2019.06.21

知名度のなかったオーブンを選んだ最大の理由とは。老舗ベーカリーに聞いてみました

知名度の低い商品を購入しようと思った時、何をきっかけに買うか迷いますよね。
ネット検索や口コミなど、すぐに情報収集ができる現在と違って、昔は情報収集も難しかったはず。
そんな中、33年前にまだまだ市場で認知されていなかったボンガード社のオーブンを
神戸の老舗ベーカリー「株式会社イスズベーカリー」さんに導入いただきました。
導入に至ったきっかけは何だったんでしょう。
同社代表取締役社長である井筒社長に詳しくお話をお聞きしました。

株式会社イスズベーカリー 代表取締役社長
井筒 英治 氏

▼会社紹介
株式会社イスズベーカリーは、1946年(昭和21年)に創業以来、「暮らしの中で、永く愛されるパンを食卓にお届けしたい」との信念のもと、良い材料を使用し、時間と手間を惜しまない丁寧な手造り製造にこだわったパンづくりをされています。
6月には創業74年目を迎えられる老舗ベーカリー。神戸の製パン業を支えてきた一社です。
イスズベーカリーと言えば「神戸の味 イスズの山食」と書かれた看板を思い出す神戸人も多い。
1984年(昭和59年)3月には、第20回全国菓子博で「ハード山食パン」が内閣総理大臣賞を受賞。
そして、1998年(平成10年)10月には、初代神戸マイスターの製パン部門に現社長でもある井筒 英治氏が認定されました。
創業100年続く企業をめざし、今もなお変革をしながら経営をされ、神戸のパン食を支え続けています。
※神戸マイスターとは、全国的にも通用するハイレベルの技術・技能者を神戸市が認定した制度です。

 

クオリティの高いパンを作りたい!強い思いがボンガード オーブン導入を後押し


―33年前、まだまだ知名度の無かったボンガードのオーブンを知ったきっかけは
確か昭和1960年代後半(昭和40年代後半)だったと思いますが、株式会社ドンクの神戸工場(フランスパン専門工場)が稼働し始めた際に、私が尊敬する藤井社長(当時)に工場見学のお誘いをいただきました。
その工場に入っていたのが、ボンガードのオーブンでした。
熟練の職人たちが、クオリティの高いフランスパンを製造しているのを見て「これだ!」と思いました。
尊敬している藤井社長が導入されていたのもありますが、より導入したい気持ちを後押ししたのは、「あんなクオリティの高いパンを作ってみたい」という思いでした。
他にもオーブンのメーカーはありましたが、ボンガードのオーブンを導入する事しか考えていませんでした。
そして、初めてボンガードを見てから数十年後の1986年(昭和61年)に私が出店を提案してオープンした北野坂店に念願のボンガードのオーブンを導入しました。
ボンガードのオーブンを導入するのは私の『夢』でしたし、ついにここまできたという『ステータス』でもありました。

北野坂店に導入されているボンガードオーブン

当時導入されたオーブンは、現在では廃盤になったオーブン正面と背面側にガラス扉が付いている両扉式スルーオーブンで、厨房側から生地を入れ、焼成後はお店側からパンを出し、お客さまに焼きたてのパンが出来上がったことをアピールする演出をしていました。
写真のオーブンは、同店で2000年頃に入れ替えをしたオーブンです。19年経つ今も、まだまだ現役でパンを焼き続けています。

―長年ボンガードのオーブンを使われて、感じることを教えてください
一番に焼成のパワーがあること。
その理由として多少生地がへたっていても、しっかりと窯の中で生地が伸びてくれるからです。
また、多加水の生地に適していると思います。
多加水の生地は、焼成する際には高い温度でたっぷりのスチームが必要ですが、スチームの出かたが良く高温で一気に生地内の水蒸気が放出されるので生地がしっかり伸びてくれます。

 

ボンガード オーブン導入までのストーリはもう1つあった


井筒社長とお話をしていると、オーブンを導入されたきっかけにはもう1つ理由があることが分かりました。
それは、ブランド力を維持する為に商品価値の高いパンを製造することでした。
その為に社内で改革を続けてきた井筒社長の努力がありました。その改革についてもお聞きしました。

