チョコレートの世界大会「ワールド チョコレート マスターズ’22」日本代表田中二朗シェフの3日間をレポート【World Chocolate Masters’22】
2022年10月29日から31日にかけてチョコレートの世界大会『ワールド チョコレート マスターズ’22(以下WCM)』が、展示会場「ポルト・ドゥ・ヴェルサイユ(所在地:フランス、パリ)」で開催されました。 日本代表として出場されたCALVA(神奈川県鎌倉)の田中二朗シェフ(以下、田中シェフ)は各課題の中で、最も高い点数を獲得した選手に与えられるベストカテゴリーアワードを「#SHARE、#TASTE、#BONBON」 の3つのカテゴリーで受賞しました。
本記事では、田中シェフがチョコレートマスターの称号を目指し挑まれた3日間の様子を現地に同行した社員のレポートにてご紹介します。
INDEX
DAY1|#SHARE(シェアするデザート)と#WOW(チョコレートのピエスモンテ)
WCMは、世界が注目するチョコレートの祭典「サロン・デュ・ショコラ」の会場で3日間に渡り大変な賑わいと熱気の中開催されました。
14時の競技開始の合図と共に、選手たちは一斉に一つ目の課題「#SHARE」の作業にとりかかります。ところが序盤から田中シェフにアクシデントが発生。シェフの作業場所だけ電気が通ってないのです!チョコレートアカデミー東京の尾形シェフやその他スタッフが復旧作業を進める中、田中シェフは冷静に別の作業に取り掛かります。なんとか電気が復旧し、観客席にいたサポーター一同もほっと安心。その後は順調に作業を進めていきます。
田中シェフは、カカオの実をイメージした土台となる器を6つ円形に並べ、キャラメルポップコーン・ダークチョコレートのアイスクリームをトッピング。ラズベリーソースをかけて6人でシェアできるデザートの完成です。
アレルギーのある人も無い人も隔てなく、皆が美味しく食べられるデザートとして従来の動物性生クリームは使用せず、全く新しいお米をベースとしたアレルゲンフリーであり、プラントベースである製品を提案しました。
プレゼンテーションも見事に英語でアピールし、18人中1位と最高得点を獲得。
二つ目の課題「#WOW(ピエスモンテ)」は「#SHARE」の課題と並行して取りかかります。作品を展示するショーケースは会場外周をぐるりと囲んでいるため、作業をする度ショーケースまで移動しなければなりません。「体感温度は30℃以上だった」と後日シェフが語るほど、この日の外気温は10月下旬のパリにしても異様に高く、さらに会場の熱気も最高潮に達する中で田中シェフは作業を進めます。
シェフにとって作品全てのコンセプトである「DELIGANT(デリシャスとエレガントの造語)」のアルファベットを型取った大きなチョコレートのパーツと、チョコレートで作ったパイプを柱のように重ねながら、下から絶妙な角度でパーツを積み上げていく田中シェフ。一文字一文字に込められたコンセプトアルファベット型のバスケットに本物かと疑う様なカラフルなフルーツや野菜で華やかに仕上げていきます。
もうすぐ完成、制限時間まで残り5分!と観客席からサポータースタッフが見守る緊張の中、ピエスモンテが上から崩れてしまいました…。
観客席からは、一瞬ため息が漏れかけましたが、田中シェフを鼓舞すべく大きな拍手が沸き起こります。
アクシデントに見舞われながらも最後まで諦めずやり遂げた結果、「#SHARE」の1位が功を奏し、初日の結果発表では総合7位。ベルギー代表として出場した松田詢吾シェフは、得意とするピエスモンテで点数を伸ばし、3位をマークしました。
DAY2|#TASTE(フレッシュパティスリー)と#BONBON(ボンボンショコラ)。そして#YOU(プレゼンテーション)
大会2日目は、二つの作品制作に加え、自身の作品について説明する1分間の英語でのプレゼンテーションを含む3つの課題に取り組みます。
「味に自信がある」と語る田中シェフ。初日に「#SHARE」で一位を獲得した波に乗り、同じく味覚部門である「#TASTE」と「#BONBON」で巻き返しを図ります。
「#TASTE」の課題ではルールで地元の食材を使用することが定められています。田中シェフが選んだ地元の食材は「柚子」。美味しいだけでなくビタミンなどの栄養が豊富であることから、選ばれたそうです。
この他、大会前に作成した自身のオリジナルダークチョコレート(オールノワール™)など様々なチョコレートを使用。自身の試食の順番が最後になることを考慮し、審査員が飽きないよう軽い食感にすることを意識したとのこと。リッチ、ヘルシー、様々なフレーバーが感じられるフレッシュパティスリーとなりました。
「#BONBON」の課題では、「未来志向」であることが求められ、砂糖少なめ、天然素材を使用などの条件がルールで定められています。
多くの選手が従来どおりモールドを使用してボンボンショコラを作る中、シェフは自らが考案した新しい器具を使用して審査員の興味を集めます。田中シェフは、棒状の金属の先にチョコレートを何度も浸しては引き上げるという作業を繰り返し、少しずつカカオポッドの形を作っていきます。
最後に細かい溝の入った黒い器具をスーッとボンボンに通すと、カカオポッドのような表面の凹凸が現れました。今までに無い新しい手法でつくられるボンボンに審査員は釘付けになり、田中シェフは終始多くの審査員に囲まれて作業を進めていました。この他、作り方だけでなくテイストもボンボンには珍しいスパイスを利かせたクラフトコーラ味のガナッシュと、フレッシュアップルを使用。仕上げは、バニラガナッシュとプラリネノワゼットで内側をコーティングしました。層を重ねるごとに少しずつ成長し、完全に成熟したところで収穫されるというカカオの木に実るカカオポッドを、このボンボンは外側の形だけでなく、その過程も表しています。
WCMはフランスで行われる大会ではありますが、審査員は世界各国から集まっているため競技中の公用語は英語となり、司会進行も全て英語で行われます。
そのため、英語が使えるということは大きなアドバンテージの一つです。他の課題では、作品のプレゼンテーションの際に通訳をつける選手もいますが、この日の最後の課題「#YOU」は通訳をつけず、選手自らが語る1分間のスピーチ。
18カ国の選手の中には、自国の言葉で話す選手やメモを見ながら話す選手も多く、残念ながら言いたいことが審査員やギャラリーに伝わっていないと感じる場面もありました。
田中シェフは、自らの言葉で伝えるため事前にしっかり準備を重ねた甲斐もあり、ぴったり1分で収まるパワフルなスピーチを行い、審査員や観客席からも大きな歓声を集めました。
5つの課題を終えたDAY2の最後に、DAY3に進出できる上位10名のスーパーファイナリストが発表されます。
発表の場では、点数や順位は公開されず一名ずつ選手の名前を呼ばれ、IN(残留)かOUT(競技終了)で選考結果が伝えられます。
ギャラリーがドキドキしながら見守る中、日本代表の田中シェフもベルギー代表の松田シェフもスーパーファイナリストに選出!あと1日WCMが楽しめるということで一同大興奮の瞬間でした!
