2024/10/24

権威ある国際製菓大会「シャルル・プルースト杯」に挑む日本人選手にインタビュー【第2弾】

2024年11月3日にパリで開催されるシャルル・プルースト杯。

シャルル・プルースト杯とは、パティシエ(ショコラティエ)たちによる、「最高の菓子作り」のための意見交換を主な目的として1981年に設立された協会『ルレ・デセール』が主催する、優秀な菓子職人であったシャルル・プルースト氏の功績を称えて始められた大会で、フランスを舞台に2年に一度開催される伝統的で権威のある国際製菓コンクールです。
今年は日本より2名の選手が決勝に出場します。

コンクールは芸術部門と試食部門の2つで審査が行われます。 パスティヤージュ(砂糖細工)、飴、チョコレートで構成されるピエスを創り上げる芸術部門のテーマは、「人工知能(AI)は、私たちを火星に連れていってくれるのでしょうか…?」。
世界人口の増加により、地球上の空間が不足している課題と新しいテクノロジーである人工知能を掛け合わせた革新的なテーマが発表されました。
そして試食部門では、「チョコレートを中心としたプチガトー」、「国産の季節のフルーツを使ったプチガトー」「自由なプチガトー」の3種類のプチガトーを制作します。

日仏商事では、シャルル・プルースト杯に出場する2名の選手へインタビューを行い、大会への意気込みを語ってもらいました。
今回は、2023年の内海杯で優勝となり、シャルル・プルースト杯の出場を決めたグルメ和光の新田選手のインタビュー記事をご紹介します。

株式会社グルメ和光
リーダーショコラティエ
新田 雄大 氏

▼Profile
1996年宮城県多賀城市出身。
2015年に辻調理師専門学校東京校に入学後、翌年2016年に同校のフランス校へ留学し、本場フランスの製菓を学ぶ。
卒業後はインターコンチネンタル東京ベイに入社、その後、ブルガリ イル・チョコラートを経て2022年にグルメ和光に入社し現在に至る。
=コンテスト受賞歴=
2019年 ジャパンケーキショー ピエスアーティスティック部門 銅賞
2020年 第28回内海杯技術コンクール 銅賞
2023年 第30回内海杯技術コンクール 優勝

美しいピエス見て感動そして夢を現実に


-新田選手がお菓子の世界に入ったきっかけをおしえてください。
私の祖母と母がとても料理上手で、食卓には毎日いろんな料理が並ぶ家庭で育ちました。
その影響で私は、幼稚園の頃から台所に立ち、手を切ってケガをしながらも包丁を握ってお手伝いをすることが大好きで、幼稚園や小学校で将来の夢を聞かれたときには、そのときハマっていたものに関連した職業と「料理人になりたい」という2つの夢を答えているような子供でした。
ただ、そのときに答えていた「料理人」というのは漠然と「料理がしたい」というもので、時がたち「料理」の中にも和食やフレンチなどいろんなジャンルがあることを知りました。

その後、たまたまお菓子に触れる機会があり、料理は祖母や母から教わって知識が身についていましたが、「お菓子」というジャンルはあまり触れてこなかったため新鮮に感じ、とても興味を惹かれたんです。

また、私の誕生日が12月26日でクリスマスと1日違いということで、クリスマスと誕生日のお祝いでは必ずケーキが2台用意されていました。
そういった特別な体験もあって、「お菓子」という世界に興味を持ち、製菓専門学校で詳しく学びたいと思ったのが、お菓子の道に進むことを決めたきっかけです。

-シャルル・プルースト杯の予選大会となる内海杯技術コンクールに参加しようと思った理由は何ですか?
コンクールに出場したいと思ったきっかけは、専門学校のカリキュラムでフランス留学をしたときのことでした。
当時の私は、「お菓子は食べるもの」という概念からこの世界に入ったので、食べられないお菓子を作るという考えは持っておらず、コンクールはパティシエの副産物だと勝手に思い込んでいました。

しかし、パリのサロン・デュ・ショコラで開催された2018年のシャルル・プルースト杯を学校の授業で観に行ったときに、その考えがガラッと変わったんです。
各国の選手のピエス作品を見ていくなかで、「ナポレオン」というタイトルのひとつの作品に目が留まりました。

