2021/03/11

『ジェラート教本』の著者根岸氏に聞く、フルーツピューレの魅力とジェラートとの相性

ジェラート

日本のアイスの消費量は年々右肩上がり。
アイスに対する本物志向の高まりから、とりわけ『ジェラート』は人気で専門店も多くなってきました。

皆様もご存知の通り、ジェラートとはイタリア語で『アイスクリームの総称』のことです。
様々な旬の食材や牛乳などを使って作るジェラートは、食材の味を最大限に引き出した味わいと香り、なめらかな食感が特徴的です。
その、旬を感じられる食材に欠かせないものと言えば、やはり『フルーツ』ではないでしょうか。

2018年に発刊された根岸 清氏著書のジェラート教本では、数多くのフルーツを使ったジェラートが紹介されており、弊社のレ ヴェルジェ ボワロンを使用したレシピも掲載されています。
そこで今回は、著者の根岸 清さんにジェラートの魅力とレ ヴェルジェ ボワロンのフルーツピューレの良さについて伺いました。

根岸 清 氏

IGCC(Italian Gelato & Coffe Consulting)
代表 根岸

▼Profile
1952年東京都生まれ。
大学卒業後、社会人を経て1982年Conti Govanni氏よりジェラートの基礎を学ぶと、1984年にて本場のジェラートを学ぶためイタリアへ渡り、Gelateria BarFontana、Gelateria Anna、Gelateria Pizzolatoにて修行。帰国後は、日本ジェラート衛生協会委員及び専任講師として指導を行い、理論に基づくジェラートセミナーを全国で年間20回以上行っている。
1994年からは、ミラノのバールでバリスタの修行後、日本全国でイタリアンBARセミナーを年間30回以上開催。1999年には一般社団法人東京都食品衛生協会より食品衛生功労賞受賞。
2015年6月にIGCC(Italian Gelato & Coffe Consulting)を創設し、独立。現在も積極的に海外の情報を収集分析し、セミナーや指導を行っている。

イタリアへ渡り、本場のジェラートを勉強


―ジェラートの道に進もうと思ったきっかけは?
大学卒業後、インテリアの輸入販売会社に就職してコーディネートの仕事をしました。その後、食品機械を輸入販売している会社へ転職しました。
転職後に当時の社長からジェラートマシンの輸入販売をしようという話があり、「ジェラートはこれから日本で流行るだろう」という社長の言葉をもとに、日本のジェラート市場や設備・保健所の許可など様々な事を調べました。その結果、頑張りが認められ、本場イタリアへジェラートの勉強に行くことになりました。私自身、幼い頃から料理をすること・食べることが大好きだったので、喜んで引き受け、イタリアへ渡りジェラートの勉強を始めました。

イタリア本場のジェラート

―イタリアでの修業時代について教えて下さい
イタリアでの修業初日に衝撃を受けました。それは、多少の英語は通じるだろうと甘い考えで修行に入ったところ、英語が全く通じなかったのです。ストロベリーもパイナップルもシュガーも一切通じないのです。もちろん通じるフルーツ(バナナ、マンゴー、柿など)もありますが、乳製品や糖類など多くの材料はわかりませんでした。
その夜、ホテルに戻ってから必要な食材名や最低限のコミュニケーションをとるためのイタリア語の単語をメモし、翌日からその単語を見ながら作業を行いました。
それから私は何をしたら戦力になれるかを考え、あることを実行しました。
それは人間食器洗浄整理整頓ロボットになることでした。私がいることで日常の作業がスムーズに運び、これ以上便利なやつはいないと思っていただきたかったのです。その時、運がいいのか悪いのか現場の食器洗浄機が壊れていたため、ジェスチャーを交えて私が洗い物をすることを伝え、さっそく洗い始めました。洗った道具などは定位置に戻し、作業台から床まで掃除を行い常に動いていました。もちろんその間、作業の状況を見ながらメモをし、わからない食材は味見をしてイタリア語名でメモを取りました。ホテルに戻ってからその日のことをまとめ、分からないことは調べました。
ジェラート製造は、朝8時からスタートし午後4時には終了しますが、店の営業は午前10時30分から午後9時までと遅くまで営業していました。製造が終わると帰っていいと言われましたが、店売りの勉強もしたいため、サポートをしながら盛り付けや接客方法を勉強しました。
4日目にオーナーからジェラートミックスの仕込みを任せられ、150リットルを仕込み始めた矢先に砂糖などの粉類を投入した分量がわからなくなり、すべての材料を破棄することになりました。この失敗を教訓に軽量への間違いを起こさないように確認をしながら作業を行うようになりました。
製造にも慣れ仕事を任せていただくようになり、オーナーにも気に入られ自宅での会食に何度か招待されました。帰国の際は日本で待っている子供たちの洋服など沢山のお土産をいただきました。その後、他のジェラテリアでも勉強する機会ができ、ジェラートづくりの楽しみが大きく膨らんできました。

