2020.09.23

戦略的にバズらせる!お客様に買ってみたいと思わせる商品名の付け方とは

本マガジンでは、様々なテーマに沿って取材を行い、皆様に情報を配信してきましたが、コロナ禍の影響もあり現在は、やむなく訪問取材を自粛しています。

しかし、取材でしかお聞きできない貴重な情報も多数あり、「やはり取材がしたい!」。
そんなマガジンスタッフの意気込みとは裏腹に、取材自粛ムードが漂う状況で頭を悩ませていましたが、このままではダメだと思い動き出しました。

ということで、初のオンライン取材を実施。
製菓製パン業界の皆さんに少しでも有力な情報、お役に立てる情報を配信できればと思います。

 

オンライン取材第一弾のテーマは何??


今回のテーマは「商品名」です。
皆さん、お店で販売している商品の名前はどうやって決めていますか?
・使用している素材のイメージが伝わる
・季節やイベントを意識
・食感や味わいが分かる
などなど。商品名を決めるポイントは様々だと思います。

「商品名」を考えるのは非常に難しいですよね。
単純な名前だと、同様の商品や競合の商品との差別化が図りにくい。
かと言って分かりにくい名前をつけるとお客様に商品の魅力が伝わらないケースもあります。
商品は美味しいのに、何故か売れないってことはありませんか?

実はそれは商品名に要因があるのかもしれません。
という事で、今回は商品名を上手くマーケティングツールとして活用されている製パン企業に取材しました。

 

100年以上の歴史がある神戸屋さんにお話を聞きました


今回取材にご協力いただきましたのは、大阪に本社を構える「株式会社神戸屋」さんです。

既にご存じの方も多いと思いますが、改めて神戸屋さんについてご紹介します。
ホールセール事業(袋入りパン)の他、ベーカリーや神戸屋レストランの展開をされている製パン企業です。
神戸屋さんというと、ホールセールがメイン事業の企業としては珍しく、製パンコンテスト入賞者が多数在籍していること。
弊社で日本の出場選手をサポートをさせていただきました「2020クープ・デュ・モンド・ドゥ・ラ・ブーランジュリー」では神戸屋所属の津田さんが日本代表チームのメンバーとして出場し、2位に入賞されました。
出場されるだけでなく、高い技術力が認められた証拠でもあります。

入賞トロフィを持つ津田さん(写真 真ん中)

その高い技術は、ホールセールの袋入りのパンの開発にも落とし込まれています。
取材当時ホールセールのパンのラインナップは150種以上もあり、その製品はお客様の支持率も高く、聞かずとしてもパンのイメージができてしまう不動の名作が多数あります。
例えば、
長いロールパンにクリームをはさんでいる「フランスシリーズ」、丹念熟成にこだわった「あんぱん」、そして関西では支持率の高い関西限定販売の「サンミ―」やお子様にも人気の「ハムマヨ」などがあります。

関西人には馴染みのある関西限定販売の「サンミ―」

歴史があり、技術力が高く、真面目一筋の神戸屋さんですが、ここ最近パンの商品名に変化が…。
非常にキャッチーな商品名のパンが増えてきたのをご存じでしょうか?

 

お客様に手に取ってもらう商品名とは!?商品名を使ったマーケティング手法を聞く


今回お話をお聞きしたのはこちらのお二人。

株式会社神戸屋
マーケティング本部企画部
村瀬さん(写真左)
内藤さん(写真右)

 

常に真面目だった新商品開発に変化球を


―新商品の発売サイクルを教えてください
内藤さん―
毎月、新商品を13品以上発売しています。
年間でいうと200品弱の新商品が発売されていることになります。
食品業界でも、これだけのスパンで商品を発売しているのは菓子パン・惣菜パンカテゴリーくらいではないでしょ
うか。

―開発体制を変えたとの事ですがどんな体制にされたのですか
村瀬さんー
約1年前から、新商品会議の体制を変えました。
今までは、開発スタッフがメインで新商品を開発していましたが、体制を変えた後は、開発、営業、製造、営業
企画など、様々な部署からスタッフを選出しました。
様々な部門のメンバーで構成することで、営業的な肌感や製造目線の生産性の見込み、販促PRの方法など、ただ
開発して販売するだけでなく、あらゆる視点から商品開発ができるようになりました。

―その新しい開発メンバーの年齢層について教えてください
村瀬さんー
若手メンバーを中心に構成しています。
新しい発想を重視し、案が凝り固まらないようにしています。

―若手メンバーで構成された理由にはあるマーケティング的な理由があるとお聞きしましたが
内藤さんー
弊社の商品を購入いただいているお客様は40歳以上の方がメインユーザーです。
ただ、長年このユーザーの年齢層は変わっておらず、新しい世代のユーザーを取り込めていないのも事実です。
そこで新たな開発体制、若手メンバー構成にし新規ユーザー獲得に向けて動き出しました。

村瀬さんー
その動きに合わせて、若手メンバーには開発だけでなく、SNS運用にも力を貸してらっています。
Facebook以外にも、Instagramやtwitterページを開設し、SNS上で情報拡散をしてもらえるように今まで以上にSNSの活用を強化し始めました。
そのおかげで、20~30代の女性を中心にファンが徐々に増えてきています。

内藤さんー
そして今回本題となっている「商品名」においても若手ならではの発想を生かし、今までの神戸屋にないキャッチーな商品名を付けて、若年層のお客様に手に取っていただけるように、「商品名」を一つのマーケティング
ツールとして活用し始めました。

 

バズマーケティングを実践。話題になった商品BEST3


―お客様に反響があったキャッチ―な商品名の商品を紹介していただけますか
内藤さんー
そうですね、最近話題になった商品3点をご紹介します。

▼きんにくぱん

オリンピックをイメージしたパンで、パン生地にプロテインを配合した商品です。
案出しの際は、「プロテインあんぱん」というベタなネーミングでしたが、会議を進めている中で、「それではイメージが伝わらない」という意見があり、そこから頭を悩ませる日々が…。
プロテインを日常的に摂取している方はプロテインを買いますしね。それであればスーパーやコンビニでパンを購入されるお客さんがすぐ分かる、そしてキャッチ―な商品名とパッケージデザインにしたかったんです。

試行錯誤の末、ここは関西人ノリで「きんにくぱん」に決めました!

