フランス通信vol.10 パンの文化と情熱を分かち合う祭典 第30回「La Fête du Pain(ラ・フェット・デュ・パン)」
5月はパンの季節。
パンの本場フランスでは、5月16日頃に「ラ・フェット・デュ・パン(La Fête du Pain)」と呼ばれるパンのお祭りが全国的に行われます。パン職人とパティシエの守護聖人であるサントノレ(St-Honoré)の祝日に合わせて制定された「ラ・フェット・デュ・パン」。その一大イベントが5月8日~17日の10日間、パリのノートルダム大聖堂前の広場で開催されました。
今年で第30回という節目を迎えるパンの祭典の様子をご紹介します。
約1000㎡の広大なパン工房
約1000㎡の会場には大きなオーブンが何台も並び、フランス中から集まったたくさんのパン職人たちが忙しく立ち回っていました。熟練の手つきで次々とパンを成形し、焼きあげていきます。まるで会場そのものが巨大なパン工房のようです。ブーランジェリーが交代で作るパンの販売では連日大行列の賑わいぶりでした。
訪れた来場客たちにとっては、普段見ることのできないパンづくりの様子を見たり、パン職人たちと言葉を交わしたりと、パン文化をもっと身近に感じることのできる貴重なイベントとなっています。
巨大なパンのエッフェル塔

イベントの最終日、会場でひときわ目を引くのは、4メートルはありそうな巨大なパンのエッフェル塔。今年で第30回を迎える節目ということもあり、M.O.F.(フランス国家最優秀職人章)のパン職人のみなさんが協力しあい、イベント中3日間かけてとても立派なオブジェを作りあげていました。

▲和気あいあいとエッフェルタワーパーツを作るM.O.F.の皆さん
第12回 バゲット・トラディッション全国大会
大規模なパンの製造・販売のほかにも、イベントの目玉と言えるのが、各種パンのコンクールです。今回のイベントでは、グラン・パリ地区クロワッサン・コンクール、サンドイッチ・コンクール表彰式、バゲット・トラディション全国大会の3つが行われました。
メインイベントである第12回バゲット・トラディッション全国大会は、イベント中3日間にわたって開催されました。地方予選を勝ち抜いてきた21名の予選が2日間行われ、さらに勝ち抜いた6名が14日の決勝戦に挑みました。供給される小麦粉は、メーカー名記載のない白い袋に入ったもので、出場者は研鑽を積んだノウハウを頼りに作ることになります。
前日の生地の仕込みを含め、6時間以内にバゲットを40本を製作・提出します。予選ではバゲット40本のうち20本を提出、決勝では40本全てを提出しなければならないので、ごまかしのきかない普段のパン職人としての実力が試されます。会場は外気の入ってくる開いた場所で空調もなく、日によって天候も異なる難しい条件下で、真剣に打ち込む出場者の様子が伺えました。

▲バゲットの長さと重さが基準を満たしているかチェック
採点基準は提出されたバゲットの6つの要素:外観/クラスト(色・サクサク感)/ 香り /クラム(色・気泡)/味/食感を14名の審査員が採点します。年々コンクール出場者たちのレベルは上がっており、一般客も、美しく美味しいパンを期待しているので、さらなる完璧さが求められます。
3日間にわたる競技の結果、イル・ド・フランス地域の「ブーランジュリ・パティスリー・ブレイ(Boulangerie-Pâtisserie BOULAY)」のオーナーシェフ、フレデリック・ブレイ(Frédéric Boulay)氏が優勝しました。
パトリック・フェラン氏
「このイベントとコンクールは、伝統的なノウハウの美味しいフランスパンを伝承する素晴らしい機会で、一般の方にもパンのクオリティに興味を持ってもらえる絶好の機会です」

▲M.O.F.のパトリック・フェラン氏
グラン・パリ地区 クロワッサン・コンクールの表彰式では、パリ2区の「ブーランジュリ・デュ・サンティエ(Boulangerie du Sentier)」で働く韓国出身のパン職人、イ・スジン(Soojin Lee)さんが優勝しました。フランスのパティスリーで働く外国人は多いですが、フランスのパンの大会でアジアの職人さんが優勝したことは、フランスパン文化の世界的な広がりを感じさせます。
取材を終えて

伝統に基づいたシビアなコンクール、M.O.F.やベテラン勢と若手職人たちの連帯感、一般の来場者との陽気な会話…鐘の音が鳴り響くノートルダム大聖堂の下で、フランスの人々の日常の糧であるパンへの情熱が分かち合われ、フランス、世界へと向けて発信された感慨深い10日間でした。