ジェラテリア

ジェラートの魅力は「なめらかさ」「口どけの良さ」「香り」


―ずばり、根岸さんの考えるジェラートの魅力とは何ですか
ジェラートは作るのがとても楽しいんです!
味の好みは人それぞれなのですが、ジェラートの状態での好みは「なめらか」に一貫されます。「ザラザラ」ではダメなのです。
生クリームの乳脂肪や、フルーツの水分、水分と固形分のバランスが非常に重要となります。
そのバランスを守らずにジェラートを作ると、口に入れた瞬間に「パッと溶けて香りがふわっと広がる」口どけの良いジェラートは出来上がりません。
水分と固形分のバランスが非常に大切になるからこそ、ジェラートの奥深さを感じます。

―フルーツには、フレッシュフルーツや冷凍フルーツ、フルーツピューレなどありますが、根岸さんはどれを使用することが多いですか?また、それを選ぶ理由を教えて下さい
本場イタリアでは、冷凍ピューレ、冷凍フルーツ、フレッシュフルーツを使い分けています。
例えば、マンゴーのジェラートを作る場合、フレッシュなマンゴーと冷凍マンゴー、マンゴーピューレとあると思いますが、私はピューレが断然好きです。理由は、3つあります。

①香り
ピューレはフルーツが熟してからピューレにしています。冷凍フルーツも良いとは思いますが、冷凍フルーツは熟す前に収穫して加工していますよね。やはり熟したフルーツを使用した方が味が濃く出て、甘さが増しますし、香りも強くなります。

②衛生面
衛生的な観点から見てもピューレは優秀だと思います。冷凍ピューレは、殺菌の為に加熱されますが、加熱をしているのにも関わらず、フレッシュさを損なわない部分もピューレを選ぶ要因と言えます。

③年間通して安定した味
フルーツには旬があります。
全てのジェラートをピューレで作るとすべて同じ味になってしまうため、私が作るジェラートは他と差別化を図るために季節ごとに旬のフレッシュフルーツを使うように心がけています。旬のフルーツとピューレを上手に組み合わせることも大切だと思っています。
しかし、フレッシュフルーツは季節によって味に変動がある。そこを補えるのが冷凍フルーツピューレです。
年間通して安定した味を出せるピューレはとても重宝します。

ジェラートセミナー
▲ジェラートセミナー 実技編ジェラート
ジェラートセミナー
▲ジェラートセミナー 実技編ジェラート②

私は昔からレ ヴェルジェ ボワロンを使っているのですが、その良さは味!
一流のシェフは、土壌や気候を見るだけで素材の良し悪しが分かると言います。
本来であれば、現地へ足を運び実際に食材を食べて目利きし、自分の納得のいく食材で作った方が最高なものが出来上がるのですが、現実的には難しい。そこで、クオリティを保ちつつ衛生的に作るのに一番身近な食材がレ ヴェルジェ ボワロンのピューレなのです。
イタリアで修行していた時に作った、ココナッツジェラートはすべて手作業でした。ココナッツの実をまるごと仕入れ、ハンマーでたたいて割り、中の果肉をミキサーにかけてジェラートにしていたのですが、かなり大変な作業でした。
日本では、ココナッツの流通量が少ないことを考えるとココナッツピューレを使えば手間をかけることなくココナッツジェラートを作ることが出来ます。ピューレをうまく駆使することによって、オリジナリティを出しながらもクオリティを維持することができます。

