2022/05/20

“進化こそ品質”という冷凍フルーツピューレ【Chef’s choice vol.08】

Chef’s choiceとは…

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何を選び、どう使うか。
“これはいいね”とシェフが選ぶ素材を料理にどう展開するのか……。
素材を軸にしたシェフの読みをひも解きます。

不定期になりますが、本マガジンでひとつの素材をテーマに「Chef’s choice」を配信していきます。
今回は「レ ヴェルジェ ボワロン社」の冷凍ピューレ(フィグ/ミラベル/マング エピセ)についてご紹介します。

この素材についてご意見をいただいたシェフは、
レストラン ラフィナージュ(東京・銀座)オーナーシェフ 高良 康之さんです。

 

シェフに寄り添う「レ ヴェルジェ ボワロン」は、商品アイテムを増やし、使い勝手もよくしてくれます。
秋のメニューに高良シェフはどんなアイテムを選ぶのだろう。


守るものと変えるもの、進化を続けることが「レ ヴェルジェ ボワロン」の品質

‐伝統的なブランドとしてその歴史を長い間守り続けているのが「ボワロン」の信頼だと思いますが、いかがでしょうか。
私が料理の世界に入って初めて使った冷凍フルーツピューレが「ボワロン」だったお話は以前にしましたが、それ以来ずっと「ボワロン」を使っています。ブランドって信頼が凄い大事だと思うのですが、長く続いているから信頼できるというのではありません。長い歴史を守り続けるだけでなく、時代の流れを先読みして変化できるからこそユーザーの信頼が手に入るのです。ブランドには、変革というよりも進化が不可欠なのです。

「ボワロン」冷凍フルーツピューレの1㎏パッケージが最近変わりましたね。左から開けるとピューレを注ぐような切り口になって、右からだと全開になります。とても開けやすく使いやすいので助かりますが、こうした小さなことに気配りできることは大きく品質に反映しているはずです。

糖度の計測や細かな分析を最新の機械で行い、工場に人を入れないオートマチックな生産工程をつくることで、衛生管理も進化させていると聞きます。

そうした努力の中から、これが「ボワロン」の風味だというブレない冷凍フルーツピューレをつくり上げているのだと感じています。「ボワロン」と何十年もお付き合いしていますが、今度はどう進化するのか楽しみです。

 

‐スパイスとフルーツをブレンドしたアイテムをお選びになりましたが、その理由は。

生姜やライム、コブミカン、今なら柚子ですね。随分前からフランスもスペインも全世界がアジアのスパイスや調味料に注目しはじめました。

「ボワロン」の凄いところは、こうした世界の料理の流れに対してちゃんと敏感に反応して新たなフレーバーの冷凍フルーツピューレをつくり出しているところです。アジアのテイストを上手く取り入れ、その時代に合った的確なものを発売しています。ですから、そうした新しいコンセプトの商品を試してみたかったのです。

今回選んだ ‟マング エピセ” のコンセプトは‟エキゾチック”で、生姜の風味がキーになっています。マンゴー、ライム、生姜、コリアンダーのバランスがとてもよく、どれかの風味が突出しているのではなく、それぞれがちゃんと出てきます。

こうしてフレーバーの点でも常に進化し続けていることが、私たちシェフへのメーカーメッセージだと思っています。だからこそ信頼できるのです。

 

裏漉したフォアグラのなめらかな口溶けの中で、”フィグ”の種の食感まで心地よく楽しめる秋の料理にしたかった。

‐フォアグラと”フィグ”の相性のよさを、さらに食感でつないでいくのですね。混ざり合うおいしさに秋を感じました。

今回は、秋のフルーツとしてフィグを使ってフォアグラの料理をつくりました。フォアグラを掃除してマリネし、ポルト酒とコニャックの風味をきかせて一晩マリネした後に湯煎で熱を入れ、それを3日間冷蔵庫で寝かせます。これをそのまま組み上げるのもいいのですが、今回はフィグと合わせる時にフィグのピューレが持っている種のつぶつぶ感、ジャリジャリ感が凄く心地よかったので、そこをいかして秋の料理に仕上げようと組み立てました。