2016年シャルル・プルースト杯 佐々木元選手作品:「ナポレオン」

▲2016年シャルル・プルースト杯 佐々木元選手作品:「ナポレオン」

なんて綺麗なんだろうと見とれてしまうほどで、この作品を作ったのが日本代表の佐々木元選手だと知り、より感銘を受けました。
そして、そのピエスがきっかけで、いつか自分もこの舞台に立ちたいという憧れを持つようになりました。

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内海杯は、シャルル・プルースト杯の日本代表選手を決める大会なので、出場するのは必然だったと思います。

-2023年に開催された第30回内海杯技術コンクールで見事内海杯を獲得されました。
ご自身のお名前が呼ばれたときの気持ちをおしえてください。
日々の業務とコンクールの準備で1週間まともに寝ておらず、結果発表のときも放心状態だったので、正直あまり記憶にないです(笑)
ただ、内海杯は自分が作品を出さないときでもお金を払って見に行っていた憧れのコンクールだったので、夢の舞台に立つことができて嬉しかったことだけは覚えています。

専門学校卒業後に勤めたインターコンチネンタル東京ベイはコンクールの出場に積極的に挑戦させていただける職場だったので、シェフを務められていた徳永さんをはじめ、職場の先輩方もよくコンクールに出場されているのを間近でみていました。
先輩方がコンクールの準備で努力する姿や、実際にコンクールを観に行くことで多くのことを学ばせていただき刺激をもらったので、自分から何か感謝を伝えることはできないかと考えていました。
内海杯を獲得したことで、先輩方への感謝の想いを形にできたのではないかなと感じています。

シャルル・プルースト杯に挑む制作準備


– 内海杯獲得から、シャルル・プルースト杯大会に向けて作品の完成度を高めるために、特に意識して準備をされたことはありますか?
シャルル・プルースト杯の芸術部門ではピエスの中に、パスティヤージュ(砂糖細工)、飴、チョコレートの3つを使う決まりになっていますが、どの大会をみてもパスティヤージュ(砂糖細工)の主張がほかの2つに比べて弱いと感じていました。
私はその部分を逆手に取って、パスティヤージュにも力を入れてピエスを創ろうと思い制作しています。着色料は使わず、あえて砂糖の白さを生かし、チョコレートの茶色、飴の彩りと調和した作品に仕上げています。

作品を創るときは、自然の中にいる動物をモチーフにすることにこだわって考えているのですが、今回のピエスのテーマが「人工知能(AI)は、私たちを火星に連れていってくれるのでしょうか…?」ということで、瑞々しい自然というアイデアは完全に封鎖されてしまいました。

そこをどうやって打破するかということにかなり苦戦をしました。
私が得意とする、愛嬌のある動物的な動きにしてしまうとAIや機械というテーマから外れてしまうため、無機質さを出しながらもどうやったら自分らしい作品ができるかを多くの時間をかけて悩み、創り上げました。

-作品を創るうえでどのようなことからインスピレーションを得ていますか?
特に意識しているわけではないのですが、出来上がった作品を観てもらうと「アニメっぽいね」と言われることがよくあります。

第30回内海杯技術コンクール作品:「孔雀 水辺にて」

▲第30回内海杯技術コンクール作品:「孔雀 水辺にて」

漫画やアニメが好きなことが影響しているのだと思いますが、私自身、その意見が嫌いではないんです。
子どものころにワクワクするものは人の心を動かしやすいと思っているので、「アニメっぽい」「漫画っぽい」と言われるのは最大の褒め言葉だと思っています。

自分じゃない、皆のために大会に挑む


-シャルル・プルースト杯では達成したい目標はありますか?
シャルル・プルースト杯のトレーニングを進める中で、自分の技術力の低さを痛感する毎日です。
もちろん、良い結果を残したい気持ちはありますが、どんな結果であっても受け入れる覚悟はできています。
全力で大会に挑むことはもちろん、この大会を通じて多くのことを学んで帰りたいと思っています。

- 最後に、応援してくれている方々に向けて今年11月開催のシャルル・プルースト杯出場の意気込みをお願いします。
私ひとりでは何もできなかったと思います。
自分のためというよりは、前職の先輩や今の職場の同僚、後輩、仕事で知り合った方など、支えてくださったすべての人たちから、最後に「よかったね」と言ってもらえるように精一杯頑張りたいと思います。


さて、いよいよ大会の開催も近づいてきました。
N&Fマガジンでは大会の速報もお届けしていきます。

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