2025/12/10

昆布屋孫兵衛 昆布智成氏 アシエットデセール講習会レポート【前編】

昆布屋孫兵衛 昆布智成氏

ガストロノミーリキュールで、記憶に残る美味の「瞬間」を。

10月21日・22日の2日間、日仏商事のパティスリーラボにて、日仏商事では初となるアシエットデセール講習会が開かれました。講師は国内外の名店で腕を磨いてこられた昆布氏。レミーコアントロー社のガストロノミー向け製品を使用したデセールを披露していただきました。

昆布屋孫兵衛 昆布智成氏

▼Profile
1981年、福井県で240年の歴史を持つ和菓子店「昆布屋孫兵衛」の長男として生まれる。
製菓学校卒業後、東京に拠点を置き「オーボンヴュータン」にてフランス菓子の基礎を習得。その後「ピエール・エルメ サロン・ド・テ」で修行後、渡仏し、南仏のパティスリー「リエデレ」でM.O.F(国家最優秀職人章)に師事してガトー・グラッセや地方菓子を学んだのち、パリの2つ星レストラン「ラトリエ・ド・ジョエル・ロブション」でデセールを担当。
2015年、表参道のミニャルディーズの店「アングラン」に入社。
2019年にシェフパティシエ就任。
2023年に実家の和菓子店「昆布屋孫兵衛」を17代目として引き継ぐ。
昆布屋孫兵衛 Instagram
https://www.instagram.com/kombuyamagobei/

デセールの香りの演出に欠かせないガストロノミー向け製品

今回使用されたレミーコアントロー社の製品は5種類。製菓製パン向けに特化した日仏商事の特注品 「コアントロー54°」、「サンレミー ブランデーXO 60°」、「ザ・ボタニスト ジン60°」、「マウントゲイ ラム55°」、そしてアマレナチェリーのコアントロー漬け「アマレナ オ コアントロー 2.5°」です。

いずれも一般的な飲料用のものよりアルコール度数が高く、香りと風味が凝縮されています。少量でもしっかり香りづけができ、加熱しても香りが飛びにくいことや物性の変化も抑えられるため、製菓・製パンに最適です。

レミーコアントロー 商品情報
ガストロノミー向けコアントロー ウェブサイト
コアントロー YouTube

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目にも舌にも鮮やかな、美しくフレッシュなアヴァンデセール。

アヴァンデセール「ヴェール」

一皿目は、鮮やかなライトグリーンが印象的なアヴァンデセール「ヴェール」。

冷たい青リンゴのグラニテが口の中でさっと溶けたあと、滑らかなライチのブランマンジェ、緑茶とエルダーフラワーのジュレの香りがふわりと広がります。スライスしたシャインマスカットの食感と、ザ・ボタニスト ジンの複雑味、ディルとオリーブオイルの余韻も心地よく、グランデセールへの期待が高まります。

こちらのレシピのポイントは、キーとなる食材を「色」で揃えてある点。視覚的にはワントーンのため、パーツごとの温度や食感、味わいの多彩さがかえって鮮明に感じられました。また酸味一つとっても、その中でさまざまなバリエーションが展開されており、その繊細な表現に魅了されました。この食材を色で合わせるという発想には、多くの参加者の方が興味を惹かれたようでした。

香りについても、昆布氏による仕掛けがありました。緑茶とエルダーフラワーのジュレにはゼラチンと比べて溶けにくいアガーを使用し、サイズもやや大きめに。ジュレが口の中に長く止まり、その香りをゆっくり楽しめるよう計算されています。

ブランマンジェは、軽さとクリーミーさを両立させるため、牛乳より生クリームをやや多めに。すっきりした甘さのライチリキュールを加えることで、洗練された美味しさに仕上げられています。

全てのパーツが完成し、いよいよドレッセとなると参加者全員が立ち上がって集まり、昆布氏の手元を真剣な表情で観察したり写真や動画に収めておられました。デモンストレーション用の1皿が仕上がると、試食用の盛り付けのお手伝いを募る声かけがあり、手を挙げられた方がやや緊張した面持ちで盛り付け作業に参加されていました。

本格的なデセールで高まるヴィーガン需要に応える。

「フィグ エ フランボワーズ」

1番最初に口に触れる部分は、きび砂糖とバニラでコクと香りをプラスした豆乳ホイップクリーム。そこに香りと食感の異なる2種のジュレ、牛乳をアーモンドミルクに置き換えたブランマンジェとオレンジが香るいちじくを合わせ、魅力ある一皿に仕上げた「フィグ エ フランボワーズ」。

こちらのレシピできび砂糖を使用する理由としては、植物油では得られないコクを加えること、そして動物由来の骨炭を使用することもある白砂糖を避けることを挙げられました。個人的に豆乳の風味が苦手でしたが、こちらの豆乳ホイップは全く気にならず、砂糖の種類やバニラの使い方でここまで変わるのかと驚きました。

ヴィーガンのデセールで昆布氏がこだわったのは、「香り」。昆布氏自身が美味しく感じるヴィーガンメニューが、ハーブやスパイスなどの香りをしっかり感じるもののことが多いという経験からきているそうです。香りは単体でなく、さまざまな香りを重ねて味わいに奥行きが感じられるよう仕掛けられています。

ブランマンジェも、1品目のヴェールではライチリキュールで爽やかさを出していましたが、こちらではアーモンドミルクをベースにココナッツクリーム、バニラ、きび砂糖で香りを重ね、味わいに奥行きを与えるレシピとなっています。

また、湯むきしたいちじくにも、ボワロンのオレンジ エ オレンジアメール やコアントロー54° でニュアンスの異なるオレンジの香り付けがされていました。

2種類のジュレは、つるんとしたジュレ ローズと、いちじくの密な食感をイメージさせるむちっとしたジュレフィグ。寒天の比率や製法を変えて食感に差をつけているそうです。昆布氏曰くジュレフィグを作る工程は羊羹を作る工程に似ているとのこと。実家が和菓子屋さんならではの視点ですね。

アヴァンデセールで高まる、グランデセールへの期待感。

アヴァンデセール2品をいただいたところで、レポートの前編は終了。後半はいよいよグランデセール、そしてミニャルディーズが登場します。グランデセールは、定番のケーキをデセールに展開した一皿です。どうぞお楽しみに。

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