2024/08/15

洋菓子界の巨匠の魂を受け継ぐ、『内海会』とは


『内海会』という名前は、洋菓子業界にいる方なら一度は耳にしたことがある人も多いはず。

日本のトップパティシエによる講習会を定期的に開催し、若手パティシエのスキルを競うコンクールなど、長年にわたり、国内外で高く評価される多くのパティシエを育ててきた洋菓子団体の一つです。

しかし、その実態についてはあまり知られていないかもしれません。

今回は、『内海会』とはどのような団体なのか、また、ルレ・デセール シャルル・プルースト杯との関係についてご紹介します。

『内海会』とは

『内海会』は現代ホテルベーカリーの創始者として、わが国の洋菓子界に多大な功績を残した故・内海安雄(うつみ・やすお)氏※ の思想を継承することを目的に、氏の門下生が集まり発足しました。氏の生前から、新しい洋菓子技術・技能の研鑚と、それを担う若い菓子職人の育成および業界全体の技術向上を目指して講習会やコンクールを開催しています。

※ 故 内海 安雄氏 略歴
大正2年(1913年)横浜生れ。昭和5年(1930年)横浜ホテルニューグランド ベーカー部に入社。
戦前・戦後を通じて、ホテルベーカーとしての道を歩む。
日活ホテル、ホテルニュージャパン、東京プリンスホテル、ホテルセンチュリーハイアットと、新しいホテルが誕生するたびに、請われてベーカー・シェフとして赴任。
ヨーロッパ菓子の伝統手法をベースに、新しい技術・技法の開発と普及に努め、現代ホテルベーカーの基礎を築く。
常に最善を尽くす真摯で誠実な姿勢と、菓子職人としての誇りは、師事する若い職人たちに感銘を与えた。昭和61年(1986年) 現役を引退。平成7年(1995年)3月29日、永眠。享年81歳。

内海先生の3つの教え
「菓子職人としての誇りを大切にする」、「仕事に職場に、忠実に誠実に」、「常に最善を尽くす」。この内海先生の教えを励みとする門人たちの手により、1979年内海会は誕生しました。

現在のホテルベーカーの主流を占める各ホテルのシェフたち、修業を基に独立・開店したオーナーシェフたち、直接・間接に薫陶を受けて育った数多くの職人の心に、師のエスプリはいまも脈々と受け継がれています。

内海会の歩み

1979年 内海安雄先生を囲む会として「内海会」が発足
1986年 内海安雄先生の現役引退を機に、「内海会」としての本格的結束を見る
木村富士郎名誉会長、伊藤和美会長を中心に会の運営が始まる
1992年9月 会長が、伊藤和美氏から渡辺義雄氏へ代わる
1993年3月 内海安雄先生の傘寿の祝いを開催
11月 初の「内海杯技術コンクール」を開催
1995年3月29日 内海先生 永眠
1997年3月 第1回「内海会ジュニアコンクール」(23歳以下を対象)を開催
2004年4月 会長が渡辺義男氏から横田秀夫氏に代わる
2015年11月 味覚コンクールが内海杯と同時開催で始まる
2023年11月 「内海杯」30周年記念大会を開催する
2024年4月 会長が横田秀夫氏から寺井則彦氏に代わる

内海会とルレ・デセール シャルル・プルースト杯

『ルレ・デセール』とは、パティシエ(ショコラティエ)たちによる、「最高の菓子作り」のための意見交換を主な目的として1981年に設立された協会です。
メンバーになるためには、既存メンバー2名からの推薦が必要で、メンバーの前でのプレゼンテーションを経て認定されます。 現在協会のメンバーは、ヨーロッパを中心に世界17カ国86名のパティシエが加盟しています。

ピエール・エルメ氏やジャン=ポール・エヴァン氏をはじめ、内海会会長の寺井則彦氏(エーグルドゥース)、及川太平氏(パティスリー アン・プチ・パケ)、金子美明氏(パリセヴェイユ)、内海会本部長の川村英樹氏(アテスウェイ)が日本からのメンバーとして参加しています。

2022年シャルル・プルースト杯コンクールでは佐々木沙織選手が優勝、田中啓太選手が準優勝に輝きました

▲2022年シャルル・プルースト杯コンクールでは佐々木沙織選手が優勝、田中啓太選手が準優勝に輝きました

ルレ・デセールが主催するシャルル・プルースト杯は、優秀な菓子職人であったシャルル・プルースト氏の功績を称えて始められた大会で、フランスを舞台に2年に一度開催される伝統的で権威のある国際製菓コンクールです。
選手たちは協会から提示されたテーマに沿って、競技時間内にピエスとアントルメを制作し、技術や味、独創性などの審査基準によって採点された総合点により上位3名が選ばれます。

佐々木沙織氏 製作のピエス・モンテ

▲佐々木沙織氏 製作のピエス・モンテ

毎年秋に内海会が主催し開催される「内海杯技術コンクール」では、シャルル・プルースト杯の日本代表選手の予選大会となっています。
「内海杯技術コンクール」は、菓子製造に携わるすべてのプロを対象としたコンクールで、日本を代表するパティシエで構成された内海会理事が審査員を務めていることからも、レベルの高い権威あるコンクールとして知られています。

第29回 内海杯技術コンクールで内海杯を獲得した森岡氏(中央)

▲第29回 内海杯技術コンクールで内海杯を獲得した森岡氏(中央)

第30回 内海杯技術コンクールで内海杯を獲得した新田氏(中央左)

▲第30回 内海杯技術コンクールで内海杯を獲得した新田氏(中央左)

2024年11月に開催されるシャルル・プルースト杯では、「第29回内海杯技術コンクール(2022年開催)」で内海杯を獲得した森岡邦泰氏(品川プリンスホテル)と、「第30回内海杯技術コンクール(2023年開催)」で内海杯を獲得した新田雄大氏(グルメ和光)が出場いたします。

次回は2024年シャルル・プルースト杯に出場する選手をご紹介します。

内海会の最新情報はこちら

公式HP:https://ameblo.jp/utsumi-kai/
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