パティスリーでフードデリバリーってメリットはある?実際に活用しているお店に聞いてきました
皆さんこんにちは、N&Fマガジン編集部です。
早いもので、もう一年が終わろうとしていますね。
今年は、新型コロナウイルス感染拡大の影響もあり、本当に波乱の一年でした。
緊急事態宣言発令後は、商業施設や飲食店は軒並み休業や短縮営業を強いられ、経営が厳しくなったお店も多かったと思います。
弊社の取引先でもある個人店のベーカリーやパティスリーでも状況は様々で、普段よりも売り上げがUPした店舗もあれば、逆に下がった店舗もあったとの情報も。
そんな中、今まで以上にクローズアップされたのがフードデリバリーサービス。
ステイホームで在宅勤務している方や、近隣の店が休みで初めて利用された方など、コロナ禍の強い味方になったサービスの一つではないでしょうか。
さて今回は、今年2月に配信しました
「ベーカリーでフードデリバリーってメリットはある?実際に活用しているお店に聞いてきました」
の続編記事で、パティスリーでのフードデリバリー採用事例をご紹介します。
フードデリバリー採用店舗に聞く!実際のところ需要はあるの??
取材陣が向かったのは、兵庫県神戸市にお店を構えるパティスリー「L’atelier de Massa(ラトリエ ドゥ マッサ)」さん。
場所は、閑静な住宅が立ち並ぶエリアで、店舗前には小学校・中学校もあり、交通量の多い幹線道路に隣接しています。
こちらの店舗では、コロナ禍以前にフードデリバリーサービスを導入したとのこと。
コロナ前、コロナ後では売り上げにどんな変化があったか。
そして気になるのが、配達中の破損リスク。
パンよりも、破損リスクが高そうなお菓子ですが、どんなラインナップで、どんな対策をされているのか。
気になる事を、根掘り葉掘りお聞きしてみました。
L’atelier de Massaオーナーシェフ
上田 真嗣 氏
▼Profile
大学卒業後、東京・青山の日本で最初のフランス人によるフランス菓子専門店「A.ルコント」にて5年半の勤務後、渡仏。
パリ13区のM.O.F(フランス最優秀職人章)パティスリー「ローラン・デュシェーヌ」、
リヨンの最年少ルレ・デセール加盟パティスリー「ブイエ」で研鑽。
パリ8区、1792年創業の三ツ星レストラン「ルドワイアン」で、デセールを担当。
その後、パリの老舗「ラデュレ」に勤務。部門責任者を務める。
2011年3月に「L’atelier de Massa」をOPEN。
フランス菓子の伝統、製法を大切にしつつ、新たな価値や販売手法を導入している。
―簡単にお店の紹介をお願いします
おかげさまで、来年で開業10年目を迎えます。
私が所属する神戸の8人のパティシエの集まり「ORIGINE KOBE」のメンバーでも、当時はまだ開業している方も少なく、神戸でのフランス菓子の認知はまだまだ発展途上という感じだったと記憶しています。
当店ではフランス菓子の伝統や製法は守りつつ、気軽におやつとして食べていただけるフランス菓子というコンセプトで運営しています。
店舗前には学校があり、お子様連れのお客様もよく来店され、日々のおやつとしご購入される方も多くいらっしゃいますので、あまり飾らないシンプルな商品が多いです。
最近は、オーダーケーキのお問い合わせも多く、一般の方、スポーツ選手、芸能人などなど、多方面からご依頼をいただいております。
神戸がロケ地となった「DIVER-特殊潜入班」の出演者の誕生日ケーキのオーダーも受けました。
当店では店舗での販売だけでなく、ネット販売も開業して間もない時から始め、今年初めにはフードデリバリーサービスの導入も行い、新しい販売方法を積極的に取り入れています。
フードデリバリーサービス導入パティスリーに聞く!導入する際に知っておきたいことをまとめてみました
-導入のきっかけについて教えてください
当店では、元々店舗近隣にお住いの方限定で、まとまった数量をご発注いただければ、直接ケーキをお届けするサービスをしておりました。
ただ、当店も人手不足の波が来ており、そのサービスを続けているとお店の運営に支障がでる状況もあり、何とか違う方法で商品をお届けできないかと悩んでいたところ、たまたま神戸に導入して間もないUberEatsの配達員が店
の前を通り「これだ!」と思い、当時既に神戸で導入していたイスズベーカリーさんやBelle Tableさんから情報を収集しました。
その情報を元に、当店の商品なら需要がありそう、新たな窓口も広がり新規顧客も獲得できそうと思い、2019年の1月頃にサービスを開始しました。
-気になる導入コストや運用コスト
うちが始めようとした時は、まだ神戸にUberEatsが導入されて間もないという事もあり、導入費用はキャンペーン適用で3万円ほどでした。
通常であれば10万くらいの費用がかかります。
その点では、早めに導入していたので、初期費用は抑えられました。
実際に運営を始めた後の、コストは特にはかかっていません。
お店を通常運営しながらできますし、商品もデリバリー専用品などは準備せず、店売りのラインナップで対応しています。
包材等もそのまま流用しています。
ただし早期導入キャンペーン終了後は、毎月のタブレットレンタル費などがかかるそうなので、今から導入される方はよく調べたほうが良いかも知れません。
―高額な手数料がネックというのも世間では聞きますが、実際に利益は取れますか
確かに、手数料35%は高いですよね。
でもうちの店の場合、製造・販売は私と妻の2名で、たまにアルバイト1名と少人数体制で運営をしている為、元々人件費は抑えられています。
また、店舗売りだけでなく委託で卸販売や催事に出店経験から得た価格やコストの考え方も、今に生かされています。
このような経験も踏まえ、利益が出せると思い導入しましたので、この点は導入前によく考える必要はありますね。
従業員が多いお店では、人件費もありますし手間も増えるので、あまりメリットは出せないかも知れません。
