2019/05/22

フランスでのヴィーガン事情について調べてみました【パティシエ通信Vol.12】

ヴィーガン

皆さまお久しぶりです。パティシエ通信の岸です。

私事ですが、このたび3年間お世話になったパティスリー フレッソンを退職して新たにパリで働くことになりました。
どこで働くかはまた改めて個人ブログでお知らせさせていただきますね。

今後はパティスリー事情だけでなく、パリでのトレンド情報をはじめとしたフランスの様々な情報を配信しようと思いますので、引き続きよろしくお願いします。

さて、今回は美容や健康に良いと話題になっているVEGAN(ヴィーガン)についてレポートします。

 

ベジタリアンよりもさらにストイック、ヴィーガン(完全菜食主義者)とは?


野菜

ヴィーガンとは日本語で言い換えると『完全菜食主義者』のことです。
ベジタリアンにも色々ありますが、ヴィーガンはその中でも徹底して動物性の食材を排除します。

お肉やお魚はもちろん、卵や乳製品も口にしません。

また食材だけでなく、靴や服、鞄などの動物由来の製品も避けるヴィーガンでも更にストイックな『エシカル ヴィーガン』と呼ばれる方たちもいます。

以前のパティシエ通信で、ヨーロッパはオーガニック推進国であることをお伝えしましたが、実は動物愛護や地球環境への取り組みも進んでいるんです。
更に日本に比べて様々な宗教が信仰されているので、お肉やお酒を口にしない人など、食に対してストイックな面が多々見受けられます。

ヴィーガンは宗教、スピリチュアルな考え、環境、美容、健康などの理由によって広がってきているそうです。

 

フランスでのヴィーガン人口と国民の意識は?


野菜を切る人

フランスの全人口の中でヴィーガンの割合は、0.4%といわれています。

割合を見ると少なく感じるかもしれませんが、年々若者を中心に増加しているそうです。

その影響もあるのか、有名5つ星ホテルにヴィーガン向けのアフタヌーンティーが登場したり、ミシュラン3つ星レストランでもヴィーガン向けの料理を提供したりと、一時的なブームというより、食文化自体が変化しつつあるようです。

フランスでは、深く伝統が根付いた食文化が存在しつつも、しっかりと時代の流れを読み、枠にとらわれない創造性を尊重する国民性はさすがだなと感じます。

こうした国民性があるから、料理もお菓子も常に新しいものが生まれるんでしょうね。

そもそもここ数年のヨーロッパにおけるヴィーガン拡大の背景には、不健康な肉中心の食生活による肥満や病気が深刻になって国民の意識が「このままではマズイ!」と危機感を抱くようになったからだとか。

確かに、日本よりヴィーガン人口が多い割りに肥満体系の方が多い印象を受けます。

このレポートを書くにあたって、フランス人の友人や同僚にヴィーガンについて聞いてみましたが、見事に全員興味ないとの回答でした…。
それどころか、否定的な意見が多かったのも事実。

どないやねん!!

否定的な意見が多い中でも、パリではヴィーガン専門店が増加傾向にあることや、ヴィーガン向けの商品開発
が進んでいるなどの情報が得られました。
例えば、
チェーン系のオーガニック専門店が2017年に100%ヴィーガン専門店を4店舗オープン。
ヴィーガン向けのアルコールの開発(ワインやビールの生産過程に使われる動物性の成分を排除する試み)が進められていたりと、これからヴィーガンが国内でもどんどん広がっていく傾向にあります。

 

スーパーで販売されているヴィーガン向けの食材について調べてみました


スーパーで販売されているヴィーガン向けの食材

フランスのスーパーでは、オーガニック関連の食材コーナーが設けられているのは以前のパティシエ通信でもご紹介しましたが、ヴィーガン向け食材も販売されているの?と疑問に思いましたので、実際にスーパーに行って調べてみました。
早速売り場に行くと、ありました!ありました!ヴィーガン向け食材!
オーガニックと異なり、専用のコーナーが設けられているという感じではありませんでしたが、お肉やお魚を食べない人向けに大豆等を使ってお肉に見立てた食品がショーケースに並んでいました。

スーパーで販売されているヴィーガン向けの食材
スーパーで販売されているヴィーガン向けの食材

実際に購入して食べてみたところ、パッケージの大豆という文字を見なければ恐らく気付かないほど違和感ゼロでした。なんとも恐るべしのクオリティ。

その話を友人にすると、「これを食べてみて」と渡されたのが大豆のジャーキー。これも非常に美味しかったんです。
お肉よりも柔らかくて、舌触りや風味は完全にお肉でした。
低カロリーな上に栄養もあるんですから文句なしですね。

大豆のジャーキー
カフェやパティスリーなど飲食店でのヴィーガン事情は?


