2023/03/02

徹底したこだわりのもとに造られる、まちの人に愛されるフルーツサワー-京都醸造(京都)【クラフトビール採用事例】

京都醸造

伝統が息づく古都・京都。五重の塔がそびえたつ東寺の南側にあるのが、京都醸造です。アメリカ、カナダ、ウェールズ出身の3人の創業者が、「自分たちが飲みたいビール」を追求し、2015年にクラフトビールの醸造所を設立しました。

週末のタップルームにはその唯一無二の味を求めて、日本だけでなく海外からもファンが訪れ、賑わいをみせています。今回はヘッドブルワーのクリスさんに、京都で醸造所を始めた想いやこだわりのビール造りについてお話を伺いました。


▼Profile
京都醸造 醸造責任者
クリス・ヘインジ
アメリカ・ヴァージニア州出身。2001年に日本へ留学後、アメリカの「American Brewers Guild」にて醸造を学ぶ。さらにアメリカの醸造所、日本の志賀高原ビールで研鑽を積み、2015年にベン・ファルクさん(販売業務担当)、ポール・スピードさん(経営全般担当)と共に京都醸造を設立。


 

「京都醸造」という名でビールを造る理由

京都醸造

週末や祝日のみオープンするタップルームでは、新作のビールをいち早く飲むことができる

創業者全員が海外出身にも関わらず、醸造所の名前は、京都醸造。さらにこれまでリリースされたビールの名前も『一期一会』や『黒潮の如く』など、あえて日本語が使われています。そこには、どのような意図が込められているのでしょうか。

「会社の名前に京都という言葉を入れるのは、少し抵抗があったんです。僕たちは海外出身だし、京都を背負うのは荷が重すぎる!と。でも、そのプレッシャーがあるからこそ、ふさわしいものを造らないといけない。怖がるものではなくてチャンスとして捉えようと考えて、京都醸造という社名にしました」(クリスさん)

一見さんお断りという言葉があるほどに、保守的なイメージが強い京都。しかし、クリスさんは「クラフトマンシップを大切にしながらも、新しい文化を受け入れる余地があるまち」だと感じているそうです。

京都醸造 醸造責任者クリス・ヘインジさん

醸造責任者のクリス・ヘインジさん

「京都には伝統を重んじる、新しいものを好む、2つの層が存在していると思うんですね。ですから、私たちがクラフト(手仕事)にこだわって質の高いものづくりを続けていけば、きっと京都の人に伝わるんじゃないかと。一方で、京都に進出する会社や売れている商品を見ると、新しいものを受け入れてアップデートしていく文化もあることがわかりました。ですから、京都にクラフトビールが根付く可能性は充分にあると思えたんです」(クリスさん)

京都醸造 グラウラーという専用の瓶でテイクアウト

グラウラーという専用の瓶でテイクアウトもできる

単に京都でビールを造り販売するだけでなく、地域の産業や小売店の人たちとコラボレーションをするなど、まちとの関わりを持つことも重視しています。

「『ご自愛シリーズ』という、京都の会社や団体と一緒にビールを造るシリーズがあります。第一弾は、京都醸造の常設店(樽生ビールを卸売している店)の皆さんとスタイルや材料、ネーミングに至るまでアイデアを出しあってビールを造りました。また毎夏、与謝野町のホップ(ビールに苦味や香りを添える植物)を自分たちで収穫してビールを造っています。朝収穫してその日のうちに仕込む、ここでしか造れない貴重なビールです」(クリスさん)

このシリーズの売り上げは、地元の活動をサポートする団体に寄付されます。ビールを造り、まちに還元する。「京都で造る」だけではなく、「京都と造ること」をとても大切にしているのです。

ユニークなビールの名前から生まれる、コミュニケーション

京都醸造のビールの特徴の一つが、ユニークなネーミング。爽やかな香りと低アルコールでぐびぐび飲めてしまう『週休6日』、ホップの産地や独自のビール文化を持つ6つの国に焦点をあてたシリーズ『六遊記』。いずれもビールの名前というよりも、小説のタイトルのよう。「どんな味なんだろう?」と飲む前から、ワクワクさせてくれます。

京都醸造 ユニークな名前のビール

プレゼントやお土産として購入される方も多い

「私たちは、ビールを造るときにどんなビールが飲みたいか、どういう存在でありたいかを考えます。スタイルの名前である『IPA』や『ピルスナー』というネーミングにしてしまうと、それが伝わりきらないんですね。『なんでこんな名前なんだろう?』という興味をそそる名前にすることで、ビールを手に取ってくれる人もいるだろうし、スタッフやお客様同士の会話のきっかけになるかもしれません。そんな想いもあって名前にはこだわっているんです」(クリスさん)

フルーツの味わいを最大に活かしたビール造り

ネーミングもさることながら、新しいビールを発想するアイデアもユニーク。2021年に販売した4種類のフルーツの果汁を使用したフルーツサワービール『果物生活』は、野菜を手軽にとれる某ドリンクを飲んでいる時に思いついたのだそう。

