2021.01.21

【続編】厳しい製菓業界を生き抜くために!パティシエールにインタビュー(ポッシュ・ドゥ・レーヴ芦屋)


皆さん、こんにちは。

本ブログにて、過去に配信した女性にフォーカスをあてた記事、
「厳しい製菓業界を生き抜くために!パティシエールにインタビュー」ですが、記事公開後はアクセスも多く、製菓業界で働く皆様には興味深い記事になったのではないでしょうか。

今回はその第二弾です!
前回のアディクトオシュクル 石井シェフへのインタビューに続き、女性が営むお店にお伺いしました。

将来の事を考えているパティシエール必見です。

 

パティスリー激戦区!兵庫県芦屋市で支持率の高い人気店とは


さて今回向かったのは、関西屈指の高級住宅エリア「芦屋」です。
ベーカリーやパティスリーに関係なく、多くの有名店が軒を連ね芦屋マダムの舌をうならせています。
そんな激戦区芦屋でマダムに支持されるパティスリーの一つが「ポッシュ・ドゥ・レーヴ芦屋」さんです。

▲モダンな店内

▲洗練されたデザインの生菓子

取材当日も、店舗には絶えずお客様が来店され、近隣の方にも愛される人気店です。

こちらの店舗は、シェフが女性というだけでなく従業員の方も女性が多いとの事。
では、早速シェフパティシエールの伊東さんに修業時代・開業・女性が働く事について、根堀葉堀聞いていきます。

ポッシュ・ドゥ・レーヴ芦屋 シェフパティシエール
伊東 福子 氏

▼Profile
大学卒業後、高校の事務員として働く。
フランスに留学(大学時代)をした際にフランス菓子の美味しさ・美しさに感銘を受け、お菓子への興味が増す。
事務として働きながら、お菓子教室に通う日々。
その後、より高い製菓の知識・技術を習得する為に、ル・コルドンブルーに入校し製菓について学ぶ。
卒業後は、事務を辞め個人店、一流ホテルなどで経験を積み、
2009年1月10日に「ポッシュ・ドゥ・レーヴ芦屋」を開業。ジャパンケーキショー連合会会長賞受賞もされている実力派。
お店は、食べログTop100(22,696店中)にも選ばれています。
現在お店は12年目を迎えている。

―始めにお店の紹介をお願いします
当店のコンセプトは、やはり鮮度を大切にしていることです。
これは開業当初から変わらないコンセプトです。

商品をご購入いただけるお客様を想像し、どのように食べていただきたいかを常に考えています。
ですので、当店では作り置きなどはせず、その当日に作った鮮度の高い商品しか販売しません。

ここにしかない商品と開発、それが当店のコンセプトでもあり、強みです。

 

人気たる所以は、シェフの強い思いが込められているから!?


―お店で販売されている商品の種類について教えてください
そうですね、当店では
生菓子:25種位
焼き菓子:20種位

その中でも、一番の人気は、和三盆リングサブレです。

―人気の焼き菓子と芦屋で開業したきっかけに関係性があるとのことですが、詳細を教えていただけますか
当店は、焼き菓子、生菓子のどちらも自信を持ってお客様におすすめしておりますが、
ポッシュ・ドゥ・レーヴと言えばやはり「焼菓子」が主役です。

開業当初は、店の商品のメインは「生菓子」で、「焼菓子」は脇役という位置づけでした。
でも私としては、焼き菓子を主役にしたかったんです。
ただ、焼き菓子を主役にした場合、どうしても原価が高くなってしまいます。
それに伴い、商品単価も高くなりますが、その単価でも商品を購入してくれる、贈答文化が色濃くある、ここ芦屋か神戸の岡本エリアへの出店を考えていました。
元々私の地元でもあり芦屋の特性を熟知していましたので、焼き菓子を主役にしたいという想いで芦屋で開業することを決意しました。
おかげ様で、当店のメイン顧客である30~40代の女性から焼き菓子への支持率も高く、贈答用として購入される方は非常に多いです。

他店と違い、焼き菓子のみの販売日があるのもその理由です。
生菓子が購入できるのは金・土・日のみになります。
もちろん、焼き菓子に負けないくらい生菓子も人気ですが、やはり主役は焼き菓子です。

―焼き菓子にも負けない人気がある生菓子の魅力についても教えてください

▲週3回しか販売されない生菓子は、品出しをすればすぐになくなってしまう

最近は、新型コロナウイルスの影響もあり、集まりの機会が減少傾向にあり自己消費が多い生菓子の需要も伸びてきています。
ですので、生菓子は定番商品ばかりを並べるのではなく、お客様に飽きられないように日々レシピ開発を行っています。

▲シェフおすすめの生菓子5種

例えば、
夏場は、フルーツピューレを使用しフレッシュ感を演出しています。
その際によく使用するのがレヴェルジェボワロンのピューレです。
無糖タイプが多く、甘さの調整がしやすく非常に使いやすいですね。

