2021.04.22

ブーランジュリーオーヴェルニュのオーナーが考える。製パンコンテスト挑戦者へのサポート体制とは

「クープ・デュ・モンド」や「ibaCup」などパン職人の方には広く知られている世界大会から、地域や企業が主体となったコンテストまで、現在数多くの製パンコンテストが開催されており、今やパン職人が自分の実力を試すために様々なコンテストへ挑戦する時代でもあります。

葛飾区立石にあるブーランジュリーオーヴェルニュ。
駅から少々離れている立地ではありますが、近隣の方に愛され平日にも関わらず客足が絶えない人気店。
また、メディアや雑誌の取材でも数多く取り上げられる同店は、多くのコンテスト入賞者を輩出しています。
そこで今回は、オーヴェルニュのオーナーシェフ井上氏に会社でのコンテストへの取り組みと社員の育成について伺ってきました。

ブーランジュリーオーヴェルニュ
オーナーシェフ 井上 克哉

▼Profile
1968年 東京都出身。
(株)中村屋「ファリーヌ」、(有)ビゴの店、(株)ドンク「ジョアン」チーフ勤務を経て、2003年『ブーランジュリーオーヴェルニュ』を立ち上げ独立。
(株)ドンク在勤中の1998年より各ベーカリーコンテストに参加。
日本屈指の受賞歴を持つオーナーシェフ。国内外の講演会でも講師を務める。

 

フランスとイタリアのパンに力をいれたお店作りとは


-お店のコンセプトを教えて下さい
自分の店を持つまでさまざまな店で修業してきました。修業先では主にフランスパンを学んできたので、自分のお店を持ったらフランスパンに力を入れたいと思い、フランスらしい店づくりを考えて「ブーランジュリーオーヴェルニュ」をつくりました。
それから10年が経ち、そろそろ新店舗を作ろうかと考えるようになりました。ちょうどその頃イタリアのパンの勉強をしていたので、新店舗ではイートインスペースを作ったらピザも出せるかなと考え、イタリア風の店にしてみたいと想像がふくらみ、デザイナーさんと相談して「La tavola di Auvergne」(ラ・タヴォラ・ディ・オーヴェルニュ)が出来ました。
「La tavola」(ラ・タヴォラ)は、イタリア語で「食べるところ」という意味。 “オーヴェルニュの食べるところ”となります。
ラ・タヴォラの開店当初は4割ほどイタリアパンを提供していたのですが、実はあまり売れませんでした。商品構成を見直した現在は、本店とは異なるパンが3~4割となっています。ピザはラ・タヴォラにしかありません。
また、スタッフそれぞれが新商品を考えているので、新商品も店によって異なります。2店の距離は近いのですが、実は売れるものが全然違うんです。お客様の年齢層も本店のほうが高めです。ラ・タヴォラのほうが若いお客様が多く、お子様連れの主婦の方も来店されるので子ども向けの商品が良く売れます。
2店とも駅から離れているので、近隣にお住まいの人がよく来てくれます。客単価はあまり変わりませんが、ややラ・タヴォラのほうが高いです。


▲ブーランジュリー オーヴェルニュ立石店 店内の様子

▲ラ タヴォラ ディ オーヴェルニュ細田店 店内の様子

⁻看板商品や力を入れている商品はありますか
2店とも食パンに力を入れています。日本人は朝に食パンを食べるイメージがあるので、食パンの種類を多く取り揃えています。一方、土日はフランスパンが良く売れています。


▲棚には多くの種類の食パンが並ぶ

▲土日にはフランスパンがよく売れるとのこと

製造スタッフは全員社員で9人。スタッフを2グループに分けて新商品をそれぞれ考えて提案してもらっています。新商品を考える時は商品名だけでなく、原価計算もきちんと行い、値段まで考えてもらうようにしています。
私も新商品を考え、合わせて5品くらいを毎月1日に販売開始しています。お店のホームページにも掲載していますが、実は載せきれないほど新商品は多いのです。
前の月に売れた商品は残していますが、そのあと約1カ月後には新たな商品と入れ替えを行い、常に新しいラインナップを陳列し新鮮さを出しています。