―職人をはじめてすぐにオリジナルの商品を開発されたそうですが、その理由は
理由は、
「このまま今のラインナップでパンを作り続けてはダメだ、何か特徴を出さないといずれ衰退してしまう」
と感じ始めたからです。
その時に、差別化をする為に作ろうと思ったのが山型食パンでした。
なぜ「山型」なのかと言うと、当時の食パンは四角いパン(プルマン型)が多かったからです。
また菓子パンの方が、1枚の鉄板に何十個もパンをのせることができるので製造効率もよいことから、食パンに力を入れている競合ベーカリーが少ないのも理由でした。
山型食パン発売後は、食パンの種類も増やしていきました。
その頃から、私の改革は少しずつ始まっており、山型食パン開発後は商品価値を高める動きをしました。

現在も様々な食パンが売り場に並ぶ

―商品価値を高める理由はなんですか
イスズブランドを高める為です。
私は、パンの値段は下げずむしろ上げていく方向で考えています。
その為には、いい材料、いい技術、いい機械が必要です。
例えば材料でいうと、今までマーガリンを使っていたものを良質なバターを使い、付加価値を付け、商品価値を高くしました。
良い商品を作るには、材料だけでなく職人の技術を高める必要がある為、技術力向上セミナーも定期的に行っています。
そして、製造に不可欠なのはいい機械が必要であること。
ですので、33年前北野坂店をオープンした際にボンガードのオーブンを導入しました。

 

経営者になった井筒社長が本格的に経営を開始。社内改革がいよいよ本格化


―経営者となってまずしたことは
今でも深く記憶に残っている、阪神・淡路大震災が1995年(平成7年)に発生したのですが、その直後に親父の体調が悪くなり、経営の代理を担ったのが始まりです。
ただでさえ災害直後で大変な中、経営も任され会社を立て直すどころか、復興作業もしながらで本当に大変でした。
その後1997年(平成9年)に代表取締役社長に就任し、いよいよ経営者としての経営が本格的に始まりました。

まだまだ未熟な中で私なりに考えたのが、3つの取り組みでした。
▼評価制度の導入
それまでまともな評価制度がなく感覚で査定をしていたのは事実で、どうやったら社員の給料を上げて、しっかりボーナスを支給することができるか。
やる気のある社員が頑張れる職場にしたいという想いから評価制度を導入しました。
▼ライバル設定
私達のライバルは、同じベーカリーではなく当時急増し始めていたコンビニでした。
これからの時代は、今までと同じようにパンを作っていてもいずれ大手コンビニで販売するパンに負けてしまうと思ったからです。
ならばコンビニで販売できないパンを作ろうと思い、日持ちのしない、袋づめ販売が困難なハード系のパンを充実させることに決め、フランスパンを含めたハード系のパンの種類を増やし始めました。
▼ターゲット設定
全てのお客様を取り込むのではなく、ターゲットを絞り込み、そのお客様に向けた商品開発を行う。
その為には何ができるかを考えました。
100円前後のパンばかりでは、大手コンビニとの価格競争で負ける。
高級志向だと、神戸では購入者が限られる。
では中間層の少し高級よりのアッパーミドルを狙おうとターゲット設定しました。
ターゲットを絞ることで、商品開発も明確になり、価格設定もしやすくなりました。

ターゲット設定についてホワイトボードを使い語る井筒社長

 

―直営店メインで店舗展開をされていますが、百貨店やスーパーに出店する予定は
色々なお誘いがありましたが、全てお断りしています。今後も出店する予定はありません。
それは、イスズブランドを守る為です。
フランスに修行に行った際に感じたのが、多くの店舗が暖簾を大事にして、店舗数を増やさない展開をされていました。
多店舗展開すれば、もちろん知名度は高くなると思いますが自社の意向だけで製造や店舗運営をするのは困難になります。
また狙うターゲット設定や価格もブレてしまう可能性が高いです。
私達は、100年企業を目指しています。
その為には自社のブランドを守り、高めていく必要がありましたので直営中心の経営を行っています。