冬場は、チョコレート系が多く、個性が光るチョコレートを選んで採用しています。
カカオバリーのアルトエルソルは非常に個性的な味わいですし、DLAナチュラルズのイヴァナ(ホワイトチョコレート)は和素材との相性が良く、当店では抹茶と組み合わせています。

アルトエルソル採用商品。その名も「アルトエルソル」

イヴァナ採用商品。

厳しい修行時代を経験し、独立開業に至ったシェフの強い思いは


ー修業時代に感じた、女性ならではの悩みはなんですか
私が修行をしていた当時は、グラニュー糖が30kgタイプしかなく、持ち上げるのが大変でした。
運ぶのも大変で、荷台に乗せた際に袋が破れてしまう経験もありました。
ホテルでの修行時代は、宴会やウェディング対応も多く、必然的に製造するケーキの量が多くなります。
そのケーキが入った番重が非常に重かったですね。
恐らく、パティシエールが現場で働いていて辛い仕事ベスト3に「力仕事」が入ってくるのではないでしょうか。

また、修行時代に感じた悩みには雇用形態もあります。
なんとなく感じた事は、女性はパートが多く、男性はパートが少ない事でした。
女性は妊娠・出産なども考えると、キャリアが積めないのかなと感じたのを覚えています。

ー修業時代の辛い経験からパティシエを辞めたいと思った事はありましたか
私の場合は、大学を出て就職をし、製菓について学び、自分の10年後を見据えて選んだ道でしたので辞めようとは思いませんでした。
もちろん、辛いと思ったことはあります。
ですが、明確な将来像を描き、10年後・20年後に自分はどうありたいかという事を常に考え、強い意志を持っていたこともあり、今もなおパティシエールとして働き続けられているのだと思います。

―厳しい修行経験の後、独立開業をされたと思いますが、独立をしようと思ったきっかけは何でしたか
実は、最初は独立は考えていませんでした。
製菓業界で働くようになり、お客様に感謝されたり、温かいお声をいただけることにやりがいを感じ始め、次第に、お菓子に関わる仕事により魅力を感じ始めていました。
そんな想いが次第に強くなった時にふと感じたのが、現場とのギャップでした。
実績を積んだとしてもなかなか仕事を任せてくれない事もあり、何となく女性だからなのか…と考えることもありました。
でもここで諦めてはだめだと思い、自分がやりたいことを実現する為に独立する事を決意しました。

 

独立開業してから今に至るまで、常に全速力で走り続けた


ーシェフを筆頭に製菓業界では女性が活躍されていますが、女性が多い職場のメリットはなんですか
来店されるお客様は、女性客がメイン(子連れの方、年齢層が高い方などなど)です。
その際に女性販売員だからこそ気づく細かい点があります。
例えば、
お客様のお子様の誕生日を覚えており、成長をお祝いするひと声をかけたり。
他には、何気ない会話からお客様との会話を弾ませたり。
ただ販売をするだけでなく、お客様の目線に沿った販売を女性スタッフ一人一人が心がけています。
来店されるお客様の層と女性スタッフがマッチしている点や、子供を持つ販売員もいますので、自然とその細かい配慮ができる接客につながっているんだと思っています。

ーパティシエールの悩みの一つでもある、子育てと仕事の両立。実際にシェフもお子さんがいて、忙しい立場ながら
両立ができる秘訣はなんですか

心がけている事は、メリハリをつけることですね。
子供と遊ぶときは全力で遊びます。
家でレシピ開発や勉強をしていても、子供が起きている場合は一旦その手を止めて、子供との時間を大切にしていします。
お店を任せられている自分、母親として子育てをしている自分、このすみわけは必要です。
ここにメリハリをつけないと、自分自身が保てない気がします。
でもこれが実践できるのは、従業員、夫、お客様の協力があってこそだと思っています。
以前、急遽、娘が熱を出して、店を数時間離れざるを得ない状況があったのですが、スタッフのサポートもあり、店を休業せずにすみました。
本当に、スタッフには感謝しています。
子供がいる女性スタッフも多くいるので、状況を理解してもらえますし、逆の立場になった時のサポートもしっかりする、そんな関係性があるから子育てとの両立が実現できるのだと思います。

―子育てとの両立を始める前と後で、働き方や現場の体制などに何か変化はありましたか
変化はありましたね。
子供といる時間が増えたからといって、仕事や商品作りをないがしろにはできません。
いかに限られた時間で生産性を上げるか、決められた時間内で最大限の売り上げを確保する事は大切です。

そんな状況でも、お客様に良い物をお届けするという気持ちは変わりません。
作り置きをすることは、自分の中で許せないので、いかに生産性を上げるかを常日頃考えています。