スーパーでの食材だけでなく、フランスではヴィーガン向けの食事を提供するお店があるとの情報を聞きつけ、早速お店にも足を運びました。

まずは、私の愛して止まない某有名カフェチェーンに行ったのですが、ありましたよ!ヴィーガンサンドイッチ。
中身は、たくさんの野菜とひよこ豆とけしの実とダイエットにも健康にも良さそうな印象です。

ヴィーガンサンドイッチ
さらにパリにはヴィーガン向けのカフェやパティスリーもあると聞きましたので、そちらにも行ってみました。

1軒目は、カフェ。
私が注文したのは、アボカドのオープンサンドと野菜スープ、オーガニックアサイージュース。
これらには卵、乳製品、肉類は一切使われていないとのこと。

アボカドのオープンサンドと野菜スープ、オーガニックアサイージュース

そして、私が驚いたのはヴィーガンバーガープレートです。
「ホンマに卵も乳製品も肉も使ってへんの…?」という一皿。

ヴィーガンバーガープレート

マヨネーズは完全植物性。お肉と見せかけて豆とお米のダミーバーガーでした。

マヨネーズは完全植物性。お肉と見せかけて豆とお米のダミーバーガー

食べた感想はというと…。好みもあると思いますが、ハンバーガーは美味しいとは思いませんでした。
こんなに見た目も完成度も高いハンバーガーだったら本物のハンバーガーが食べたくなるというのが正直な感想。で、食べて「豆と米かぁーーーーいっ!」ってなってしまいました。
私は、ヴィーガン失格であります。

次にヴィーガンパティスリーに移動し、キャロットケーキを注文してみました。

キャロットケーキ

日頃乳製品をふんだんに使っている私としては、いささか物足りない気がしました…。
このキャロットケーキの甘味はというと、ニンジン、ダッツ(ナツメヤシ)、オレンジ、ナッツ類、ココナッツオイル、レモン、植物からとれるシロップ、香辛料を利用した自然な甘みです。
なぜなら、砂糖の精製時に牛骨粉を使うことがあり、一部のヴィーガンは白砂糖の使用を避けるそうです。
ちなみに、ヴィーガンはハチミツもNGなんです。

その他にもたくさんのヴィーガンスイーツがショーケースに並んでました。

 

ヴィーガンスイーツ
ヴィーガンスイーツ

普通のケーキに比べて美味しいかは分かりませんが、これ程の種類を限られた条件で作るのはアイディアと工夫が必要だろうなと感心しました。

肝心のケーキのお値段ですが、手間暇と付加価値なのか決して安くはなく、パティスリーのケーキと同等か高い位でした。

このように、飲食店でもヴィーガン対応の食事は可能ですが、家庭でヴィーガン料理を作る場合はどうするの?
と疑問が湧き、近くにある本屋さんにレシピ集などが無いか探しに行ってみました。

ヴィーガンとは関係ないのですが、私はフランスの本屋のお菓子、料理コーナーが大好きなんです。
超有名人の本はもちろん、簡単サラダやおもてなしデザートなどの素人向けの本もとってもオシャレで美味しそうで、見てるだけてワクワクしてくるんです。
いつも通り、ワクワクしながら私の好きな売り場に行ってみると。ありました!ありました!ヴィーガン向けの本が。

ヴィーガン向けの本

本の種類も豊富で、ヴィーガンが認知されていることがうかがえます。
そこで本を見ていて思ったのが、日本でヴィーガンの普及は容易ではないのではと…。
日本の食文化は魚と大いに関係が深いですよね。例えば、お寿司やダシ。
そして海に囲まれてる国だからこそ、新鮮なお魚がよく獲れる。

そして、お肉の食文化で言えば、焼き鳥やすき焼き。
これも明治以降の不朽の一品たちです。
まあ、それを言い出すとフランスのフォアグラもそうなるんでしょうけど。

そもそも日本は肥満大国ではないですし、むしろ世界一の長寿国であり「和食」はユネスコ無形文化遺産にもなりました。
そんな日本でヴィーガンが広がるのは個人的に少し寂しい気がしますが、健康上、美容上のメリットもあります
ので、週末だけとか夜だけとか普段の食生活の中に少しだけ取り入れてみるのも良いかもしれませんね。

ちなみに私は2週間程、夜だけヴィーガン生活してみたところ、心なしかお肌の調子が良かった気がします。
ただ野菜と穀物だけの食生活だと不足しがちな栄養素がありますので正しい知識を持って取り組みましょうね。

 

最後に


いよいよ来年は日本でオリンピック開催されますね。
世界中からたくさんの人が日本にやって来ます。
宗教や文化の違う様々な人種が1つの島国に集まるということは、当然色んな食文化を持った人々が集まると
いうことです。
迎え入れる側の日本人として相手の食文化を理解し、尊重することは必須になります。ヴィーガン向け料理も
その1つになるかも知れませんね。
また、日本の食文化を世界に示す素晴らしい機会でもあります。

そのころ私は日本にいませんが、最高の「お・も・て・な・し」をしている母国を誇らしくテレビで拝見していると思います。

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