2025/08/13

Chocolatier Masâle(ショコラティエ マサール)松田詢吾氏 製菓講習会

ワールドチョコレートマスターズ出場シェフのテクニックとアイデアから学び、エスプリに触れる濃密な1日

2025年7月1日 ・2日
日仏商事株式会社 東京事業所パティスリーラボ

松田 詢吾氏/TOGO MATSUDA
Chocolatier Masâle(ショコラティエ マサール) スーシェフ

▼Profile
2009年に辻製菓専門学校卒業後、東京「ル・パティシエ タカギ」にて修行。
その後渡仏し、パリの「シュクレカカオ」にてジェームズ=ベルティエ氏に師事。
帰国後、「ジャン=ポール・エヴァン ジャポン」、「ラ・パティスリー ベルジュ」で経験を積む。さらにベルギーに渡り、「Patisserie Chocolaterie Yasushi Sasaki」(2024年度 Gault&Millau 最優秀ショコラティエに認定)にて4年半シェフとして腕を振るう。
現在は北海道の「ショコラティエ マサール」にてスーシェフを務め、北海道の食材とチョコレートのマリアージュを研究しながら独立の準備を進めている。
Instagramアカウント
https://www.instagram.com/togo_matsuda?igsh=MjVjNXlnZjc4cHA2
[経歴]
2015年 内海杯ジュニアコンクール ショコラ 銅賞
2015年 ジャパンケーキショー大型ショコラ部門 銅賞
2016年 ジャパンケーキショー大型ショコラ部門 金賞
2017年 ジャパン ベルコラーデアワードファイナリスト
2019年 Grand Prix National de la Gourmandise (フランス ディジョン)優勝
2022年 ワールドチョコレートマスターズ ベルギー代表

日仏商事株式会社 東京事業所のパティスリーラボ※にて、7月1日・2日に松田詢吾氏を迎えて製菓講習会が開催されました。日仏商事が取り扱う製菓材料や機械も使用し、さまざまなテクニックやアイデアが披露されました。
※パティスリーラボ…温度と湿度に設定されたラボで、製菓の研究に活用されている。

プティガトー「ROUGE/ルージュ」に詰まった、テクニックと想い

松田氏の自己紹介の後、さっそく見せていただいたのがプティガトー「ROUGE/ルージュ」。その名の通りあざやかな赤色が印象的なチョコレートムースです。

フルーティーで酸味が際立つDLAナチュラルズのチョコレート『ギマラス』を使用したムースの中に、ボワロンの「フランボワーズブリゼ」を入れたクレームブリュレを忍ばせ、底にはザクザクしたビスキュイを合わせてあります。食感の組み合わせもさることながら、ビターチョコのしっかりしたカカオ感にフランボワーズの酸味、クロカンショコラに使用した「フルー ドゥ ゲランド」の塩味が奥行きを与え、濃厚な味なのに飽きることなく最後まで新鮮な感動が続きました。

「もっと複雑なものにもできるが、それがお客さまにとっての『美味しい』になるとは限らない。より多くの方に伝わる美味しさを大切にしたい。」という松田氏のポリシーを感じられる一品でした。

参加者が驚いた、テンパリングなしのデコレーション

ルージュの実演時に披露されたさまざまな手法の中で、最も驚きを持って迎えられたのが、テンパリングを行わずに、マーブル台でチョコレートのデコレーションを作成する方法。本来テンパリングを取っていないチョコレートではブルームが出たり、固まりが悪くなるはずだが
・冷凍庫で冷やしたマーブル台
・テンパリングを取っていないチョコレート
を使用するときれいに飾りのチョコレートが作れるという内容です。

常識を覆す大胆な手法に参加者たちは驚きを隠せないようで、早速「テンパリングなしでチョコレートが白く(ブルーム)ならないのか?」という質問が出ました。その点に関しては、温度管理をきちんと行い、すぐに冷蔵庫に入れればほとんど問題ないとのこと。一番の懸念が払拭されたことで、さらに驚きが広がったようでした。

他にもクレームブリュレの焼き加減や、レザー用の抜き型でビスキュイを抜く等さまざまなコツやアイデアを惜しげもなく披露されました。

小さなこだわりの積み重ねで、ダイナミックな味わいを

続いては、繊細なルックスのチョコレートスナック「CACAOTIQUE/カカオチック」。口にして最初に感じるのは、パッションフルーツを中心とした鮮烈なトロピカルフレーバー。その後、優しいバナナのギモーブがクッションとなり、穏やかなカカオの風味へと移り変わっていきます。

カカオチックの土台のサブレショコラは、甘くエキゾチックな香りのトンカ豆やバニラの鞘をミルにかけて加え、さらに食感を出すためあえて中力粉を使用されているそう。サブレのみを試食させていただくと、香ばしさと独特の苦味が絶妙で、ザクザクした食感もユニーク。

「ボワロン ピューレバナナ」を使用したギモーブの上に飾った、カカオポッドの断面をイメージしたチョコレートは、イドロプロセス社の「シェフカット」でカット。データをインポートすることでオリジナルデザインでのカットも可能なうえ、手作業では難しい細かなカットもできるため、松田氏自身コンテストの際に使用されたそう。作業の効率化はもちろん、オリジナリティあふれる商品展開ができると信頼を寄せておられました。