頭の中で生産する際の様々な仕組みを考えた結果、スタッフからも両立前と後で、生産スピードが非常に上がったと言われました。
例えば、
タルトリングのフォンサージュですが、
以前は1個製造するのに1分位かかっていましたが、現在は1分で約3個製造しています。
ナッぺも、
当時は1台10分ほどかかっていましたが、現在は10分で3~4台くらい製造しています。

子育てと両立を始めた結果、生産効率に対してより考えるきっかけにもなったと思います。

▲取材当日も忙しく製造されるシェフ

その他にも、翌日の製造分の計量や生産用の型の準備を製造スタッフにしてもらったりと、従業員のサポートは非常に助かっています。

ー生産効率アップに弊社の半製品も貢献していると聞きましたが、半製品を使う事に抵抗はなかったですか
ラ・ローズ・ノワールのミルフィーユタルトを使用していますが、半製品でも味が伴ったものであれば、使用する事に抵抗はありません。
半製品を使う事で、オリジナリティが損なわれるのは良くないですが、当店ではミルフィーユのタルトは元々無く、オリジナル性を出せています。

半製品を使用せず、新たなタルトの製造をスタッフにお願いするのは、時間的にも現在の作業負荷的にも難しいです。
そういった現場の状況も考慮すれば、半製品を上手く使い、それを生かせるのであれば積極的に使っていきたいですね。

▲ラ・ローズ・ノワールのミルフィーユタルトが採用されたシェフのスペシャリテ「プランローヴ」

ー日々忙しくされているシェフですが、その疲れを癒すリラックス法は?

おもいっきり子供と遊ぶことそして環境を変えて何かをする事ですね。
休みの日は自宅でゆっくりという事はあまりせず、ドライブをすることも多いですね。
環境を変えることで気づくことも多くて、例えばドライブで向かった先で食事をしている時に、「この食材とこの食材の組み合わせはよく合う」など、そんな時の方が案が思い浮かぶことがあります。
結果、それが商品開発につながっています。
コロナ禍もあり、なかなか旅行や遠出が最近できないのは残念ですね。

 

今後のお店の展望は?


-今後のシェフのビジョンについて教えてください
製菓業界でもまだまだ実践している所が少ない、産休・育休制度の拡充など、女性がもっと働きやすい環境を作りたいですね。
ただ、それを実現するには資金力も必要です。

では単純に、商品の生産数を増やせばいいのか?
それを実現しようと思うと、スタッフの人数を増やす必要もあるし、働く時間も増え、スタッフも疲弊してしまいます。

それであれば、違った形で収入を得る方法を考える必要があります。
例えば、
ネットでお菓子の作り方の動画を配信して、収入を得るなど。
それで資金力をつけて、より女性が働ける環境を整えたいです。

自分の時間をあまり犠牲にすることなく、働く環境を作れるのがベストです。
そんな思いが通じ、パティシエールがもっと増えれば良いですね。

-最後に、今パティシエールとして頑張っている女性たちに一言お願いします
自分の人生とかライフプランとか働いていく上では色々と考えると思うんですけど、自己犠牲を払っていては
人に幸せは届けられないと思います。
自分の心が病んでしまうと、自分が作るケーキも病んでしまいます。

コンテストに出てキャリアを積みたいと思った時は、自分はどこでそれが実現できるのか。
その場合はコンテスト受賞歴の豊富なシェフがいるところに行ってスキルアップするのも一つです。
子供がいるし、ゆっくり働きたいと思った場合に、自宅の一角で短時間だけ開くお店をするのもいいと思います。
最近は、スモールビジネス、シェアキッチンを借りて運営するのも、比較的しやすい状況になっていますので、自分らしく働けるスタイルがそれであれば、良いと思います。

理想と違うと思った場合に、自分が10年後、20年後にどうありたいか、改めてビジョンについて考え直す機会を作ってもらいたいです。

女性が仕事を長く続けていく上では、明確なビジョン、そして協力者の支援が大事です。
それがあったからこそ、私は今までこの仕事を続けてこれたんだと思います。

 

取材後記


今回の取材を通じて…
男性・女性に関係なく仕事・プライベートを充実させる上でもしっかりとビジョンを描くのが必要だと感じました。
筆者自身もこの先のライフプランについて改めて考えさせられるきっかけになった取材でした。

この記事を見て、パティシエール、子育てを頑張りながら働くママパティシエールの皆さんの励みになれば幸いです。

 

取材協力


ポッシュ・ドゥ・レーヴ芦屋
住所:兵庫県芦屋市公光町9番7号モントルービル101
TEL:0797-32-0302
営業時間:11:00~18:00
※月・水・木は、焼き菓子のみの販売
定休日:火曜日
※営業時間・定休日に関する情報は店舗HPまたはSNSをご参照ください
HP:https://www.poche-du-reve.com/
Facebook:https://www.facebook.com/poche.du.reve.ashiya/
instagram:https://www.instagram.com/pochedureve/

※この記事は2020年11月に取材した内容になります

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