2017/06/23

フルーツ生産の現場を訪問

パリは6月だというのに38℃になったり、またその翌日は10℃以上も気温が下がったり、気温の変化の激しい日々が続いています。今年もなんだかおかしな天候が続きそうです。

さて、先日、取り扱いメーカーを訪問しました。冷凍フルーツピューレのレ ヴェルジェ ボワロン社とマロン関連製品のサバトン社です。パティシエをはじめ、食のプロフェッショナルの皆様方にはおなじみの両社ですね。

今回はそれぞれが契約する農家さんを訪問し、今年の果実の出来栄えを見てきた、というお話です。

まずは ヴェルジェ ボワロン社から。レ ヴェルジェ ボワロン社では自社でフルーツを栽培しているのではなく、契約した農家さんにフルーツを作ってもらい、それを購入してピューレを製造しています。この日訪れたのは3年ほど前に新たに契約をした農家さんです。ボワロンの本社があるヴァランスから車で30分ほど南下したところにその農家さんはありました。こちらの農家さんでは、桃、アプリコット、プルーン、さくらんぼなどを栽培しています。

ちょうど収穫時期を迎えたアプリコット。皮の一部が真っ赤に染まるこちらの品種はピューレには使わないとのこと。食べさせていただきましたが、想像以上に瑞々しく、ものすごく甘いアプリコットでした。ピューレにするには甘すぎるのでそのままフルーツとして食べる用に農協を通じて出荷するそうです。

さて、ピューレの原材料となるフルーツのお話です。レ ヴェルジェ ボワロン社では原材料となるフルーツを作る契約農家さんに多くのことを求めます。これは「よい製品造りはよい原材料=フルーツから」という考えに基づきます。なぜなら答えは単純、フルーツピューレはフルーツを煮込んで液状に加工したものだからです。レ ヴェルジェ ボワロン社ではこのフルーツピューレに着色料、香料、添加物を使いません。ですから、フルーツの味そのものが製品の味に直結します。レ ヴェルジェ ボワロン社の定めるよいフルーツを作ってもらうために、多くの決まりごとをお願いしているのです。

その分野は多岐にわたります。今回訪ねた農家さんは桃を栽培していますが、ご存知のように、同じ桃は桃でもたくさんの品種があります。ここではそのまま食べておいしい(=甘い)ものをよしとするわけではありません。上で紹介しているアプリコットも同様です。どのフルーツもそうですが、レ ヴェルジェ ボワロン社ではピューレにした際に一番おいしく感じられる品種を使います。ただ甘いだけではなく、酸味とのバランスが重要ですし、皮ごと製品にされるフルーツには皮の色合いやシミ具合に関する規定まであるのです。さらに、もちろんのことですが、そういったフルーツを生産するために使用してよい農薬の種類も限られてきますし、その使用量の上限も決められています。

3年前に苗木を植えた桃の木です。すでに2メートル強になろうとしていますが、桃の木の成長は早いそうで、あと2年もすれば元気な大人の桃の木になるそうですが、高さはこの1.5倍ほどにもなるそうです。植えてから5年目くらいからきちんとした一定の収量が期待できるとのこと。普通にいけば15年くらいはきちんとフルーツをつけてくれるそうです。

訪れたのは6月中ごろ。収穫は8月頭とのことで、桃は青く、まだまだ小さなものでした。子供の手のこぶしくらいでしょうか。これからどんどん大きくなって、皮の色が白く、赤くななってくるそうです。

8月の収穫期にボワロン社が定めた基準に則った桃になるように、害虫や雹害などに気を配りながら丁寧に育てられます。驚いたことにこれら桃の木1本1本に対して、スプリンクラーが設置されていました。地中深くまでセンサーが入っており、土壌の乾き具合によって散水する水の量がコントロールされているといいます。意外なところでハイテクです。

できる限り少ない農薬量で丁寧に育てられたフルーツはレ ヴェルジェ ボワロン社の工場に運び込まれ、ボワロン社の持つノウハウを駆使してピューレに加工されます。また毎週金曜日には必ずボワロン社長以下エキスパートの皆さんが集合し、実際に作った製品を試食して、味を確認し、合格したロットだけが市場に回され、皆さんの手元に届く仕組みになっています。

さて、次はお隣のアルデッシュ県に本社および工場を構えるサバトン社です。アルデッシュ県はフランス随一の栗の生産地。この県だけでフランス全土で取れる栗の半分量を生産しているといいます。

アルデッシュの栗だけを使用したAOPラベルのついた製品を作るなど、郷土の名産品の栗を大事にするサバトン社。ボワロン社同様、ここでも自社で栗を生産しているわけではなく、アルデッシュ県を中心に信頼のおける栗農家さんから栗を購入しています。

この日訪れたのは本社のあるオブナの街から車で10分ほど北上した山あいの中の一軒。栗は毎年10月から11月にかけて収穫されますが、訪問した6月中ごろがちょうど花を付け出す時期でした。

こちらが栗の花。アルデッシュの主要品種はまだ花をつけていませんでしたが、一部の早稲種の栗の花が満開でした。栗の花は猫じゃらしのような雄花とその根元付近にある小さな雌花が受粉することで栗の実ができます。

上の写真では見えづらいですが、真ん中の丸っこいものが雌花で、ここに雄花の花粉が受粉すると栗になるわけです。

通常はイガの中には3つの栗が育ちます。栗の成長には暑さが必要で、8月までは暑いほうがいいようです。9月になると雨が必要になるとのこと。雨が降ると栗の実がどんどん大きくなり、最後にはイガを割って外に飛び出します。雨がなければ、イガを割るまでに至らず、中で小さなまま残るそうで、夏の暑さと9月以降の雨という二つのキーワードがよい栗の生産にはとても重要になるそうです。

同じ山にある主要品種はまだまだ花が咲く前の段階でした。

われわれが訪問した6月までは天候的には非常によく、この時期としては途中経過に過ぎませんが、よい年の予感とのことでした。あとは夏が暑くなって、9月以降に雨がたくさん降るという栗にとっての最高の天気になることを祈るしかありません。

レ ヴェルジェ ボワロン社、サバトン社ともに自然の恵みを原材料にして製品造りを行っています。今回は製品の元になる原材料のフルーツ生産現場を少し紹介させていただきました

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