2018/05/06

フランスでパティシエをするには?【パティシエ通信Vol.06 ③】

フランス在住のパティシエールに現地での仕事について聞きました

デュシェス

今回のパティシエ通信Vol.6 ③は、
フランス・ジャルニー在住のパティシエール”岸さん”に仕事についてお聞きしました。
恐らく、この記事を読んでいただいている職人の方が一番気になる内容ではないでしょうか。
では岸さん宜しくお願いします。

 

 日本では学べないことがフランスにはある!!


-フランスに行ったからこそ習得できた技術や知識はありますか?

岸さん:
私が、渡仏して初めて配属されたのがトゥールという部門でした。
この部門は、パイ生地を作ったり、ヴィエノワズリーを作るのがメイン業務になります。 私はそこで、製造責任者として働いていました。

トゥール

恐らく、日本人パティシエが一番苦手で経験したことが少ない部門だと思います。
というのも、日本のパティスリーではヴィエノワズリーやクロワッサンなどを販売しているお店はあまり多くなく、販売していても種類は少ない事が多いのではないでしょうか。
中には、一度も作った事がないパティシエもいると思います。

フランス人にとってパティスリーでヴィエノワズリーやクロワッサンを購入するのは当たり前の事なんですよ。
どのパティスリーを見ても、店頭に並んでおりしかも種類は豊富にあります。

お店で販売しているヴィエノワズリー

お店で販売しているヴィエノワズリー

同僚から聞いたのは、パティスリーで働く際に、新人が配属される事が多いのがこの部門でもあり、パティシエになる為の基礎を学ぶ為の部門でもあるそうです。

更に、この部門はサレ系も作ります。

例えば、
キッシュや私の住んでいるロレーヌ地方のスペシャリテでもあるプチパテなども製造します。
種類も豊富に扱っており、販売数も多い為この部門は、他の部門に比べ仕事量も多いです。
大量生産をするからこそ経験できる、生産の流れや技術なども学べます。

日本での経験も長く、ムースやチョコレート、焼き菓子などの技術は経験してきました。
だからこそ苦手としてきた事がフランスで経験できたのは、スキルアップにも繋がりました。
フランスで働くから必ずトゥールに配属されるわけではないですが、もし渡仏して希望が出せるのであれば、是非トゥールを経験してみてください!

-現在働いている部門について教えてください。

岸さん:
私のお店では、製造責任者のポジションであればその部門で最低2年は働くのが基本なのですが、最初の部門に配属された1年後に他の部門の従業員が辞めた為、1年後にタルトの部門で働く事になりました。
併せてトレトゥールの仕事も兼務し、2年で色々な事が学べました。

現在もタルトとトレトゥール部門で働いています。
トレトゥールとは、惣菜系の仕事が主となります。

次の写真のようにキッシュのアパレイユをつくったり、フォアグラを仕込んだりサレ系を担当します。

キッシュ

サレ系以外に、お菓子の製造も一部担当しております。
私がメインで製造しているのが、次の写真の「デュシェス」というお菓子です。

デュシェス

このお菓子は、別名で「ロレーヌ地方のお姫様」といわれています。
その名の通り、ロレーヌ地方のパティスリーであれば、必ずお店で販売しています。

デュシェス

先程の写真左側がコーティングする前で、アーモンドとヘーゼルナッツのプラリネをペーストと粉末の間くらいにすりつぶした物を四角の型に薄く敷き込み、楕円形の型を使い型抜きしたものです。

この作業はメレンゲでコーティングする前日に行います。

型抜きした中身にメレンゲでトランペします。 表面の緑の着色は、スイスメレンゲに着色したものになります。

シンプルなお菓子なのですが、手間暇がかかったお菓子なんです。

 

 仲間とのコミュニケーションが一番大事


-不慣れなフランス語を使ってコミュニケーションをする方法は?

岸さん:
一番大事なのは、相手に言われた事が分からない場合に適当に返事をしない、曖昧な表現をせずストレートに話をする事です。
何回聞いても分からない事は、メモにその内容を書いてもらい辞書を引いたりして理解してから回答するようにしています。
しっかりと対応して話し合いをする事で、相手も理解しようとしてくれます。
結果的に信頼関係が深まります。 こちらから意見を言う時もストレートに言うのが大事です。 ケンカをする事も大事ですし、相手を思いやって助け合う事も大事です。

お陰様で、お店の仲間たちとは良い関係を築いて、良い仕事ができています。

チームワーク抜群の仕事仲間

チームワーク抜群の仕事仲間

 

パティシエの経験を生かして情報を配信したい


-今後はどうされるのですか?

岸さん:
難しい質問ですね。
私が、フランスに来た時はお店をしたいと思っていましたが、その時と数年後ではやはり考え方や経験値も違ってきます。
正直な所、現時点でこうしたいというのが明確にお答え出来ないのが事実です。

ただ私の場合、日本でお店をした経験があるので、
「日本でお店をしないの?」
「フランスでお店をするの?」
と聞かれる事が多いのですが、実はお店をしたいという気持ちは正直ありません。

最近、自分の経験した事を日記に書くようにしているのですが、その日記やSNSで書いた内容を基に、将来本を書きたいなと思っています。
私が、フランスで経験した事を伝える事で、誰かの役に立つ事ができればと思っています。

現在は、就労ビザが3年取得できましたので、まだまだフランスで経験を積んで皆さんのお役に立てる仕事を今後もできればと思っています。

-では最後に渡仏を考えている方にメッセージをいただけますか。

岸さん:
皆さん、フランスで働く事は決して簡単ではありません。
苦しい事もあれば、楽しい事もあります。
また、日本とは違う文化にギャップを感じることもあります。
それも含めて理解して、解決していくことで何か感じることが必ずあると思います。

最後に、もっと広い視野を持って外から日本を見てください。
自分が今まで、こんな狭い視野で見ていたんだという事に気づくと思います。
強い信念を持って、是非フランスで働いてください。

 

岸さん、一時帰国中のお忙しい中お時間をいただき、ありがとうございました。

渡仏を考えられている皆さんは、今回の記事を是非参考にしてみてください。

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