それがお客様に伝わり、SNSでも話題になり、若年層の方に神戸屋のパンを手に取っていただく機会になりました。

 

▼凍らせて食べてほしい蒸しパンシリーズ

夏向けのカスタード蒸しパンなのですが、そのままでは面白くなく、お客様によって温めたり、焼いたり、冷やしたりと蒸しパンだけでも好みの食べ方は様々です。
そこで出た案が、私たちが強くおすすめしたい食べ方をネーミングにしてみては?という意見でした。
よくある「○○してもおいしい」などのおすすめですよ~というニュアンスでなく、要望を強く伝えるような商品名がお客様に響き、こちらもSNSで「凍らせたら本当に美味しかった」などの口コミをいただき話題になった商品です。
少し視点を変えたことで、ユーザーに思いが伝わった一品です。

 

▼しあわせ届けるくりぃむぱん


この商品はクリームをたっぷり使っているので、最初は「たっぷりくりぃむぱん」という特徴をそのまま伝える名前でしたが、よりお客様に思いが伝わる商品名にしたくて、色々と案を出しました。
クリームパンのようにお客様がどんな商品か想像しやすい場合、スーパーで商品が陳列された場合、普段購入している商品、自分の好きなメーカーの商品を購入されるケースが多いと推測していました。
そこで、普段神戸屋の商品を購入されないお客様に手に取っていただく為には、もっと引き寄せる商品名が必要だと思い、今回のように思いをお客様に伝える名前にしました。
そのおかげで、普通のクリームパンとの違いを売り場で理解して買っていただくきっかけとなり、SNSの口コミでは、
「パンを食べてしあわせになった」
「しあわせが届いた」
などの嬉しいコメントをいただきました。

この商品を発売した時期が、ちょうどコロナの影響で緊急事態宣言が出された後ということもあり、皆さんの気持ちが落ち込んでいる状況でした。
そのタイミングでもあった為、神戸屋のパンで皆さんにしあわせを感じていただき共感を得ていただいたのではと思います。

恐らくこれが、当初の商品名「たっぷりクリームパン」では同じ状況にはならなかったと思います。

 

商品名を考える難しさ。それは簡単な道のりではなかった


―商品名を考える際に注意したい点は
村瀬さんー
まずお客様に響くポイントは何か。その本質を理解しなければならないところでしょうか。
少し昔の話ですが、ある食品メーカーの商品名が文章形式の商品名が付けられており、その当時こんなに長い商品名
を付けてもいいのかと衝撃を受けました。
案の定、その商品はヒット商品となりました。
先ほどご紹介したクリームパンも少し文章形式で長い商品名でしたが、お客様にメッセージは伝わりました。

そして、もう一つ重要な事は商標です。
シンプルな名前を付ければ付けるほど、既に商標登録されている商品も多いです。
商標に抵触する商品名にしてしまうとせっかくの商品も販売ができなくなります。事前にこの調査はしっかり
としておく方がいいですね。
実は9月から発売開始となった新商品の食パンも、この商標にすごく悩まされました。

その商品は「匠水(タクミ)」という商品なのですが、神戸屋の匠の技を表す「匠」という商品名で考えていましたが、そのままではもちろん商標が登録されていました。
しかし「匠」の文字は必ず使いたいという強い思いがあり苦悩の日々が続きました。
そこで、その製品には私たちの製法の特徴でもある多加水製法が使われている為、「水」という文字を加える事で、商標問題をクリアし、更に多加水製法の特徴も伝えられる商品名になりました。

なかなか外出自粛ムードで、高級食パン店に行けない。
そんな方に、普段買い物をしているスーパーでも高級食パンが買えるという想いが伝わればと思います。

 

今後の神戸屋の展望は??


内藤さんー
今回の開発体制の見直し、ユニークな商品名を採用することで、今までとは違う層のユーザーを獲得できるきっかけ作りができました。
今後は、定番商品7割は死守しつつも、残りの3割はチャレンジ商品として新たな面白い商品を生み出していきたいですね。

 

まとめ


今回は、神戸屋さんに商品名の重要性、開発体制の見直しについてお聞きしました。
弊社ではクープ・デュ・モンド・ドゥ・ラ・ブーランジュリーで神戸屋さんとご一緒することが多いのですが、どの方も非常に真面目な方が多く、イメージは「いつも真面目な神戸屋さん」でした。
それもあり、最近発売されているユニークな商品名と真面目なイメージにギャップがありました。
ですが今回の取材を通して、ユニークな名前が付けられた商品が新たなユーザー獲得につながっている事が分かりました。
常にユーザー目線で商品を開発し、それにマッチするマーケティング戦略を考え実践されているのをお聞きすると、商品名こそユニークですが、やはり芯は真面目な神戸屋さんであることを実感した取材でした。

皆さんも、商品名を考える際に少し時間を作り、新たなマーケティングツールとして「商品名」を活用してみませんか。

 

取材協力


株式会社神戸屋

本社所在地:大阪市東淀川区豊新2-16-14
☞公式HP ☞公式Facebookページ ☞公式Instagram

 

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