あるジェラートセミナーで、マンゴ―ミルクジェラートを作りました。
国産のマンゴーでは、価格の面で使うことが難しいと思われる方もいらっしゃると思いますが、レ ヴェルジェ ボワロンのマンゴーピューレは価格が安定しているうえに、マンゴーの味が濃い。
それに、糖度が20度もあるので糖分を加えずにジェラートを作ることができ、本来の味わいを最大限に活かすことができます。

マンゴーミルクジェラート

▲根岸氏作成 マンゴーミルクジェラート

根岸氏が思う日本のジェラート市場と今後とは


―日本のジェラート業界の傾向と良さを教えて下さい
シェフやパティシエなど、修行をして経験を積む職人たちとは違い、ジェラートはベースとなるレシピと作り方さえ教えてしまえば誰もが高クオリティで作ることが出来ます。
その為、日本のジェラート業界は脱サラした方や農産物生産者が多い傾向があり、誰もが始めやすい職業と言えます。
そこからは、自分なりのアレンジを加えていけばバリエーションが豊富になり、オリジナリティを出すことが出来ます。 日本は農産物が豊富です。地元の特産物や農産物をうまく使ってジェラートを作っている方が多く見受けられるのも日本のジェラートの良さと言えます。

根岸 清 氏

―根岸さんご自身は、今後のジェラート業界をどのように発展してほしいと思っていますか
ある調査によると、「アイスが好き」と答える人の割合は約96%。全世代に好まれており、アイスを嫌いな方はほとんどいないのです。
また、アイスは病気を患っている人でも食べやすい為、健康補助食品としても注目を集めています。実際に、風邪を引いた時にアイスを食べるという方も多いのではないでしょうか。
それだけ、アイスという分野は注目度が高い食品と言えます。

そして、ジェラートを始めたいと思っている方には、常に市場のアンテナを張って自分のアイディアを大切にオリジナリティあふれるジェラートを作ってほしいと思っています。
ジェラートはバリエーションの幅が無限大です。様々な食材を合わせることでよりジェラートの奥深さを知ることが出来ます。ぜひ、食感と味わいを楽しめるような商品を作っていってもらいたいです。

イタリアのジェラテリア
▲イタリアのジェラテリア 夕食後のデザート(カップジェラート)
イタリアのジェラテリア
▲イタリアのジェラテリア スティック&デザートカップ

イタリアの人口は日本の半分の約6000万人。
日本のコンビニは約5万8000軒あるのに対し、イタリアのジェラテリアは3万9000軒。
こちらのデータを見るだけでも、イタリアのジェラートに占める割合が高いと言えます。
今のジェラート協会は若手の職人が中心となって運営をしています。
私は現在、日本の職人やこれから始めようと考えている方へジェラートの知識についてセミナーを開催したり、ジェラートマイスターの認定制度を作ってジェラート業界を発展させるための働きかけを行っています。
ジェラート業界をより盛り上げるためには、ジェラート協会が主催となり、知識の向上や大会を開催し士気を高めていくことが大切だと思います。
過去に開催された大会での歴代のチャンピオンは人気店として成長している為、お店同士でも協力し合い、さらに高めていってもらいたいです。

イタリアのジェラテリア ジェラート
▲イタリアのジェラテリア ジェラート
イタリアのジェラテリア ジェラートケーキ
▲イタリアのジェラテリア ジェラートケーキ

編集後記


日本のジェラート業界の先駆者である根岸さんにお話を伺ってまいりました。
ジェラートのみならず、正統派のエスプレッソやフローズンドリンクを普及させる活動もされている根岸さんから、濃いお話を伺うことが出来ました。
最後に、一番好きな分野をお聞きすると「やっぱりジェラートが一番好きですね」と笑顔でお答えいただきました。
「ネット上ではジェラートに関してあらゆる情報が載っているが、実は嘘の情報が多い」とのことで、根岸さんは年に2回はイタリアへ渡り、視察をされて日本へ正しいジェラートの情報を発信されています。
前述したように、年々人気が高まっているジェラートに今後も注目していきたいと思います。

 

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