独立。
シェフの地元でもある堺市で『パティスリーレタンセル』を開業。
数々のコンテストでの受賞歴もある実力派。
●第52回大阪府洋菓子コンテスト(2017年9月)
ピエスモンテ・ショコラ部門 日本洋菓子協会連合会会長賞・大阪市長賞・最優秀賞
●第59回西日本洋菓子コンテスト(2018年6月)
チョコレート工芸菓子部門 優秀賞
●第53回大阪府洋菓子コンテスト(2018年 11月 )
味覚部門 チョコレートを使ったクリスマスケーキ 日本洋菓子協会連合会会長賞・最優秀賞

―この土地で開業した理由について教えてください
元々、堺市のお店で修業していましたので、馴染みのあるこのエリアで土地を探していました。
このエリアは、都会と言うよりも田舎に近い感じで人も多く住んでいますし、どこかフランスの雰囲気があるんです。
というのも、店の近くには教会やアールヌーボーを代表するデザイナー アルフォンス・ミュシャ館、西洋をイメージした公園(東雲公園)があったりと、自然とフランス文化を受け入れてくれそうだと思い、この場所で開業を決めました。
堺市は、人口も多く開業を目指す方にとって、あまりハードルも高くないエリアではないかと思います。

―お店で販売されているお菓子について教えてください。
当店では、フランスの田舎で馴染みのあるお菓子をコンセプトに、生活にとけこむようなお菓子の提供を目指しています。

現在のラインナップは、
生菓子20種位、
焼き菓子25種位、
です。

数あるラインナップの中で、当店のスペシャリテは2つあります。

1つ目は焼き菓子「フィナンシェ」です。

現在のフィナンシェに至るまで、関西や関東にあるパティスリーのフィナンシェを食べ歩き、そこから自分が美味しいと思えるフィナンシェを研究し、ゴールを見つけました。

2つ目は生菓子「アールグレイシトロン」です。

ダックワーズ生地がベースで、クレームシトロン、まわりをイタリアンメレンゲでコーティングしています。
オープン当初からこの商品は販売しており、毎日売り切れる人気商品の1つです。
デコレーションにフルーツを使用したケーキのように華やかなイメージのお菓子ではないので、お客様特にご年配の方に買っていただけるか不安な部分もありました。
イタリアンメレンゲをコーティングしたシンプルな商品が、果たしてイチゴのショートケーキと肩を並べられるのかと思っていましたが、実際に購入していただいた方のリピート率は高いです。
自分のパティシエ人生の中でスペシャリテではなかったのですが、お客様の声のおかげがそうさせてくれました。

 

コンテストへのチャレンジがお菓子作りへの意識を変えてくれた


―コンテストにチャレンジをしようと思ったきっかけは

私が修行をしていたパティスリーがコンテストに積極的なお店で、そこでコンテストにチャレンジする先輩たちの姿を見て、自分も挑戦したくなったのがきっかけです。
有名シェフや先輩方が、コンテストを通じて得た経験を生かし業界を牽引されているのを拝見し、当時(20代前半)製菓業界に入ったばかりの私は非常に影響を受けました。
私自身が、何かを考えて表現することは元々得意ではなかったのですが、コンテストへチャレンジする事でそこを変えられるのではないかと思い、コンテスト出場に向けて意欲が沸いてきました。

ただコンテストへのチャレンジは、そんなに簡単な事ではなく、日々の仕事が終わった後に、プライベートの時間を割いて練習をしました。
自分の時間を犠牲にするのは仕方なかったですし、そうしないと結果は出せないと思い、疲れた体に鞭を打ち練習する日々が続きました。

ープライベートの時間を割いてチャレンジした結果得られたものはなんですか
自分でゼロから何かを作り、表現をする性格にシフトできた事ですね。
コンテストに挑んでいる時は、常に「世の中にない物を出したい」、「周りを驚かせたい」という考えを四六時中持つようになりました。
実際に出場したコンテストでは苦い経験もしました。
でもその経験は無駄にはなっておらず、「人にすごいと思わせるポイントは何か」、「世界大会の作品は何がポイントで選ばれたのか」など、入賞できないで終わりという漠然とした考えで終わらず、他の作品との違いをしっかりと見て感じるようになりました。
それが、次のコンテストにチャレンジする時への作品作りにも生かされたと思います。

 

