第10回saf製パンコンテスト入賞者インタビュー:3度目の挑戦で勝ち取った栄光【株式会社ポンパドウル】
2024年4月16日に開催した第10回saf製パンコンテストの最終審査。
メインテーマを「Anniversaire ~共に周年を祝うパン~」とし、バゲット部門、ヴィエノワズリー部門、課題解決部門の3部門で争われた本コンテストで、5名の入賞者が選出されました。
その中で最優秀賞に輝いた株式会社ポンパドウルの吉田 賢治氏の作品「La Brioche d’Eugénie(ラ・ブリオッシュ・ドゥージェニー)」が7月よりポンパドウル全店で期間限定発売され、大好評を受け、今もなお、一部店舗で販売を継続中です。
今回は、最優秀賞を受賞された吉田氏にインタビューを行い、第10回saf製パンコンテストで受賞されたお気持ちと、受賞作品の発売について伺いました。
株式会社ポンパドウル
製品開発部 主任
吉田 賢治 氏
受賞作品:ラ・ブリオッシュ・ドゥージェニー
価格:税込価格1,512円 (本体価格1,400円)
病気を乗り越えたパン作りの再起とコンテストへの挑戦
-第10回saf製パンコンテストに参加しようと思った理由は?
今回(第10回)の出場は初めてではなく、第7回と第8回のsaf製パンコンテストにも挑戦させていただいたのですが、過去2回とも最終審査まで残れたものの、入賞はできず悔しい思いをしてきました。
ですが、saf製パンコンテストを通じて、日仏商事の社員の方々や同じパン職人の皆様、そして当時の審査員として活躍されている方々と交流でき、saf製パンコンテストでの経験は私の財産となり、翌年も挑戦したいという想いがありました。
しかし、第8回出場後に重い病気が見つかり、休職せざるを得ない状況になり、大好きなパン作りもできなくなって、先行きが見えず不安な日々を過ごすことに。「いつかまたパン作りがしたい」という想いを胸に約2年間の闘病生活の末、無事に快復をすることができました。
そして、闘病中に願っていた思いを胸にパン職人に復帰することができました。
復職後のタイミングで、第10回saf製パンコンテストの開催案内が届き、「またあの舞台に立ちたい」という思いが込み上げてきて、出場を決めました。
-saf製パンコンテストで最優秀賞を受賞されたときの感想を教えてください。
挑戦するたびに出品作品のレベルは確実に上がっているかと思いますが、優秀賞の発表まで名前が呼ばれなかったので正直、今回もダメだったのかと肩を落とす直前でした。最後の最優秀賞の発表で名前を呼ばれたときは、信じられない気持ちになったのを覚えています。
三度目の正直って本当にあるんだなと思い、今まで頑張って挑戦してきてよかったですし、努力が報われた気がしました。
受賞作「ラ・ブリオッシュ・ドゥージェニー」特別な風味と食感の秘密
-受賞作品のパン「ラ・ブリオッシュ・ドゥージェニー」について、どのようなアイデアや工夫が込められているのか教えてください。また、この作品を作る際に特にこだわった点はありますか?
今回のメインテーマが、「Anniversaire ~共に周年を祝うパン~」ということで、特別感があり、印象に残るパンを目指しました。
特に風味と食感にこだわって作品作りをしていたのですが、奥行きのある風味に仕上げるためにルヴァン(発酵種)を使いたいなと思っていた時に、新発売されたフレキシルヴァンを試したところ理想的なルヴァン(発酵種)ができたのでこれを使おうと決めたんです。
そして食感に関しては、パンを食べたときにスーッと口の中で溶けるような余韻を大事にしたいと思っていたので、ミルク湯種と少量の吸水を加えて少し粘り気のある生地にしました。
最初は舌にしっとり絡みついて、その後は余韻を残してゆっくり口どけしていくような独特な食感に仕上げています。
-受賞後、7月12日より「ラ・ブリオッシュ・ドゥージェニー」が期間・数量限定でポンパドウルの各店舗で全国販売されましたが、販売状況はいかがでしたか?
2024年7月12日から月末までの販売で、約7000本を売り上げました。
実際に私も、発売初日に店舗で試食販売をしました。お越しいただいたお客様の反応を見るとかなり反響があり驚きました。
「美味しい」や「また買いに来るわ」という声を直接聞けたのは嬉しかったですね。
店頭販売した日は、かなり強い雨が降っていて、客足が悪い中でしたが、多くのお客様にご来店いただき、なんと88本も売り上げることができました。
全国の店舗から届いたアンケートでは、「日本一のパン」という謳い文句や、ポスターに書かれている「絹のようになめらか、至極のくちどけ」というキャッチコピーがお客様に響いて購買につながったようです。
「ラ・ブリオッシュ・ドゥージェニー」は売り方にもこだわりがあって、ポンパドウルと言えば赤い袋ですが、このために白い紙袋を用意しました。
また、パン袋にはオリジナルのタグをつけてギフトや手土産として贈れるような包装にしています。ポスターや包装にかなりこだわりを持って作ったので、予想以上の反響があり、とても嬉しいです。
パン職人としての夢と目標
-今後、パン作りや商品開発などで挑戦したいことはありますか?
基本的なことですが、お客様が何を求めているかしっかりと向き合い、お客様に喜ばれるパンを提供していきたいです。
パン作りは、伝統的な製法を先輩方から受け継ぎながら、日々進化しています。
味はもちろんですが、見た目からも美味しいパンを目指したいです。
-将来的に目指している目標や夢を教えてください。
定年退職後は小さなパン屋さんを経営するのが今の夢です。
それまでは、ポンパドウルで一生懸命頑張りたいと思います。
まとめ
お話を伺い、病気を患いながらも、パンへの情熱を絶やさず、コンテストで最優秀賞を勝ち取る吉田氏の心意気に感動していました。
私自身、「ラ・ブリオッシュ・ドゥージェニー」を食べ、絹のようにスーッと溶けていくなめらかな食感とミルク湯種、ミルクルヴァンそしてフルーツの豊かな風味に魅了された一人です。このパンは、口に入れた瞬間に広がる豊かな風味と、後を引く滑らかな食感が特徴で、一度食べたら忘れられない味わいです。
多くの人々がこのパンを手に取って美味しさを分かち合える日が楽しみです。