故郷の味のフルーツビールで、まちにコミュニケーションを育む-open air(神戸)【クラフトビール採用事例】
2022年7月に神戸市にオープンした「NATURE STUDIO」。小学校の跡地を活用し、水族館やハーブショップ、カフェなど人が集うコミュニティ型複合施設となっています。この場所の一角にあるのが、クラフトビール の醸造所「open air (オープンエア)」。和歌山県の「NOM CRAFT Brewing(以下、NOM CRAFT)」で活躍していたベン・エムリックさんを醸造責任者に迎え、open airならではの独自のビールを生み出しています。
▼Profile
open air 醸造責任者
Ben Emrich(ベン・エムリック)
オレゴン州ポートランド出身。2011年に英会話講師として初来日。一度、故郷のポートランドへ戻り、クラフトビール の醸造を学ぶ。再び来日し、2016年に和歌山県有田市に「NOMCRAFT Brewing」をオープン。更なる可能性を求めて、2022年より「open air 」の醸造責任者に就任。
「みんなで楽しく飲めるビールを!」と味わいや香りだけでなく、飲みやすさにこだわるベンさん。『レ ヴェルジェ ボワロン(以下ボワロン)のフルーツピューレ』を使用したフルーツビールや、いくつものホップを組み合わせて作られたIPAなど、ビールの種類も多種多様。新天地の神戸でベンさんは、どのような想いをもって、ビールを醸造しているのかをお聞きしました。
神戸の醸造所「open air(オープンエア)」でビールを造る理由
70以上ものクラフトビール の醸造所があり、世界中のビール好きから注目を集めるポートランド出身のベンさん。日本に来たばかりの頃は、まだ「クラフトビール」 というジャンルは確立しておらず、飲みたいビールがなかなか手に入らない環境だったそう。そこで「自分たちで飲みたいビールを作ろう!」と和歌山県有田市に クラフトビール の醸造所「NOMCRAFT 」を立ち上げ、醸造責任者として数々のビールを世に送り出してきました。
そんな中、神戸を中心にまちづくりに取り組んでいた村上 豪英(たけひで)さん(現・株式会社オープンエア代表取締役)が、NOMCRAFTにやってきます。村上さんは神戸にクラフトビールの醸造所をつくることを計画しており、当初は醸造技術のアドバイスを得たいという目的で、ベンさんを訪ねたそうです。
「村上さんから『なぜこの地域でビールの醸造をしたいのか』という想いを聞いて、とても心惹かれるものがありました。また、神戸にはクラフトビール の醸造所がまだまだ少ない。きっと新たなチャレンジができる場所なんじゃないかと思い、私からopen air にジョインしたいと声をかけました」(ベンさん)
醸造所がある兵庫区には商店街があり、かつては多くの人が行き交うまちでした。どうすれば地域に、にぎわいを取り戻すことができるか。村上さんがアクションのひとつとして考え出したのが廃校を利用した「NATURE STUDIO」の取り組みでした。
「村上さんは工事中のこの場所に私を連れてきてくれて『醸造所ができたら、この場所で育ったハーブや果物を使ったビールを造りたいんです』と話してくれました。ローカルのものを使ってビール造りができるのはとても魅力的なことですし、何より村上さんの人柄に惚れたんです。いつも私の意見を尊重してくれ、互いにリスペクトし合える関係性を築けています」(ベンさん)
人と人を繋ぐきっかけとなるビールを
ここで生まれたビールが人と人を繋ぐきっかけとなり、まちがにぎわいを取り戻す。村上さんが描く未来に共感し、ベンさんはopen air でビール造りをスタートさせました。
多くの人が生活を営む都市部でありながら、海と山が近く、自然が身近に感じられる神戸のまち。社名の「open air」という言葉は、まちのオープンエア(開放的)な空間に人々が集い、ビールを片手に楽しんでほしいという想いが込められています。
「open airのビールを造るときに大切にしているのは、飲みやすいビールであること。それは単にビールを味わうだけでなく、一緒に過ごす人たちと楽しみながら飲めるようなビールであることが重要だからです。そのため、アルコール度数を低めにし、飽きずに飲み続けられるビールを目指しています」(ベンさん)