コンテストでスキルを付け、いざ独立開業へ


ーコンテスト出場でのスキル向上、そしてブライダルシェフとしても順風満帆な中、独立を選んだ理由は
コンテスト経験でも得た自分が思い描くお菓子をより具現化したかった事もありますし、ワークライフバランスへの取り組みをしたかった事もあります。
ブライダルシェフの時は、ブライダルは土日祝がメインで、そのタイミングで休むのはなかなか難しく、平日に休みを取るのですが、それですと子供と遊ぶ時間も少なく、どこかに行く機会もあまりありませんでした。
せっかく自分がお店を始めるなら、仕事も大事だが家族との時間も大切にして、毎週の休みには家族といる時間を増やし、妻の負担も軽減させてあげたいという想いがありました。

ーパティスリーでは珍しく日曜日を定休日にされていますが、売り上げに影響はないですか
日曜日は、お店の前にある幼稚園がお休みですし、商店街も人通りが少なくなりますので、定休日にしても問題がないと思い休みにしました。
また、今後の事も考えると、日曜日と月曜日の週休2日で、求人を出した時にも働きやすいお店だと思い、応募してくれるのではという想いもあります。
将来働く従業員にもワークライフバランスを考え、働きやすい環境を作りたいと考えています。

ー独立開業をする際に大変だったことは

正直、最初は何から始めたらいいか分かりませんでした。
独立に関する本もいっぱい売っており、書いていることも分かったのですが、結局何から始めたらいいのかが分からず右往左往している時に、日仏さんの独立開業セミナーに参加させていただきました。
そこでは、色々な業種の方からレクチャーを受けて、お話を聞けたのはありがたかったです。
あのセミナーがなければ、普段接点のない店舗デザイナーや公庫の方と話す機会もなかったと思います。
そして、その次に大変だったのが物件選びです。
自分がこの物件がいいなと思っても、建物のガスや電気の設備の兼ね合いでNGになったり、この場所は良いなと思う地域を見つけても、既に競合店が近くにあったりと、自分の求める条件に合った開拓されていない場所を探すのは大変でしたね。
この場所は、たまたま歩いていて大きなマンションが見え、気になったので視察しに行くと、駅からも近く、ある程度人通りもあるし、設備的にも問題がない物件も見つけられました。

 

少人数での生産体制をサポートするある材料とは


ーこちらのお店では、シェフを含め製造の方は2名体制との事ですが、これだけのラインナップを維持できる理由は
まず、開業当初から自分一人でできる範囲で始めようと思っていました。
誰かに頼ってやることは自分には合っていなかったので、2人での製造でまわるお店であれば、リスクも少ないかなと思っていました。
その中で、小規模でも色々できる取り組みをしていきたいと思い、業務効率をいかに良くするかを考えています。
冷凍できるものは冷凍しますし、当日の朝で間に合うものはそれで対応しています。
例えばですが、
「サンマルク」は焼き立ての方が美味しいのですが、前日に焼く事も可能です。
前日に焼いて、フィルムを巻いて、番重にいれて保管して、また当日は番重から出して作業するとなると、意外と効率が悪く、不要な作業が増えてしまいます。
効率を考えすぎて、逆に工程が増え非効率にならないようにバランスを考えるのは重要ですね。

ー使用する材料でも効率化に左右されますか
されると思います。
全て手作りとなるとやはり、工程も多く時間が掛かりますので、一部加工度の高い材料にも頼っています。
当店では、その材料にマルグリットの商品を使っています。
マルグリットの商品は、自分で製造する時間を大幅に短縮できる上に、クオリティが高いのがお気に入りです。
私が気に入っている2商品をご紹介しますと。

●ナパージュ(ロイヤルミロワールヌートル)
艶や伸びがよく気に入っています
ナパージュは、時間が経つとくすんでしまう事もありますが、マルグリットのナパージュは状態変化が起きにくい
のが良いですね。
ですので、当店で使用している生菓子のナパージュは、ほぼマルグリットを使用しています。
また仕込む量の調整がしやすいのも良いですね。
例えば、
黒のグラサージュを作る場合、ココアのグラサージュを5kg作って、そこに1kg分マルグリットの商品を使うと6kgになります。
1kg分をまた追加で手作りで作るとなると非常に手間にもなりますし、通常仕込む5kgでは多すぎる。
そこで量を調整する際に、上手くマルグリットのナパージュを混ぜ込んでいます。
そうする事で、今まで5日で1回仕込んでいたのが、7日で1回のサイクルに変更ができます。
非常に効率よく、時間短縮にもなりますね。

