当社が取り扱うはちみつメーカーのアピディス社を訪問しました。
アピディス社はフランス・ブルゴーニュ地方にて1890年創業の老舗養蜂、はちみつ製造メーカー。120年以上にわたって家族経営を貫いており、品質第一のはちみつ造りを行っています。
アピディス社は養蜂とはちみつ製造を一貫して自社で行うメーカーとしてはフランスナンバーワンの規模です。フランスにあるはちみつメーカーでは自社で養蜂を行っているところは多くなく、大きなメーカーほど他で仕入れた原料蜜を加工しているそうです。
その中にあって、アピディス社は自社でミツバチと巣箱を管理する養蜂業を営み、フランス、イタリア、スペインの3カ国を中心に多数の土地を所有し、季節や天候に応じて、所有する土地に巣箱を設置して、自ら原料蜜を採取し、フランス国内3ヶ所にある工場にて加工処理し、はちみつを製造しています。
訪問した当日はあいにくの雨でしたが、せっかく訪問してくれたのだからと、巣箱の設置現場へ向かい、実際に原料蜜を採ってきました。
この日、案内してくれたのは、日仏商事のサイトでもおなじみのアピディス社で営業を主に担当するトマ・ドゥコロンバール=プロノー氏。日本市場の担当者でもあります。小さなころから祖父母、父母に連れられて巣箱の周りを遊び場にして育ち、気がつけば家業を継いでいた、生粋の養蜂家です。
工場で機械を前に力説するトマ。「はちみつははちみつ味をつけるための甘味料ですが、合わせる素材の風味を十分に引き出す風味増強剤の役割も果たします。フィナンシエやマドレーヌなどの焼き菓子、クロワッサンなどのヴィエノワズリーの配合で、少しでいいですから砂糖をはちみつに置き換えてみて下さい、しっとりとした食感を得られるとともに、バターの風味が全然変わりますから!」
巣箱に到着
さて、瓶詰め工場のあるディジョンから車で1時間ほど郊外に走ると巣箱に到着しました。
まずはミツバチたちに刺されないように、防護服を着て、車の外へ。通常はこの写真にあるような顔と手を保護します。
ミツバチに刺されてしまうとアナフィラキシーショックを起こしてしまう人は完全防備が必要です。その場合、宇宙服のような重厚な防護服を着ます。
準備が整えば、次に必要なものが煙発生装置。プロの養蜂家の皆さんは防護服なしで作業します。私はとてもじゃありませんが、そんな勇気はありません!
ミツバチたちは興奮状態になると、人間を刺します。人間を自分達の敵とみなし、攻撃的になるそう。ミツバチたちを落ち着かせるために、巣箱周りに煙を撒きます。どうして煙でおとなしくなるのか?疑問に思いましたので、質問してみました。トマいわく、諸説あるそうですが、煙を感知したミツバチは巣箱の中の下側にもぐり、溜め込んでいた蜜を食べるそうです。食欲が満たされたミツバチたちは攻撃性が少なくなって、人間を刺さなくなるとのこと。確かに煙を吹き付けられたミツバチたちは巣箱の奥へ奥へともぐっていく姿が見られました。
巣箱は2層構造になっています。上段部分が私たちがいただく部分です。このように木製の着脱可能な棚のようなものが入っています。これを外してミツバチたちが集めた蜜をいただく、というわけです。下段も基本的に同じような構造になっていますが、こちらはミツバチたちが生きていくために必要な蜜ですので、すべてを持っていってしまうと、ミツバチたちのモチベーションが低下するというもの。基本的に自分達の食料として蜜を集めて、巣箱に持ち帰って溜め込んでいるわけですから、すべてを人間がとってしまうと、ミツバチが蜜を集められなくなります。私たち人間はミツバチが野山を飛んで集めてきた蜜を少しだけいただく、という謙虚な気持ちが必要かもしれません。
その野山を飛んで蜜を集めるミツバチはメスだけ、ということはご存知でしたか?オスは蜜を集めません。メスが蜜を集めるのです。ミツバチの寿命は1ヶ月ほどだそうで、この間、メスは必至に蜜を集めては巣箱に持ち帰り、オスは必死?に女王蜂の元で種を植え付けます。また、刺すのはメスのみで、オスは刺しません。これは産卵管が針の役割となっているためで、産卵管を持たないオスは刺すことができないのです。いろいろ勉強になります!