―働き方改革や雇用問題など抱える課題は多いと思いますが、クリアする策は
働き方改革への対応は必至ですね。
私は、これからは冷蔵製法が中心になるのではと思っています。
働き方改革に対応するなら、冷蔵設備が充実していないと厳しいと思い機材を増やしています。
商品の品質は落とさず、むしろ高めることでスムーズな製造体制を整えることが重要です。
そして雇用問題。
1991年(平成3年)頃に私から週休2日制導入を会社に提案しました。
一般企業ですら週休2日制を導入しているところが少ない中、ベーカリーで導入するのはある意味革命的でしたが、実際のところ社内に浸透させるまでには約1年かかりました。
何故この制度を取り入れたかというと、当時の社員の平均年齢が50歳を超えており、若い世代が入社したいと思う会社にしたかったからです。
その後嬉しい事に、若い社員も増えました。
現在は、社員のやる気を高める為、より精度の高い評価制度を導入する予定です。
社員のやる気が出れば、品質の高いパンもできますし、新しい発想から新商品も生まれます。
ひいては、お客様満足にもつながります。

―今後もお店を存続していく為にどのような取り組みを考えられていますか
お客様に喜んでいただける高い品質のパンを販売する事も必要ですが、それだけでは、モノ売りになってしまいます。
パンを売るだけでなく、文化を売ることも必要だと考えています。
例えば、一般のお客様向けにパン教室を行い、パン作りの大変さ、手間のかかる作業、使っている材料など、
我々のパンに対する志に共感を得ていただき、コアなファンづくりをすることです。

 

―最後に今後のビジョンについて教えてください


当社では、4つの経営ビジョンを掲げているのですが、ビジョン達成を目指したいですね。
▼イスズベーカリーの経営ビジョン
①創業100年を目指す
②年商10億
③営業利益10%
④やる気の出る仕事、やり甲斐のある会社
このビジョン達成の為に、これからも様々な改革を行いながら100年企業を目指したいと思います。

本社工場、北野坂店にもお伺いしました


▼本社工場
本社工場にもボンガード オーブンが導入されています。


びっくりしたのが、約30年前に導入されたケンパーのミキサーが現役で使われていたこと。

年季の入ったこの雰囲気がたまりません。大切に使ってくださって感謝感謝です。

▼北野坂店

店内には様々な種類のパンが所狭しと並ぶ

ボンガードで製造されている人気のパンをご紹介。
▼トレロン
何と長さは70㎝。超ロング粗挽きソーセージと粒マスタードをフランスパン生地に包んでいます。

▼しおばた
チャバタ生地にバターを入れ、歯切れの良いパン。

▼イスズの塩パン
たっぷりのバターとフランスのゲランドで採れた高品質の塩を使用した自慢の一品。

実は気になっていた「イスズベーカリー」という社名。
井筒(イヅツ)なので「イヅツベーカリーではないの?」と素朴な疑問が。
社長に社名の由来を聞くと、
社長の父親が神戸の筒井台にあるマルイベーカリーという所で修行をしており、マルイベーカリーで一緒に働いていた先輩の鈴木さんという方に手伝っていただき創業されたそうです。
「手伝っていただく代わりに、お店の名前に鈴木さんの名前も入れたので、井筒の「イ」、鈴木の「スズ」から『イスズベーカリー』なんです。」

取材後記


商品を購入する際のきっかけは様々だと思います。
今は、インターネットやメディアで手軽に商品の情報を収集する事が可能です。
しかし、今回のケースは前情報や口コミを聞いて導入されたのではなく、井筒社長の強い思いと会社をより良くする為に改革をしていく上で必要不可欠だったからこそボンガードのオーブンが導入されたケースでした。

われわれ日仏商事も今年8月1日で50周年を迎えます。
100年企業を目指されるイスズベーカリーさんを見習い、100周年を迎えられるように邁進していきたいと思います。

 

取材協力


株式会社イスズベーカリー
住所:神戸市中央区布引町3丁目2番2号
TEL:078-241-4180(代表)
HP:http://isuzu-bakery.jp/

取材店舗(北野坂店)
住所:兵庫県神戸市中央区中山手通1-8-18 三宮互陽ビル1F
TEL:078-391-3963(代表)
営業時間
10:00~23:00(平日)
10:00~24:00(金・土・祝前日)
10:00~22:00(日・祝)

関連URL
▼ボンガード
https://www.nichifutsu.co.jp/products/machine/brand/bongard/

▼日仏商事の歴史
https://www.nichifutsu.co.jp/company/productshistory/

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