2018/05/04

フランス在住パティシエにインタビュー【パティシエ通信Vol.06 ①】

言葉の壁を乗り越え 異国の地フランスで働くパティシエール

フランス・ジャルニー

今回のパティシエ通信Vol.6は、
フランス・ジャルニー在住のパティシエール”岸さん”が日本に一時帰国された際に、弊社にお招きしインタビューを行いました。

Vol.6では①~③までの3回の連載でインタビュー内容をご紹介します。

■Vol.6①~③の内容

  • 渡仏されたきっかけと事前の準備
  • フランスでの生活
  • フランスでの仕事と今後

フランスで修行をしたい、フランスで働きたいとお考えの方には必見です!!

パティシエール岸さん

 改めて、岸さんのご紹介をします。
18歳でフランスの製菓専門学校に留学。
日本に戻ってからは、神戸の『御影高杉』・『パティスリー モンプリュ』で修業後、実家の『パティスリーボンファルタ』に戻り9年シェフを務められ、ご自身のお店を閉めて単身で渡仏。
フランスのジャルニーに店舗を構える「パティスリー フレッソン」にて現在も働かれています。
常にストイックで、強い信念を持った岸さんに渡仏に関してお話を聞いた。

 

意外な理由でパティシエに!?


-パティシエになったきっかけは何ですか?

岸さん:

実は、私はパティシエになる前まではお菓子作りをほとんどしたことがなく、洋菓子よりも和菓子が好きだったんです 笑

では何故パティシエに?と思われるかもしれませんが、それは小学校まで遡ります。
私は、小学生の頃に読んだ漫画に影響を受けて、クラシック音楽を聴いたりフランスの文化を調べたりするようになりました。
その頃からフランスに憧れを持つようになり、「いつかはフランスで仕事をしたい!!」という気持ちになりました。

そして、高校2年の冬に進路を考えるタイミングが訪れました。
その時は、特にやりたい事が見つからず、実家のパティスリーを継ぐ決心をしました。

そこで、両親に相談をしたところ、 「職人になるならとことん極めろ!お菓子を極めるならフランスに行け!」 とアドバイスをもらい、高校卒業後はフランスにある製菓専門学校に1年間留学しました。

要するに、 お菓子が昔から好きで、将来の夢としてパティシエを選んだわけではなく、1つの職業としてパティシエを選択しました。

今思えば、進路を決めるタイミングでフランスに関連する貿易会社に勤めるという選択肢が思いついていれば、恐らく貿易会社に行っていたかもしれません。

モンプリュでの修行時代

モンプリュでの修行時代

 

広い視野を身に付ける為、単身で渡仏


-フランスに行こうと思ったのは何故ですか?

岸さん:

日本での修行時代に渡仏経験のあるシェフの下で働く事でフランス情報を聞く事も多く、お菓子を作っていて日本にはない素材(フルーツ)を使う事もありました。

次第に、
「もっとフランスを知りたい」
「フランスにある素材を見たい」
「現地のお菓子をもっと知りたい」
などなど、フランスへの憧れが増していきました。

それとは別に、日本で働いていた際に感じ始めたのが、もっと自分の視野を広げたいという気持ちでした。

日本で働き続けることが悪いのではなく、私なりに視野を広げる方法として考えたのが、異国の地に行って、日本では経験できない事を経験する事でした。   最初は悩みましたが、シェフを務めた実家のお店を閉店し渡仏に踏み切りました。

 

思い立ったらすぐ行動!!渡仏に向けて準備


-渡仏前に何か事前準備はされましたか?

岸さん:

渡仏するとなると
「何を準備してたら良いの?」
「就職先はどうやって探すの?」
「お金はどれ位いる?」
などなど、不安になる事は多いと思いますが、私の経験に基づいてご紹介しますね。

まず私が、渡仏前に準備したのは、
・フランスでの就職先
・就労ビザの取得
・フランス語の勉強
この3つはマストです!!

-就労ビザ取得と働き先を探すのはどうされましたか?