+1ステップで、自然由来の着色料を鮮やかに使いこなす

今回色付けに使用されたのは、カシスやベニバナ、スピルリナなどの自然素材のみを使用した 「MONALISA」の色粉。粒子が細かく発色が良いため、さまざまな素材に活用できます。とはいえ、チョコレートのような暗い色に吹き付けた場合は色がのりにくいという欠点がありました。

そこで松田氏は、ピストレする部分を冷却してから色を乗せることで、「MONALISA」を鮮やかに発色させるテクニックを披露されました。

アシスタントと協力し、冷却スプレーをかけた部分にすぐさまピストレ。息の合った連携プレーで、チョコレートが鮮やかなグリーンと赤に染められていく様子に、参加者の皆さまの目も釘付けでした。

イベントシーズンのショーケースを飾る、愛らしい飾り菓子

エッグ型を使用して作るのは、可愛らしい「ECUREUILS/エクレイユ」(仏語:リス)。

キーとなるプラリネは、甘さ控えめのオリジナル。香ばしさと、甘さを抑えたことで感じられるほのかな苦味の心地良さが印象的です。これを卵形のボディの内側に塗って忍ばせ、楽しい食感を演出。種類の異なるチョコレートをピストレして模様をつけるなど、愛らしい中に細かな技と気配りが詰まっています。

作業の効率化は、必ず理論を理解した上で

今回の講習会では、テンパリングマシンやエンローバーなどさまざまな機械が大活躍。特にカカオバター調温機の「マジックテンパー」は、松田氏も「便利すぎて一度使うと戻れない、作業時間も人件費も削減できる。」と絶賛。また、経験の浅いスタッフが作業をしても一定のクオリティを保つことができるのは、ショップやブランドを維持する上でかなり心強いとした上で「ただし、チョコレートの理論を理解せずに使用すると技術も知識も身に付かず、トラブルが起きた時に対処できない。」とデメリットにも言及。便利なツールや素材は積極的に活用すべきだが、使う側が理論をきちんと踏まえていることが大切と言い添えられていました。

ちなみに松田氏は、チョコレートの乳化を確認するため、大学の研究室に依頼して検証したそう。理論を鵜呑みにせずきちんと自分の目で確かめる。チョコレートにかける情熱は生半可なものではありません。

ワールドチョコレートマスターズ・ベルギー代表としての経験

最後に、ワールドチョコレートマスターズにベルギー代表として出場した際のエピソードを、写真と共に披露していただきました。日本人である松田氏がベルギー代表として選出されるまでにはさまざまな困難があったかと思いますが、それを感じさせない自由でクオリティの高い作品に一同圧倒されました。

中でも圧巻だったのは、動くチョコレートのクジラ。その造形の精度もさることながら、驚きなのはクジラを動かす動力部分も自作されたということ。表現したいもののために全てを注ぎ込む姿勢に感銘を受けました。

小規模だからできた、レベルも密度も高い講習会

今回の講習会は少人数制だったこともあり、松田氏との距離も近く、参加者の方がとても積極的に質問されていたのが印象的でした。細かな温度設定に副材料の扱い、素材選びと配合、商品の展開やコスト面の話など、チョコレートにまつわるありとあらゆる話題が上がり、ここでは到底書ききれないほど。

紹介されたテクニックや使用された素材や機械についても、メリットだけでなくデメリットにも触れられ、さらにその対処法までもフォロー。松田氏のチョコレートに対する深い知識と真摯な姿勢から、多くの学びを得ることができました。

講習の際には、実演と並行して、使用されている素材の試食も行われました。このような講習に参加すれば、日仏商事取り扱いのたくさんの材料が一度に試せるという点も魅力です。一つ一つの味、香り、食感を確かめながらイメージを膨らませ、最後に完成品を試食して答え合わせ。味の構成から松田氏の意図を汲みとる作業は、さながら謎解きゲームのようでした。

参加された方の背景はさまざまで、ショコラティエとして独立されている方やホテルのパティスリー担当者さま、現在はパティスリー勤務だが将来的にショコラトリーの開業を目指している方などなど。

休憩時間には参加者同士のコミュニケーションも見られ、情報交換や今後の展望などを語り合っておられました。

参加者の皆さまにとって、今回のセミナーは大変有意義なものになったことでしょう。

講習後、松田氏からのギフトとしてオリジナルチョコレートの詰め合わせが贈られました。素材や製法については各々推理して欲しいと、5粒のチョコレートには素材等の表示はなし!当日参加された皆さまは、何粒正解されたでしょうか?

チョコレートの名前とその断面を載せておきますので、今回残念ながらご参加いただけなかった方もぜひ推理を巡らせてください。

左上から
「メルティーショコラ」
「生キャラメルパッション」
「プラリネアグリューム」
「ブリリアンルージュ」
「エクストラカフェ」

気になる答えはこちらから。

Makuake
https://www.makuake.com/project/motobelgedaihyou/?utm_source=a54&utm_medium=email&fbclid=PAQ0xDSwLtFlRleHRuA2FlbQIxMQABpwqnPjna9fwpK6l42L63zA1VD2dIf5aM8RXluJEXL4_i_-JcAafmk5l9U8y

 

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