2021/04/06

製菓製パンに関連する日々の活動やテスト結果をご紹介します ルヴァン・自家培養発酵種編【研究開発課レポート】

ルヴァン(自家培養発酵種)

弊社の研究開発課では、お客様からの様々なお問い合わせに対応するべく、日々テストを行っています。
実際にお客様からからいただきましたお問い合わせの一例として。
・朝早く出勤しなくても良い方法は無いか?
・お店のオリジナリティを出したいが良い方法は無いか?
・人手不足でなるべく手間を減らす方法は無いか?
・ルヴァンが安定しないがどのようにしたら良いか?
・材料の使用方法について
など
今回はその要望の中の一つ、『ルヴァン』に焦点を当てて行ったテストをご紹介します。

ルヴァン(自家培養発酵種)とは


ルヴァン(Levain)とはフランス語で発酵種の事を意味します。
日本でもルヴァンという言葉を使った製パン用語として、「ルヴァン・シェフ」「ルヴァン・ナチュレル」「ルヴァン・ルヴュール」など色々あります。
今回は自家培養発酵種としてルヴァン・シェフ(親種)を使ったテストを行いましたので、以下自家培養発酵種をルヴァンとして内容を進めます。
ルヴァンを用いた製法は、かつてパン酵母(イースト)が普及する前に、パン酵母を自ら培養しパン作りを行っていた手法です。
時代が進むにつれ酵母の培養技術が発達し、工業的にパン酵母が培養され、安定供給されるようになったこともあり、一時は無くなりかけた製法ですが、現在、製品の多様化により付加価値・風味の向上などの面で注目されはじめルヴァンを取り入れるお店も増えてきました。
一言でルヴァンといっても、種の起こし方・粉・水の量などで状態は変わります。

フランスには、「デクレ・パン」というパンの法令があります。
この法令では、ルヴァンは小麦粉とライ麦粉、またはこの2種の粉のうちの一つを使うとされているため、今回はその規定に沿ってルヴァンを作成しました。
「パン・オ・ルヴァンは、ルヴァンだけで作られたパンである」とデクレ・パンでは定義されておりますが、フランスの生イースト0.2%以下(粉対比)の使用は認められています。
日本ではフランスのように法令はありませんが、フランスの規定に則るとルヴァンで作ったパン、もしくはセミドライイーストレッドかリロンデル1895を0.08%使用して作られたパンが「パン・オ・ルヴァン」ということになります。

 

テスト結果①≪粉と水の量の変化によるガス発生の速度を検証≫


粉と水の量の変化によるガス発生の速度

上のグラフは、粉と水の量の変化によるガス発生の速度を調べたものです。
この結果から、同じ粉でも水分の多い時・少ない時でガス発生量に差が出てきます(このグラフでガス発生が多いのは水分が多い時、少ないのは水分が少ない時です)。また粉の種類によっても結果が異なってきます。このような違いから粉の割合の変化によって生地の緩み方などを読み取り、お客様からいただく質問に対応できるよう準備を進めています。

 

テスト結果②≪仕上げ種作成時のシェフ分量と発酵温度の変化による比較≫


仕上げ種作成時のシェフ分量と発酵温度の変化による比較

▲ ①:粉対シェフ分量:10% 発酵室温度:20℃ 粉量がコントロールと同量
②:粉対シェフ分量:10% 発酵室温度:28℃ 種総量がコントロールと同量
③:粉対シェフ分量:50% 発酵室温度:28℃ ※コントロール

上の写真は、パン・オ・ルヴァンを作る際に使用する仕上げ種の比較写真です。
このテストでは、仕上げ種を作る時に使うルヴァン・シェフ(親種)の量や発酵温度の違いによってパンのボリュームにどう影響が出るのかを確認します。
※仕上げ種の状態は同一になるようにしています。

③のビーカーをコントロール(対紛シェフ分量:50% 発酵室温度:28℃)として、①のビーカー(対紛シェフ量:10% 発酵室温度:20℃)は種の量がコントロールより少なく総量が少なくなるため時間をかけ発酵力を付けています。
そうすることで、種のボリュームだけでなく、パンのボリュームもコントロールに近くなります。
また、②のビーカー(対紛シェフ量:10% 発酵室温度:28℃)は種の総量をコントロールと同量にし、シェフの量に変化を付けています。シェフの量を変えるだけで仕上げ種の発酵時間にも変化が生じます。
結果的にパンのボリューム、味にどのような影響が出るのかを確認するテストを行っています。

 

テスト結果③≪2段階法での発酵時間の変化による比較≫


2段階法での発酵時間の変化による比較
2段階法での発酵時間の変化による比較

▲①:かえり種6時間 仕上げ種2時間
②:かえり種4時間 仕上げ種4時間 ※コントロール
③:かえり種2時間 仕上げ種6時間

パン・オ・ルヴァンを作成する方法として1段階法、2段階法、3段階法が有名です。
段階を変えることにより発酵力を高めたり、酸味を和らげたりと自分好みに変えることが出来ます。

次のテストでは、2段階法を用いた内容(上の写真)をお伝えします。
同じ状態のシェフを使用。かえり種、仕上げ種の全体の発酵時間を8時間にし、かえり種と仕上げ種の時間を変えてテストを行いました。
上の写真の②のパンは、かえり種の発酵時間を4時間、仕上げ種の発酵時間を4時間と設定しこれをコントールとしています。
③のパンは、かえり種の発酵時間を短くして仕上げ種の発酵時間を長くすることで酸味が出てボリュームのあるパンに焼き上がりました、
①のパンは、かえり種の発酵時間を長くして仕上げ種の発酵時間を短くすることでボリュームが小さく、より酸味を強く感じるパンになりました。
このように発酵時間の調整によってもパンの状態は変わります。お店の状況に合わせて自分好みの段階を探してみてはいかがでしょうか。

※今回使用したルヴァンではこのような結果になりましたが、ルヴァンの特性によっては違う結果となる場合もあります。

 

お客様からの様々な質問に対応するため、違いの原因が何であったのか、どうしたらコントロールに近づけることが出来るのかを考え、配合や工程を変えてみたりして、試行錯誤を繰り返しテストを行っています。

状態の見極め、管理する場所、時間など色々なことに気を付けて作成する必要のあるルヴァン。粉から種を起こし、
上手く調整することでお店のアピールにもつながるようなパンになる一方、安定した商品を提供するにはかなりの知識と技術が必要です。

実際にルヴァンを使用したパンを販売されているベーカリーや試作を行っているお客様からルヴァンに関する様々な質問を
いただきます。
・シェフの酸味が強くなってしまった
・自家培養したルヴァンを安定させるにはどうしたらよいか
・シェフや仕上げ種の状態では理想通りだったが、パンにしてみたらイメージと違った
など
管理が難しいルヴァンですがご興味ある方は、お気軽に弊社研究開発課にご連絡ください。

 

また、弊社では、そんな難しいルヴァンを気軽に安定して作成できる『リヴェンドLV1サフルヴァン』という商品を取り扱っています。
「種を作成するには時間がかかってしまう…けれどルヴァンを使用したパンを作ってみたい」「いつも安定したルヴァンを作成し製品を作りたい」というお客様には最適な、酵母と乳酸菌を結合させたスターターです。
種に使用する粉の種類を変えたり、水の代わりに牛乳やフルーツピューレを使用するなどアレンジ次第で独自の個性ある種を衛生的に作ることが可能です。
このような商品や今回のルヴァン(自家培養発酵種)にご興味ある方はぜひお試しください。

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