そのためにフォアグラを全部裏漉ししました。フォアグラに挟むフィグのジュレは、ポルト酒と赤ワインを煮詰めてそこにフィグのピューレを入れ3分の2程度まで詰め、ほんの少し砂糖を入れてあげる。これはフォアグラに負けない味をつくるためです。そこに黒胡椒を加え総量に対して1%のゼラチンで仕上げます。フィグをコンポートするイメージでフィグのピューレをジュレにします。これを裏漉ししたフォアグラに挟み込みました。下にははちみつを中心に、シナモンやアニス、八角が入ったパンを敷き、上は赤ワインビネガーと赤ワイン、ルビーポルトを詰めてソースをつくりグラサージュしました。

この料理の中に酸味がありませんから、フィグの風味を引き立てるために赤ワインビネガーの酸味を取り入れました。フォアグラを裏漉ししなければ フィグのジュレは、あくまでもソース的な役割として脇役的な存在感しか与えられなかったはずです。しかし、この料理ではあくまでも”フィグ“を前面に出したかったので、フォアグラはなめらかにすっと溶け、咀嚼すると心地よく口に当たるのは”フィグ“の種になるようにしました。

なめらかなフォアグラにフィグの自然な甘さと種の存在を感じさせることで秋の表現が上手くできたと思います。フィグの種の食感が心地よく残っているところが「ボワロン」の冷凍フルーツピューレのよさですよね。甘い香りや、どことなく青っぽい香りというか、フィグの個性を全部ちゃんと持っていて、とても使いやすいと思いました。

 

フランス人がこよなく愛する秋のフルーツを、レストランでしか食べられないデセールに。


‐控えめで出しゃばらない“ミラベル”の個性を、どうやってメニューに引き出すのでしょうか。

ミラベルは、生のものは日本ではあまり見かけませんが、フランスではとてもポピュラーなフルーツでミラベルが出回りはじめると人々は秋を感じます。

酸っぱさのないさわやかな香りと優しく上品な甘さがミラベルの特徴なのですが、風味が控えめで出しゃばらないだけに、風味の強いものを合わせるとせっかくの風味がなくなってしまいます。メニューにするのは結構難しいと思いましたが、フランス人が大好きなフルーツを上手に使いこなしてこそフレンチレストランです。試行錯誤してスフレにすることにしました。

まず、ミラベルのピューレを加熱して詰めて風味を凝縮させます。これを冷ましてカスタードクリームに加え、ウォッカとグランマニエを加えて混ぜました。これにメレンゲの気泡をつぶさないように合わせ、スフレ型に入れて焼き、はちみつのグラスを添えて仕上げました。いかにミラベルの風味をいかすかを考え、まず、加熱して詰めることで濃厚感を持たせ、焼くことで全体の風味を上げました。

さらに酒を加えることで焼いた時の香りを立たせ、焼けた生地でまわりを包み風味を中に閉じ込めるように、そしてスプーンを刺して食べる時にはすべてが解放されるようにミラベルの風味が溢れ出す。そんな組み立てを考えました。せっかくレストランで提供するのですから、テイクアウトできないもの、レストランでしか食べられないものにしてあげる。そういう使い方をすればミラベルはとてもいきるのではないでしょうか。

 

“マング エピセ”でデセールに新しい“エキゾチック”を表現したかった。


‐フルーツやスパイスをブレンドした「ボワロン」オリジナルの冷凍フルーツピューレをどう使うのでしょう。

マング エピセの風味の複雑さをトロピカルフルーツと一緒にカクテルにしました。グラスの一番下は、マング エピセに生クリーム、生姜汁を加えたクリームです。その上には「ボワロン」の“ココナッツピューレ”でつくったブランマンジェを敷きました。ブランマンジェの中に入っているのは細かく刻んだマンゴーとキウイとパッションフルーツです。全体がとろりとしたスプーンですくって飲み込めてしまうような同じ食感にならないように、エキゾチックなフルーツの仲間を加えました。

その上にはマング エピセに生姜汁とレモン汁を加えたエスプーマを絞り、最後に「ボワロン」の“ココナッツピューレ”でつくったソルベをフットボール型に抜いてのせ、チョコレートを飾りました。このように冷凍ピューレのコンセプトを深掘りすればするほど、レストランのデセールは進化していきます。「ボワロン」の冷凍ピューレは、世界中のレストランデセールを引っ張っているようにも見えますね。

 

 

▼出典元
“素材の品質と作り手の心を料理の現場へ伝える”食材情報誌「素材のちから」
公式サイト:http://www.sozainochikara.jp/
紙面情報などは、ぜひ上記URLからご覧ください。
※この記事は素材のちからより許諾を得て紙面の一部の内容を転載しております。
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