▲3月の新商品(取材時)

 

⁻日仏商事商材使用の商品はありますか
私の店は生イーストを使っておらず、インスタントイーストを使用しています。ルサッフル社のインスタントイーストの赤と金をパンによって使い分けています。
また、カカオバリーのバトンショコラを使っています。パン・オ・ショコラには、バトンショコラを3本入れています。

▲パン・オ・ショコラ(カカオバリー バトンショコラを3本使用)

選手時代の経験を活かす。挑戦者へのサポート体制


⁻製パン業界に関する活動について
モンディアル・デュ・パン日本代表選考会審査員、クープ・デュ・モンド日本代表選考会審査員、ibaCup日本代表選考会審査員長、ドイツパン・菓子勉強会会長を務めています。モンディアル・デュ・パンでは、イベントの際のサポートとしての活動も行っています。

▲井上オーナーが過去に獲得された表彰状やトロフィーが多数

⁻製パン業界を盛り上げていくための活動はされていますか
これまでは製パン関連企業様の講習会で講師を務めたり、材料メーカー等のパンフレット作成のレシピ提供などで協力してきましたが、ここ1年は新型コロナの影響で休止している状況です。

⁻若手パン職人や日本代表選手の育成に関して
私の店は独立希望のスタッフが多く来ます。そのため「独立に向けて何かやっておいた方がいいんじゃないの?」とコンテストの参加を促すようにしています。ですが毎日の仕事が終わらなかったり、プライベートが忙しいということもありますので、コンテストに挑戦する人は半数くらいです。
そのため、今は「やるなら応援するよ!」という姿勢でいます。自分自身も選手だったので、挑戦するスタッフの気持ちを考えながらサポートしています。

▲お店の入口にはibaCup日本代表優勝のパネルが


▲店内で販売されているibaCUP2021日本代表記念作品「クローネ」

▲店内で販売されているコンテストの入賞作品「Meal of eggs」

⁻2021ibaCup日本代表選考会で先日オーヴェルニュから日本代表が輩出されましたが、オーナーシェフとして現在どのようにサポートされていますか。また、どのような選手になってもらいたいと思っていますか。
先日開かれた2021ibaCup日本代表選考会では、代表選手のひとりにオーヴェルニュの市川美月さんが選ばれました。オーナーシェフとして市川さんには材料費や交通費など、金銭面では全面的なフォローをしています。また、練習など有効に使ってもらうために休日を1日増やしています。
また希望に応じてトレーニングもしますし、積極的にアドバイスしています。挑戦するスタッフについては、周りのスタッフも理解してくれています。
出場するからには良い成績を残して欲しいですね。本選まであと半年ほど。最近、市川さんの顔つきも変わってきたように思います。参加出場国は12か国です。日本は最終日に戦いますが、優勝できることを祈っています。

▲ibaCup2021の出場について大きなポスターを掲載

パン屋の魅力を分かってもらい、パン屋という職業の地位が上がってほしい


⁻これからの日本のベーカリー業界について、どのようになってもらいたいですか
パン屋さんの人手不足を何とかしたいです。パン屋さんという職業の地位がもう少し上がってくれればいいのにと思いながら、パン業界の活動に協力しています。1人でも多くパン業界に来てほしいので、製パン学校から講師として招かれるととても嬉しいんです。
パン職人は昔よりも労働条件が良いですし、世界大会でも日本が優勝しているのに、あまり世間に知られていないのが残念です。ですが、パンの仕事はとても良い仕事だと思うので、パン屋さんの魅力をもっともっと皆さんに分かって欲しいと思っています。

お店によるコロナ対策。コロナ禍になって変化したこととは?