販売方法には工夫を!運営面で気を付ける事、そして気になる受注件数は
-運用面で気を付ける事は
導入する前に、考えておく必要があるのは自分のお店の商品がデリバリーに対応する商品なのかという事です。
先ほど、お話した通り元々催事や卸販売の経験もあり、店売りと異なる環境への対応をしてきました。
具体的にいうと、催事では商品を現場まで運ぶ必要があります。そして会場でお客様が商品を購入されて自宅まで帰られる場合、移動が伴います。
このように常に商品は移動時の破損リスクと隣り合わせになります。
これは、卸販売でも同様です。
この点を考慮して、商品が破損しないような包材の設定や、破損しにくい商品構成にして工夫しています。
例えば、
UberEatsで販売している代表的な商品で詳しくご説明します。
●生パウンドケーキ
生地のフワフワ感、生クリームのボリュームが特徴ですが、普通に箱に入れては破損してしまう可能性があります。
催事でも人気で、ネット販売でも販売しておりますので、破損リスクを回避できる包材を採用しています。
●白いガトーショコラ
●ザッハトルテ
この2つの商品は、装飾も少なくシンプルな構成ですので、移動時に破損等が少ない生菓子です。
その他にも、破損しやすそうな生ケーキでも、カップケーキ風に構成することで、破損リスクが避けられます。
-コスト面も気になりますが、もっと気になるのが受注件数。実際どれくらい受注がありますか
導入当初は、平日土日関係なく、1週間で1件、2件程度でした。
正直もっと受注はあるかなと思っていたのですが…
しかし、新型コロナウイルスの影響で商業施設やデパートが営業自粛し始めた5月位から状況は一変しました。
1週間の受注件数が5倍~7倍に増加し、1回の購入単価も普段は、1000円~2000円が平均だったのが、7000円~8000円になり、ホールケーキの受注も多く、ご自宅でホームパーティをされているのではと推測していました。
今までは、月2~3万の売り上げがあれば良いかな位だったのですが、コロナ禍では一番受注が多かった5月の1ヵ月間だけで50万円以上の売り上げになりました。
その時は、ずっと専用タブレットの受注アラームが鳴るし、お店には普段よりも来店客が増えるし、めちゃくちゃ忙しかったですね。
6月以降から徐々に受注は落ち着きましたが、そこで獲得した顧客からリピート発注されるケースも増え、以前よりも、受注件数は増えました。
-実際導入して分かったメリットは
UberEatsのページに掲載した事で、うちのお店を知っていただくきっかけになりました。
意外にも、店舗近くに住んでいても通る道が違うと、お店の存在を知らない方もいらっしゃるので、売り上げだけでなくお店のPRにつながったのは良かったです。
後は、営業時間外にお店の片づけをしている時でも販売ができるので、販売ができない空白の時間でも売り上げになる機会が作れます。廃棄せず商品を有効活用できるのも良かったです。
-逆に実際に導入して分かったデメリットは
UberEatsの場合、どんなお客さんが買ったかの顧客情報はお店側には分からない為、顧客分析ができないのは残念なところ。
リピート発注している件数は分かるんですけど、詳細までは分かりません。
また、何かクレームがあった場合も、基本的にお店側の対応はしなくてもよくて、UberEats側で対応してくれます。
でもこれは良し悪しで、対応の手間は省けますが、どんなクレームでキャンセルになったかまでは分かりません。
ですので、状況によってはお店のイメージが悪いままになるのは少々困ります。
今後の展開は??
-今後増やしたいと思う商品はありますか
フードデリバリー対応のバースデーケーキの販売はしてみたいですね。
ただ破損リスクは非常に高くなりますので、シフォンケーキの型などを使用し、中にクリームをいれてリスクを回避することを考えないとだめですね。
少し、開発する余裕ができれば、UberEats専用商品の開発も少しずつ行いたいです。
―上田シェフが考えるフードデリバリーに適していると思うお店は
小規模・少人数で運営しているお店には向いているかもしれません。
あまり人員を増やしたくない、でも売り上げをUPさせたいと思った時、ラインナップを増やせばそれだけ製造する数も増え、結果的に人を増やすことになります。
現状の、スタイルを変えず新しい事を始めたいというときにフードデリバリーは良いかも知れません。
販売する商品も、デリバリーを想定した構成で店舗売りもすれば両立もできますので、店舗の売り上げプラスαで利益が確保できれば、良い戦力の一つになると思います。
まとめ
今回はまだまだ導入しているお店が少ない、フードデリバリーを採用しているパティスリーのご紹介でした。
コロナ禍で生活様式が変わり、デリバリーで食品を購入するのが当たり前のように浸透し始めている昨今。
ニューノーマルな時代に対応する為に、新しい事を始めるいいタイミングなのかも知れません。
最近では、フードデリバリーのサービスも増加傾向で選択肢も増えてきています、自分のお店にあったサービスを
選んでみるのも良いですね。
この記事を読まれて、皆様のお店の運営の新しいカタチのヒントになれば幸いです。
取材協力
L’atelier de Massa(ラトリエ ドゥ マッサ)
住所:兵庫県神戸市東灘区岡本4丁目4−7
TEL:078-413-5567
営業時間:11:00~18:00
定休日:火曜&水曜日(不定休あり)
※営業時間・定休日に関する情報は店舗HPをご参照ください
公式HP:http://www.latelier-massa.com/
Facebook:https://www.facebook.com/latelier.massa/
instagram:https://www.instagram.com/latelier_de_massa/
UbeEats販売ページ:https://bit.ly/3kIzwjR