ただそれは、現時点での話。ベンさんはビール造りも、地域と共に発展していくものだと考えています。
「私たちは地域に開かれた醸造所ですので、まちの人々がどんなものを望んでいるのかを学び、変化していくでしょう。一番に醸造している仲間たち、NATURE STUDIO、そして神戸のまち。ローカルと共存しながらビールを、そしてopen airを進化させていく必要があります」(ベンさん)
故郷の味をオマージュしたフルーツビール
まちと共に進化し続けるビールを造る。その信念のもと、open airでは2022年4月から半年で40種類以上のビールを醸造しています。中には当社製品の「レ ヴェルジェ ボワロン(以下ボワロン)のフルーツピューレ」を使用した「raspberry wheat(ラズベリーウィート)」というフルーツビールもあります。
raspberry wheatは、フランボワーズピューレを使用した、きれいなピンク色のウィートエール。
※ウィートエール:小麦(=ウィート)を使用するビアスタイル。小麦由来の甘さとフルーティーな香りが際立ち、苦みが少なくまろやかな口当たりが特徴
「フルーツを使用したビールというと、果物の酸味と乳酸をマッチングさせてサワービールにすることが多いです。しかし今回は、私の故郷ポートランドにある『McMenamins(マクメナミンズ)』という醸造所で造られたビールをオマージュし、ウィートタイプのビールを造りました」(ベンさん)
※サワービール:アルコール発酵だけでなく、乳酸菌や野生酵母を使用し、乳酸などの酸を生成させてつくる酸味の効いたビール
McMenaminsは1985年にオレゴン州で初めてブルワリーパブ(醸造所を併設した酒場)をオープンさせた歴史ある醸造所。醸造所をオープンするだけでなく、廃業したホテルや劇場、学校をリノベーションしてまちの活性化を目指す活動もしているそうです。そんなところも、open airの目指す姿と通じています。
「私たちはローカルとの交流はもちろんのこと、他の醸造所との交流も活発に行っています。最近では埼玉県の醸造所『Williams Brewery』とコラボレーションし、フルーツサワービールを造りました。これは、アメリカの『チーズケーキファクトリー』で提供しているドリンクにインスピレーションを得て造ったビールです」(ベンさん)
こういったフルーツビールは、今後もどんどん造って行きたいと考えているそう。そのためにもボワロンのフルーツピューレは、かかせない存在だとベンさんは言います。
「生のフルーツを使用する際は、しっかりと洗浄をしなといけないし、大量に仕入れをするためにコストがかかりすぎてしまいます。また、適切なタイミングで収穫しないと糖の質が変わってくるので、コントロールが難しい。けれど、ボワロンのピューレを使用すれば、タンクに入れるだけ。他社のピューレと比較しましたが、ボワロンは香り・味ともにクオリティが高く、とても気に入っています」(ベンさん)
今後は、キウイやブラックベリー、ココナッツなども使ってビールを造ってみたいとのこと。 お話を伺っている間にも新たなビールのインスピレーションが湧いてきているようでした。人が集う神戸のまちで、新たなチャレンジに取り組むopen air。きっと、この場所に集う人たちが「おいしい!」と笑顔になれるビールが、どんどん生まれていくのでしょう。
株式会社オープンエア(open air)
湊山醸造所: 〒652-0031 神戸市兵庫区雪御所町2-18-102(NATURE STUDIO内)
open air神戸元町店:〒650-0021 兵庫県神戸市中央区三宮町3丁目2−2
オフィシャルサイト:https://www.openair.beer/
オンラインサイト:https://www.openair.beer/collections/everything
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