DAY3|10名のスーパーファイナリストのみが参加できる最終日。課題は#TRANSFORM(トランスフォーム)と#DESIGN(小さなチョコレートデザイン)
スーパーファイナリストとしてDAY3に進出された田中シェフ。連日の緊張と疲労が重なる中、残り2つの課題に挑みました。
「#TRANSFORM」の課題はある共通のコンセプトをもとに、3タイプの異なるターゲットオーディエンスを想定し、彼らのニーズに合わせて、3つの全く異なる作品を創作する課題です。田中シェフは「チョコレートエネルギーバー」をモノコンセプト(単一コンセプト)として選択。チョコレートバーとしてエネルギーの源であるショ糖や果糖をバランスよく加えることでエネルギーを効率よく摂取できる、というメッセージを込めています。田中シェフは国内大会でも使用したコンセプトをさらに進化させ、「バナナ・アナナ(パイナップル)・トマト」の3種類のスナックを提案。
この作品については、シェフの恩師であるアテスウェイの川村シェフからも「この味は二朗にしか作れない」と太鼓判を押されるほど、ハイクオリティな味に仕上がっています。
この日の二つ目の課題「#DESIGN」は、大会側から与えられた白いアクリル製のベースを必ず使用することがルールで、総重量5㎏以内の小さなピエスモンテを作ります。
田中シェフは、それぞれのプレートに一枚一枚少しずつ形の異なるチョコレートの薄い板を並べていきます。ある角度から見ると「#DELIGANT」の文字が見えるという仕掛けで審査員を驚かせました。
結果発表!ファイナリストたちが互いの技術をたたえ合う感動のフィナーレ!
18時。課題を終えた後、いよいよ運命の結果発表が始まります。
全てのファイナリストが集合し、それぞれ審査委員長であるAmaury Guichon氏からの総評と共に、点数が告げられていきます。
結果は、初日から最終日まで、圧倒的な勢いがあったスペインのLluc Crusellas氏が堂々の優勝。作品全体に「砂漠や砂、乾いた大地のイメージを使いたかった」とプレスインタビューで答えたシェフ。特に300kgのチョコレートを使用した象のピエスモンテの前には、写真におさめようと常に多くのギャラリーが集まっていました。
2位はフランス Antoine Carréric氏。ブルターニュ出身で、全ての課題でブルターニュの素材を使用していました。3位はギリシャのNicolas Nikolakopoulos氏。
田中シェフは総合7位入賞。ベルギー代表の日本人シェフ松田詢吾氏は総合8位に入賞しました。
大会終了後、関係者を集めたパーティでは、各課題で最高点を獲得した選手に贈られるベストカテゴリーアワードの発表が行われました。田中シェフは、「#SHARE」、「#TASTE」、「#BONBON」の3つで受賞。味覚を競う4部門中3部門で世界一に輝くという素晴らしい結果となりました!
松田シェフは初日の#WOWと#DESIGNでそれぞれ2位に入賞。味覚に強い田中シェフとビジュアルに強い松田シェフが際立った大会となりました。
優勝を目指していた田中シェフにとっては惜しい結果となりましたが、各国の選手に引けを取らない競技中の審査員へのアピール、新しい技法の提案、そして自らの想いを伝える英語での力強いスピーチなど、日本人にとっての様々な「#TMRW(明日)」に繋がるような戦い方をされていたのが印象的でした。
#TMRWという難解なテーマに向き合い、選手は80ページ以上にもわたるルールブックを熟知し、3日間一人で7つの課題に挑み続けるという過酷な大会であることは確かですが、それでも参加する意義はまさに大会の現場でしか感じることのできない空気感、チームの一体感、達成感であると強く感じました。
私たちも、田中シェフが今大会で見せた明日につながるメッセージをWCMだけで終わらせず、新しい食の未来をサポートできる企業でありたいと思います。
田中シェフをはじめ、大会関係者の皆様本当におつかれさまでした!
画像提供:バリーカレボー社
※一部弊社社員撮影の物も含みます。
▼World Chocolate Masters日本運営委員会公式Instagram
https://www.instagram.com/jp_wcm_official/
▼World Chocolate Masters公式サイト
https://www.worldchocolatemasters.com
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▼World Chocolate Masters日本運営委員会公式サイト(ブログ)
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