▲ロイヤルミロワールヌートルを使用した葡萄の生菓子

●プラリネクロカン
今までは自分で作っていましたが、プラリネクロカンは自分で作るよりもサクサクしていて食感も良いですね。
自分で作っても、理想になかなか近づけない物は色々ありますが、そういうレベルの物には上手く頼るべきだと思った商品の1つです。
この商品を採用したポイントは味はもちろん、自分で作る手間が省ける所です。
計量などの経験が無いと時間が掛かる工程を省けるので、アルバイトの方への作業依頼ができると思います。
なかなか求人を出しても職人が来ない昨今の製菓業界事情にもマッチしていると思いますね。
先ほどの、ナパージュ同様、後2個生菓子を製造するのにプラリネが足りないと思っても、いちから仕込まず、少量生産できるのは本当に助かります。
またいちから作るのに計量するのは大変ですからね。

▲プラリネクロカンを使用したグロゼイユの生菓子

▲プラリネクロカンを使用した生菓子

ーシェフには、2月にリリースになるプラリネアマンドSを先行でお試しいただきましたが、使用した感想は
実際に使用した感想ですが、味もよく発色も綺麗ですね。
風味も良く、ナッツやキャラメル感が強すぎず、食感も滑らかで良いですね。

▲プラリネアマンドSを使用して試作されたチョコレートケーキ

商品が発売されれば、パリブレストやクリームなどにも使ってみたいですね。
マルグリットのプラリネはどんな方にも好まれる味を表現しているのが素晴らしいと思います。
仮にそれこに特徴を出したかったら、自分で手を加えれば良いので、ベースとして使うのにも良いと思います。

―既製材料を使い始めることに抵抗はありませんでしたか
抵抗はありませんでした。
というのも私は、マルグリットが主催するトレーニング(フランス)に参加した事があり、実際にそこで商品が製造されているのを拝見しました。

▲トレーニング参加の際のエプロンがお店に飾られていました

果物などは、生産者の顔が見れたり生産方法を想像できますが、工場で製造されている商品は、そこが想像しにくい所があると思います。
では、自分で使うフルーツは自分で手作りするのか?というと仕入れて使っています。
今回トレーニングの途中でマルグリットの各商品を製造しているのを拝見し、誰かが手で作っているのを見ると、材料に対する考え方も変わりました。
実際に製造している現場を見るまでは、少し既製材料を使う事を懸念したところもありましたが、製造現場を見たことで抵抗はなくなりました。
フルーツと同様、それに関わる人たちが何かを作っている。
それを私が作るか、工場にいる人たちが作るか。
最終的には、誰かが作った物ですので、加工度の高い材料だからダメという考えは無いですね。

 

今後のお店の展望は?そしてこれからの若い世代にエールを


これからはまだまだできていないことにチャレンジしたいですね。
例えばチョコレートやヴィエノワズリー、そしてアシェットデセール、グラスなど、現在お店に並べていない商品に取り組みたいです。
ネット販売は現在はしておりませんが、私のお菓子を食べて喜んでもらえる人がもっと増えて欲しいので、今後は取り組みを検討したいと思います。

これからの製菓業界を背負っていく若い世代に伝えたいことは、
人に喜んで貰う事は、生半可な気持ちではできないという事です。
私もそうですが、積み重ねてきた努力があるこそ今があります。
ただ働いているだけでは美味しい物は作れないですし、何か目的を持って努力を積み重ねて欲しいですね。

 

取材後記


店舗がOPENした翌年に、コロナ禍を迎えたレタンセルさん。
こんな状況下でしたが、今井シェフは非常にポジティブでした。
常に新しいことを考えるシェフのお考えは、お菓子作りだけでなく、働くスタイルにも反映されていました。
ワークライフバランス。
製菓業界にもっと浸透すれば良いですね。

何となくコロナで製菓製パン業界も少し暗い雰囲気になっているかなと思いつつ取材をしましたが、そんな心配を吹き飛ばして下さった、シェフに感謝したいです。
私たちも一緒になって落ち込むのでなく、今のこの状況だからこそ何か明るい未来がないか突破口を見つける手助けが、記事の配信を通じてできれば幸いです。

これから独立を考えたい、ワークライフバランスを考えたい、そんな悩みを持たれた方はぜひ今井シェフのスタイルを参考にしてみてください。

 

取材協力


パティスリー レタンセル
住所:大阪府堺市北区東雲東町1-6-2(GoogleMapで見る
営業時間:11:00~20:00(売切れ次第閉店)
定休日:日曜・月曜 不定休あり)
※営業時間・定休日に関する情報は店舗HPまたはSNSをご参照ください
instagram:https://www.instagram.com/patisserie_letincelle/
※この記事は2020年12月に取材した内容になります

 

今井シェフもお気に入りのマルグリットのクロカンシリーズ。以下のボタンをクリックして簡単な内容に入力いただければ、対象商品のサンプル依頼が可能です。使用してみたいと思われた方は、この機会にぜひご利用ください。

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