⁻コロナ禍になってから、お店の状況はどのように変化しましたか。コロナ対策はどのようなことをしていますか
昨年3月の緊急事態宣言の時は売り切れが続出し、忙しすぎて作りきれないので15時に閉店していました。パンは袋詰めせずいつも通り販売していました。他のベーカリーが袋詰めしていることも後になってから知りましたが、作っては売れてしまっていたので袋に詰める余裕もありませんでした。
今も、冷めるまでそのままにしておき、午後になって手が空いてから袋に入れています。一方お客様のなかには袋に入ったパンしか買わない方がいらっしゃると聞いています。

▲個包装にしたパンも並ぶ

24席あったカフェは20席に減らしました。カフェではモーニングビュッフェを提供しているのですが、パンを取りに行くときはマスクをしてもらい、1人1つトングを渡して、マイトングとして使ってもらっています。営業中は換気も忘れずに行っています。
カフェの売上は落ちていますが、今の時期は仕方がないと思います。モーニングビュッフェは、平日は9時頃に満席になる状況です。また、土日は今も朝から店の前が行列になるほどで、人気は落ちていないのかもしれません。


▲モーニングビュッフェのお知らせ看板

▲イートインスペースは間隔を空けて対策

⁻キャッシュレス、フードデリバリーの導入はされていますか
現在、キャッシュレスサービスの「PayPay」を導入しています。PayPayの利用率が高く、キャッシュレスの時代なのだと実感しています。今後は他のキャッシュレスサービスについても検討していきたいと思っています。
デリバリーサービスに関しては、出前館を利用してみようと考えています。パンの通信販売は考えておりませんが、実は以前はいろいろなことを検討していました。しかしスタッフの労働時間のことを思うと、何かを手広くやっていくよりも、最近では‶1店舗でできることは何か″について良く考えるようになりました。

お店の展望、井上シェフの展望について


普段私は1日交代でそれぞれの店に入るようにしていますが、展示会や講習会などで不在にすることもよくあります。そのため店舗を増やすことは考えていませんが、今後は人材の育成に力を入れていきたいです。また、大学生になった息子が店を継ぎたいと言ってくれていますので、うまくバトンタッチしていけたらと思っています。

 

編集後記


井上オーナーも過去には数多くの製パンコンテストへ挑戦してきたとのこと。
店内には、地元の製パンコンテストの表彰状から、世界大会の入賞のトロフィーまで沢山の栄光が飾られていました。
個人店でありながら、コンテストへ挑戦する従業員への手厚いサポート体制は簡単にできることではありません。だからこそ、独立希望のパン職人が実績と経験を積むために井上オーナーのもとで働きたいと思うのではないでしょうか。
昨年は新型コロナウイルスの影響からコンテストの中止や延期が相次ぎました。
今年は、ウィズコロナとしてしっかりと感染対策が取られた状態で様々なコンテストが開催されています。
製パン業界をより盛り上げるためにも、コンテストへ挑戦するパン職人が増えることを願います。

取材協力


Boulangerue Auvergne(ブーランジュリー オーヴェルニュ)立石店
住所:東京都葛飾区立石6-5-7 (GoogleMapで見る
TEL:03-3691-5102
営業時間:7:00~18:00
定休日:年中無休(年末年始を除く)
アクセス:京成押上線立石駅徒歩15分 | 京成本線お花茶屋駅徒歩15分 京成本線 | 青砥駅徒歩15分
☞公式Instagram
☞公式HP
La tavola di Auvergne(ラ タヴォラ ディ オーヴェルニュ)細田店
住所:東京都葛飾区細田5-9-15 (GoogleMapで見る
TEL:03-6657-8688
営業時間:7:00~18:00(カフェのラストオーダー17:30)
定休日:年中無休(年末年始を除く)
アクセス:京成小岩駅から徒歩10分 | JR小岩駅から徒歩15分
☞公式Instagram
☞公式HP
※この記事は2021年3月に取材した内容になります

関連リンク

ページ先頭へ戻る