これがオスだそうです。私にはさっぱりわかりませんが・・・オスは刺しませんから手で触っても大丈夫。飛んでいるミツバチを見てオスかメスが見分けがつくのですから、プロの目というのはすごいですね。
さて、話をはちみつに戻して。
ミツバチが集めてきた蜜がそのままはちみつになる、と思ったら大間違い。巣箱の中では、ミツバチたちによる仕事が引き続き行われています。ミツバチが集めた蜜は水分をたくさん含んでいます。そのままでははちみつのようなしっかりとした甘みが感じられないそうです。日中、ミツバチたちは巣箱の中でみんなで必死に羽ばたき続け、水分を飛ばしているそうです。遠くまで飛んで蜜を取ってきたと思ったら、今度は巣箱でゆっくりお昼寝ではなく、羽ばたいて仕事し続けているのです。本当に働き者ですね。
一尾一尾が小さくてもたくさんで羽ばたき続けるので熱が発生します。この日は外気温は20度くらいでしたが、巣箱の中は35度もありました。巣箱を開けた瞬間、ほのかに熱気を感じるほどでした。
このようにミツバチたちが働き続けた結果、水分がある程度飛んでくると巣箱の中の蜜は表面が固形化してきます。
それがこの上の写真です。左上部は表面がまだ固形化していませんが、ハニカム構造の中に艶が見えますね。蜜です。1枚の棚にぎっしりとはちみつが詰まるととても重くなりますが、これを我々がありがたく頂戴するのです。感謝。
働き者のミツバチたちを傷つけないように、手で棚を振ったり、ブラシでやさしくミツバチたちを払いのけたりして、棚を回収します。このように回収された棚たちは専用の車に乗せられて一次加工の工場へ回されます。
工場へ
工場では表面の固形化した部分が丁寧に外されます。その後、遠心分離機にかけて、中の蜜を丁寧に採取します。
この段階で特別に蜜を味見させていただきました。当たり前ですが、とっても甘い。はちみつです。アピディス社では加熱して糖度をあげたり、加糖したり、甘みを人工的に増すことは一切行いません。ミツバチが自然に作り出したものを丁寧にフィルターがけを行い、はちみつにしています。
巨大な遠心分離機。これを回すと、棚にぎっしりと詰まった原料蜜がとれる、というわけです。
これが製品になる前の原料蜜です。この段階では遠心分離機にかけただけですので、蝋や花粉がまだ取り除かれていません。この後、それらを取り除くために丁寧にフィルターがけを行い、はちみつに仕上げます。繰り返しますが、アピディス社では加熱したり、水あめを加えて補糖するといったことは一切ありません。100%自然由来のはちみつです!
最終的なフィルターがけを行って、きれいに蝋や花粉を取り除き、充填機にて瓶詰めされます。これではちみつの出来上がり。長くなりましたが、簡単に巣箱からはちみつができあがるまでの紹介をさせていただきました。
寿命1ヶ月ほどのミツバチたちがその一生をかけて働き続け、集めて蓄えた蜜を我々はいただいています。そのミツバチたちの働きに敬意を払い、そこに特別な手を加えずに、ミツバチたちが作り出した自然のままの蜜からはちみつ造りを続けるアピディス社。
日仏商事では自信を持って、パティシエ、ブーランジェ、料理人の方々にアピディス社のはちみつを紹介させていただいています。
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