京都醸造 パッションフルーツのピューレを使用した果物生活

パッションフルーツのピューレを使用した果物生活

「飲んで元気が出るようなビールを造りたいと思い、パッションフルーツがメインのレシピを考えました。なるべく本物の果実の味や風味を感じるような仕上がりをイメージしており、色々と検討した中で最も質が良いと感じたレ ヴェルジェ ボワロン(以下ボワロン)のピューレを使いました」(クリスさん)

レ ヴェルジェ ボワロン 冷凍フルーツピューレ 商品詳細

他にもボワロンのピューレを試したところ、クリスさんが特に気に入ったのが苺(フレーズ)のピューレ。そのピューレを使用してできたのが、春らしいピンク色のフルーツサワービール『果風香(かふか)』です。

京都醸造 フレーズピューレを使用した果風香

フレーズピューレを使用した果風香

「ボワロンのフルーツピューレは本当にフレッシュで、最初に試食させていただいた時には驚きました。果物以外何も加えてないのに『なんでこんなにフレッシュなんだ!』って。思わず『このピューレはどうやって製造しているの?』と聞いたほど(笑)。本当に質のいいものであれば、それを中心にビールのレシピができる。ぼんやりした味わいだと、最終的にどんな風にビールに残るのか計算しづらいんです。わかりやすさって、すごく大事な要素なんですよ」(クリスさん)

コロナを経て得た気づきと今、目指すもの

2015年に創業し、これまで真摯にビール造りに向き合ってきた京都醸造。ものづくりに対する想いに変わりはありませんが、コロナ禍において変化しなければならない部分もありました。

「コロナによってゼロから考え直さないといけないと思うほど、大きな危機に陥りました。これまではどちらかといえば玄人受けするものを造っても、受け入れてもらえていると考えていたんです。だから商品を卸す店舗も限定していましたし、あえて瓶づめの商品のみで展開していました」(クリスさん)

しかし、コロナにより売り上げは激減。京都醸造として、ターゲット層を見直す必要がありました。そこで、缶での販売に踏み切り、百貨店や高級スーパーを始めとした小売店への卸売も開始しました。

京都醸造 醸造責任者のクリス・ヘインジさん

週1程度のペースで新しいビールをリリースし、ファンを楽しませています

「私たちぐらいの中小規模で、品質が安定していて、なおかつユニークなビールを造れるブルワリーは日本にそんなに多くはないということを、コロナを経て気づきました。よりニッチなものをという方向へ進むのではなく、これまで蓄積したアイデアや知識を武器にして、多くの人に手にとってもらう努力が必要だと考えたのです」(クリスさん)

親しみやすい商品を展開するために一役かっているのが、フルーツサワービール。

「初めてクラフトビール に触れる人にとって、通常のビールとの違いがわかりやすいことも大切です。今仕込んでいるのは、ハイビスカスとオレンジピューレを使ったビールで、ベリー系とオレンジの味わい。色も香りも華やかで、思わず飲んでみたい!と手に取りやすいものになっています」(クリスさん)

京都醸造 醸造所でしか飲むことができない貴重なビールも

醸造所でしか飲むことができない貴重なビールも

しかし、ポピュラーなものを造る難しさもあります。取引先が増え、愛飲者が増えることで、より繊細なビール造りを目指さなければなりません。そのためにこれまで以上に親しみやすいレシピ、そして再現性があり高い品質のビール造りを行っているそう。そこには、ニッチなビールを造ることとは違った面白さがあるとクリスさんは言います。

一方で、やはりクラフトだからこそできるビール造りも続けていきたいとのこと。

「ベルギーには2,3年かけて熟成させた、とてもおいしいフルーツサワービールがあります。そういった伝統的製法にのっとったサワービールにも挑戦して、いつか世の中に出せたら嬉しいですね」(クリスさん)

求められるニーズに応えながらも、ビールと真摯に向き合い、決して妥協しないビール造りを続ける京都醸造。香り、味わい、余韻すらも魅力的なクラフトビールから目が離せません。


京都醸造京都醸造
京都府京都市南区西九条高畠町25-1

オフィシャルサイト: https://kyotobrewing.com

■タップルーム営業時間
金曜日  17:00~21:00(20:30ラストオーダー)
土日祝日 12:00~18:00(17:30ラストオーダー)

※詳しくはSNSをご確認ください

関連記事

酵母にこだわり、世界に通用するクラフトビール醸造所へ。目指すのは、果物を食べるよりも美味しいフルーツサワー造り ー伊勢角屋麦酒(三重)【クラフトビール採用事例】
故郷の味のフルーツビールで、まちにコミュニケーションを育む-open air(神戸)【クラフトビール採用事例】
ピューレを使ったフルーツサワービールで、「ビールを選ぶ楽しみを増やしたい」ー奈良醸造【クラフトビール採用事例】
ページ先頭へ戻る