2023/05/22

フランスで流行の伝統菓子 「フラン」
[後編] 単純ゆえの奥深さと新しい提案 

誤魔化しようのないシンプルさゆえ、本当に美味しく作るのは難しいフラン。
最後の[後編]では、フランが流行している背景を掘り下げつつ、現場に即した具体的な提案も行うことにする。

伝統菓子 「フラン」

フランス人はシンプルなフランがお好み


[中編]では、主にパリを中心に様々なフランを訪ね歩いたが、さらに郊外でも地元密着型のブーランジュリー・パティスリーをいくつか回ってみた。定番の季節のタルトとともに並んでいるのは、ここでもやはりフランだ。
どれも直径24cmくらいのアントルメをカットして、丸のまま並べられている。オーダーすると、薄紙でピラミッド状に包んで手渡してくれる(写真参照)。

薄紙でピラミッド状に包んで手渡してくれる

今回の旅で見かけなかったのが、仕上げにフルーツなどを使った装飾的なフランだ。フランス人にとってフランとは素材の味と生地、そしてアパレイユの食感をシンプルに味わうための菓子であり、余計なフルーツやチョコレートなどの飾りは不要なのだろう。しかしそれだけに、味に厳しいパリっ子が認めるフランを焼き上げることは非常に難しい。

前回紹介したステファン・グラシエは、フランのレシピ集の表紙に「Les desserts les plus simples sont les meilleurs, quand ils sont bien faits. (シンプルなデザートこそ最良である、それが上手くできた時には。)」と書いている。この言葉からは「配合だけ分かったところで、自分と同じように作ることは容易ではない」という、彼の自信がうかがえる。

フラン流行りの裏側


 

ショーケースを見る親子

現在のフランの流行は、複雑になりすぎてしまった菓子作りへの反動からくる伝統的・シンプルな菓子への回帰がベースにあるが、その根本にはパティスリーの労働者不足などの問題もあるだろう。ステファン・グラシエは自店のオープンをきっかけに、店舗で実際に人気の高い、フランなどの「シンプルな伝統菓子」を著書や講習会で紹介し始めている。それはフランスのパティスリー業界が抱える問題に対する、彼なりのサジェスチョンだったのかもしれない。

一度はパリのパティスリーから姿を消していた伝統菓子を、パティシエのみならず一般の消費者までが注目するところまで引き上げられたのは、ステファンが「Tradition Gourmand」というアルティザン・パティシエ協会の会長であり、その名も「Artisan」という雑誌まで発行している立場だったからだろうか?

とにかく、彼の「文化としてのフランス菓子」を守り、発展させようとする熱意は尊敬に値する。

日本でフランを採り入れるには?
日仏商事からの提案


ラ ローズ ノワール
前述の通り、シンプルゆえに難しい「Flan Parisien(パリ風のフラン)」だが、菓子の本場フランスの流行を採り入れてみたい方も多いだろう。
「伝統菓子」と聞くと、こだわりの製法ですべてをしっかり手作りしないといけないイメージがあるが、熟練職人が不足している日本の現場にはハードルが高い。そこで、日仏商事が厳選した半製品を使って、少しでも手軽にパリの味が表現できるようレシピを作ってみた。

解凍してピケするだけですぐに使える、ラ ローズ ノワールのAOPバター100%のミルフィーユシートを使った伝統的なフラン・トラディショネルと、さらなる時短を叶えてくれるミルフィーユタルトシェルを使ったフラン・ラピッドの2種類だ。

フランスと日本では好みの違いもあり、国内での販売にはアレンジが必要かと思われるが、ベースとして一度お試しいただく価値はあると思う。伝統菓子にチャレンジしてみたい方の一助になれば幸いである。

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