岸さん:

私の場合は、留学時代の友人がフランスに在住していましたので、その友人に相談をしました。
その友人からの助言は、「田舎であれば就労ビザが取得しやすいよ」という事でした。
正直それを聞いて、「田舎か…」と思いました。

というのも、私はフランスに行くならパリで働きたいと思っていた為、田舎で働く気はあまりなく正直悩みました。

その事を知り合いのシェフに相談をしたところ、 「フランス菓子をしたいなら地方に行った方が良い」といわれました。
そのアドバイスを受け、 改めてフランス在住の友人に連絡を取り、知っているお店を紹介してもらい、そのお店で働いている日本人の方を通じてオーナーに連絡をしていただきました。

私がお店にアプローチをしたタイミングは非常に良く、そのお店で働いている日本人の方が辞めるタイミングだったんです。 その方の代わりの職人を探していたそうで、履歴書を送ってわずか2週間ほどで採用が決まりました。
その後、すぐに就労ビザを取得しました。

-渡仏する前に、フランス語は勉強されましたか?

岸さん:

そうですね…実はほとんど勉強はしませんでした 笑
高校を卒業して、留学する前はフランス語会話に通っていましたが、仕事をする上ではあまり役に立ちませんでした。
渡仏後は、語学力の無さに困りました。

実は今もですが… 「現地に行けば何とかなる!」というのは迷信ですね 笑

ちなみに、就労ビザを申請した初年度にフランスで小テストが実施されます。
その成績が悪いと指定の授業を強制的に受講(費用は無料)しないといけません。
私はその成績の結果、合計50時間の授業を受ける必要があり、休みの日に1回7時間の授業を受けに行っていました。

まだまだフランスの生活にも慣れていない頃で、休みの日は授業を受けに行っていたので精神的にも疲れたのを覚えています。

実際にパティシエとしてフランスで仕事をする上で必要!! だと思ったフランス語は、
①材料の名前
②使用する器具の名前
③自分の意思を主張するときの簡単なフレーズ
の3つでした。

幸いにも私は、フランスでの留学経験・フランスで修行経験のある日本人シェフの下で働いていた事もあり、①②は自然と仕事の中で身に付いていました。
特に①②は、現地で働く際には非常に重要になります。
例えば、
渡されたレシピを読む時に先程挙げた①②が読めないとレシピを理解するのも困難です。
渡仏を考えられている皆さんはまずこれだけでも覚えるようにしてみてはいかがでしょうか。
難しいのは、③の意思を主張する時です。 正直これは正解がありません。
その状況に合わせて回答する内容は変わります。
この場合は、辞書を引いたり日本人の友達に聞いて主張する際のフレーズを教えてもらいながら覚えていきました。

-渡仏する為に準備された資金はどれくらいでしたか?

岸さん:

私が準備したのは、80万円位でした。
ただ、準備した資金は実際にフランスではほとんど使いませんでした。
現地で働いた給料もありましたし、住んでいた場所もお店で準備してもらっていましたので、家賃も安く現地で働いた給料から全て引かれていました。

でも、その80万円が役立つことが!!

渡仏した初年度の事ですが、日本で働いていた際の所得税等の税金の支払いが必要になり、その貯金を使って支払っていました。
渡仏2年目は大丈夫ですが、渡仏する事に必死になっていると忘れてしまうこともあると思いますので、ここは要注意です!

渡仏する時に何を準備したら良いの?と悩まれている方は、 まず、”働く場所へアプローチ”、働く先が決まれば”就労ビザを取得”し、”仕事で使う道具や材料のフランス語を勉強”してみて下さい!!

あとは仕事をしながら徐々に慣れて行きましょう!!

岸さんありがとうございました。
今回のVol.6 ①では、渡仏前の準備などを岸さんにお聞きしました。

今後、渡仏しようと考えられている方は是非参考にして、渡仏の準備をしてみてはいかがでしょうか。

では次回Vol.6②からは、実際に渡仏後の現地での生活や仕事についてお聞きした内容をご紹介します。

次回もお楽しみに!!

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